訪問介護開業の流れを徹底解説!必要な資金や開業前の指定申請まで



高齢化時代において介護サービスのニーズが高まっている中、新たに介護事業を始めようと思っている方も多いでしょう。ここでは訪問介護事業の開業手順・基準・手続きなどを解説していきます。こちらの記事が訪問介護事業開業のお役に立てたら幸いです。

訪問介護の開業の流れを解説している女性

 

目次

 

訪問介護とはどんなサービス?

数ある介護事業の中で訪問介護とは、要介護者や要支援の利用者の方々のご自宅で介護福祉士や訪問介護員などによって、入浴・食事・排泄などの介助を行うことです。

表で示すと下記のようになります。

身体介護 食事の介助・衣類の着脱・入浴の介助・排泄の介助、体の清拭、その他必要な身体介護
生活援助 調理や洗濯・住居の掃除・買い物その他必要な家事
通院等の乗降介助 通院などのために、訪問介護員が自ら運転する車両で乗車・降車の介助を行うとともに、乗車前・降車後の屋内外の移動又は通院先での受診の手続き・移動等の介助

通院等乗降介助サービスを提供する場合は、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉タクシー)又は特定旅客自動車運送事業の許可を運輸局から受けなければいけない。

 

訪問介護は1人でも開業できる?

独立でのご開業を検討されている方の中にはお1人での開業を検討される方もいらっしゃるかと思いますが、保険適用の訪問介護事業には人員基準という指定を受けるための基準が存在し、この条件を1人で満たすことはできない(詳細は後述)ため、お1人での開業はできなくなっています。開業後一緒に勤務してくれるお仲間や求人掲載等での採用で人員を確保しましょう。

 

訪問介護の開業の流れ

介護事業で開業するためには満たすべき基準がいくつかあり、抜けもれなく準備を進めていく必要があります。ここでは訪問介護の開業においての法人設立から指定申請までの流れを順序だてて解説します。

 

1. 訪問介護事業のための法人設立

訪問介護事業を始めるには、法人格(株式会社・NPOなど)を持つことが必要です。既に介護以外の業種を行っている法人がある場合は、定款の目的の変更と登記も変更しておきましょう。手続きによっては時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備します。注意点としては介護保険事業は個人事業主では開業ができず、「必ず法人格を有する必要がある」というところです。

ここでは独立開業の際にご選択されることが多い法人格である株式会社、合同会社について記載します。

株式会社の場合

日常生活でも耳なじみのある法人格です。株主からの出資を集め、株式を発行することで資金を集めることができます。出資金の額に応じて利益を出資者へ分配することが必要です。中長期的に介護事業以外の参画も検討している方に選ばれることが多い法人格です。

合同会社の場合

出資者がそのまま経営を行い、利益の分配も自由に決めることができる法人格です。法人設立の費用や方法が株式会社に比べ簡単で、自由度の高い経営を行いたい、法人設立の費用を抑えたい方に選ばれることが多いです。

2. 物件と設備の手配

事務所の手配

訪問介護事務所を開設するためには、訪問介護の指定基準のうち、設備基準を満たした建物が必要です。

その中に事務スペースや相談スペース、手洗い場などが必要となります。相談スペースは相談内容が漏洩しないよう配慮しなければなりません。

また、賃貸の場合事務所の契約者は法人名で行い、契約書の使用目的は事務所としてください。

立地、建物要件も重要です。訪問介護には自転車・バイク・車を使用することが多いので、駐車スペースを確保できる物件が必要になります。

必要な備品

電話機・FAX、パソコン・プリンター、鍵がかかる書棚・書庫、事務・相談スペースに置く机・椅子、手洗い用石けん・消毒液などです。

 

3. 人員の確保

訪問介護の開業には、必要な人員の基準が明確に設けられており、それが「常勤換算で2.5人以上(サービス提供責任者を含む)」です。常勤換算は下記の計算式で求めることができます。

