福祉用具貸与の指定基準とは?守らなかった場合は?
高齢化が進む日本では、介護サービスを直接提供する介護事業所だけでなく、高齢者の在宅生活を支える介護用品をレンタルする『福祉用具貸与』の事業所も重要な役割を担っています。そのため、市場にニーズがあり、福祉用具貸与の事業所の開業・新規立ち上げを考えている経営者の皆様もいらっしゃることでしょう。
福祉用具貸与は、介護保険法に定められる介護事業所として、その開業・運営にあたり、定められた基準(指定基準)を満たす必要があります。
今回の記事では、違反事例を交えながら、福祉用具貸与の指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)について、詳しく説明しています。ぜひご一読いただき、お役立てください。

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福祉用具貸与の指定基準とは?
介護保険における「福祉用具貸与」の事業を行うためには、法令によって定められた最低限クリアすべき基準を満たさなくてはいけません。この基準を満たし、所轄官庁から適切な介護保険サービスを提供できると認められ、事業者の『指定』を受け、事業を行うことになります。
それではまず福祉用具貸与の指定基準の『基本方針』について見ていきましょう。
福祉用具貸与の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえた適切な福祉用具の選定の援助、取付け、調整等を行い、福祉用具を貸与することにより、利用者の日常生活上の便宜を図り、その機能訓練に資するとともに、利用者を介護する者の負担の軽減を図るものでなければならない。
※「指定居宅サービス等の事業の人員、設備および運営に関する基準 基本方針」より引用
指定基準は、大きく3つの項目に分けられ、「人員に関する基準」、「設備に関する基準」「運営に関する基準」が定められています。
それぞれの内容についてご紹介しますので、見ていきましょう。
福祉用具貸与の人員基準とは?
人員基準には、配置すべき職種と人数が定められています。
福祉用具専門相談員の員数
福祉用具貸与事業所には、『福祉用具専門相談員を常勤換算方法で2人以上配置すること』が求められています。
福祉用具相談員の資格とは?
福祉用具専門相談員として働くためには、以下のいずれかの資格要件を満たす必要があります。
- 保健師
- 看護師
- 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 義肢装具士
- 福祉用具専門相談員指定講習の修了
福祉用具専門相談員指定講習とは?
福祉用具専門相談員指定講習は、都道府県知事が指定する「福祉用具専門相談員指定講習事業者」が行っている福祉用具専門相談員として働くために必要な知識等を総合的・体系的に学習することができる講習です。
東京都を例に挙げると、全8日間、50時間のカリキュラム、受講料3万円となっています。
講習の具体的な開催日時などについては、都道府県、あるいは各都道府県が指定する「福祉用具専門相談員指定講習事業者」にお問い合わせいただき、ご確認ください。
管理者
福祉用具貸与事業所には、『専らその職務に従事する常勤の管理者を配置すること』が求められています。ただし、管理業務に支