常勤換算人数=常勤職員の人数 +(非常勤職員の勤務時間の合計 ÷ 常勤職員が勤務するべき時間)

2.5人の条件を満たしていない場合には、何らかの方法で一緒に働いてくれる仲間を探す必要があります。代表的な方法には下記のようなものがあります。
※求人の掲載などを行う場合には、①法人格があること、②勤務地となる事務所が決まっていること、が条件になります。

 

4. 指定申請

【法人設立】【物件と設備の手配】【人員の確保】が終われば、次はいよいよ指定申請です。

指定申請とは介護事業を行うにあたって、指定権者から事業の許認可を得るための申請のことです。
※訪問介護の指定権者は原則として都道府県となっていますが、中核市の場合は市へ権限が移譲されている場合もあるため、詳しくは行政へお問い合わせください。

申請が受理されると、6年間は指定事業者として事業を行うことができます。
つまり、6年ごとに更新申請が必要となります。
訪問介護事業者として指定されるためには、次の4つの項目を満たす必要があります。

① 法人であること
② 介護保険法で定められた訪問介護の設備基準を満たしていること
③ 介護保険法で定められた訪問介護の運営基準を満たしていること
④ 介護保険法で定められた訪問介護の人員基準を満たしていること

上記の項目を満たしていれば、申請書類の作成を行い期日通りに申請を行います。
申請書類や期日等は該当の行政HP等で確認することが可能ですので、お早めに確認してみましょう。

 

訪問介護の指定申請で満たすべき人員基準

ここからは、よく質問をいただくことが多い訪問介護の人員基準について、より詳細に説明します。

管理者

訪問介護事業所の責任者で、専ら管理の職務に従事する常勤1人必要です。
ただし、職務上支障がない場合は、同一事業所内の他の職務、または同一敷地内の他の事業所の職務との兼務が認められます。
管理者に資格用件はありませんが、サービス提供責任者と兼務することが開業初期には多いため、その資格要件を満たしている方を配置することが一般的です。

 

サービス提供責任者

サービス提供責任者を常勤職員で専ら訪問介護業務に従事する者のうち、1人以上のサービス提供責任者を配置します。 - 介護福祉士 - 実務者研修修了者 - 旧介護職員基礎研修課程修了者 - 旧ホームヘルパー1級課程修了者 - 実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者(旧ホームヘルパー2級課程修了者)

※実務経験3年以上の介護職員初任者研修修了者またはホームヘルパー2級課程修了者が責任者となった場合は減算になります。

ただし、利用者の人数(前3か月間の平均値)が40人(1単位)を超えるごとに1人以上追加、配置する必要があります。
新規の事業所の場合は推定の利用者数です。

サービス提供責任者の資格要件は次のいずれかの要件を満たすことが必要です。

 

訪問介護員

常勤換算で2.5人以上(サービス提供責任者を含む)配置します。
訪問介護員の資格要件は次のいずれかの要件を満たすことが必要です。

※常勤換算で2.5以上とは
「従業者の勤務延べ時間数h」「常勤従事者の勤務時間数h」=常勤換算数
この常勤換算数が2.5以上でないといけません。

 

訪問介護に必要な資金と調達方法

訪問介護開業にはどれくらいの費用がかかる?

独立開業を検討される際に、必ず考えてなければいけないのが「どれくらいの資金が必要なのか?」ということです。開業時にかかる資金は皆様のご状況によって大きく異なりますので、ここではまずどんなことに費用がかかるのか考えてみましょう。下記では、なぜそれくらいの資金が必要になってくるのかをご説明します。

 

開業資金と運転資金の違い

開業時の資金についてお話をする際には、開業資金と運転資金の違いを理解しておく必要がございます。

 

開業資金

開業資金とはその名の通り、開業の準備段階でかかってくる費用を支払うための資金です。
開業後に継続的に必要なお金ではなくあくまで、開業初期に一時的に必要になるお金であるという風に理解をしておきましょう。

 

運転資金

運転資金は開業後に必要になってくるお金のことです。上記の開業資金では開業前の一時的な出費のための資金ですが、運転資金は開業後の日々の業務で必要な様々な費用の支払い等を行うための資金です。
さらに介護保険の仕組み上、サービスを提供してから約二か月後に介護保険報酬を受け取るため、この売上の発生と入金に時間差があることを考慮に入れる必要があります。

 

開業前にかかる費用にはどんなものがある?(開業資金)

はじめに、開業前にかかる費用の代表例をご紹介します。

①法人設立費用

株式会社で約20から30万円、合同会社で10万円前後の費用が法人設立の申請や、申請書類の行政書士、司法書士への依頼料としてかかります。

②物件の取得費用

事業所となる物件を賃貸、購入するための費用です。
場合によっては内装を工事するための費用が追加でかかる場合があります。

③事務所内の備品費用

事務所内に基本的に必要なものは以下になります。

代表的なものをご紹介しましたが、このほかにも採用費用や税理士の顧問契約料などご状況によって様々な費用が発生します。

 

開業後にかかる費用にはどんなものがある?(運転資金)

次に、開業後にどのような費用がかかってくるのか見てみましょう。

① 人件費

開業前から人員を確保しておく必要があり、給与が発生します。
申請が受理されて指定を受け、サービスを開始しても、開始当初は利用者数が少ないことや介護保険によるサービスの利用料金が全額入るのが2カ月後からであることを考えると、余裕をもって人件費を確保しておく必要があります。
訪問介護の運転資金において、一番重要な点がこの人件費を確保することになります。

② 家賃等

事務所の賃料のお支払いは開業後も継続的に発生します。
このほか訪問用の車両のリース代金や駐車場代なども発生します。

③雑費

等が必要になります。

 

必要であれば融資を利用しましょう

開業時の資金を考える際にはまずどんなことにお金がかかるのか?自己資金でまかなうことはできるのか?を考えてみましょう。
その上で自己資金では足りないとなっても落胆する必要はなく、資金調達を検討してみましょう。
ここでは代表的な資金調達である日本政策金融公庫からの融資についてご紹介します。

 

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫とは、100%政府出資の政府系金融公庫です。
営業成績等の実績がないため、 資金融資が困難なことが多い創業企業に積極的に融資をしてくれます。
原則、 無担保・無利子での融資が可能 であり、低利な点が最大の魅力です。

webサイトに詳しい申請方法や問い合わせ先が記載されているので、一度目を通してみると良いでしょう。
融資以外にも、介護系事業の立ち上げのポイントなど色々な情報が提供されています。

 

融資の際の注意点

実際に日本政策金融公庫で融資申請をする際には下記のようなポイントに注意しましょう。

①説得力のある事業計画書や収支計画書になっているか?

融資の際には、どんな事業をするのかを説明する事業計画書やその事業はどのような収支で推移していくのかを表す収支計画書の作成が必要です。
記載の方法についても、担当者にわかりやすいようにパワーポイントを使用するなどプレゼンテーションを行うような気持で臨むと良いでしょう。

②融資予定額は妥当か

融資を受ける際には、最初にお話ししたように、事業所の物品などにかかる額と人件費にかかる額、自己資産から賄う額を加味して融資予定額を決定しなければいけません。
事業所の物品費用などは見積もりもしやすいと思いますが、人件費の見積もりには苦労されるのではないかと思います。
また、最初は利用者も少ないため収入も少なく、さらに集客が思うようにいかなかった場合は、赤字の時期が続くことになります。
そのような事態も予測した上で、融資を受ける必要があります。

 

まとめ

訪問介護事業をするにあたっては、半年から1年といった長い準備期間が必要となります。
きちんと情報を集めたうえで開業を進めなければ、時間や資金の無駄が増えてしまいます。
事前準備をしっかり行い、無駄なく開業に向けて進めていきましょう。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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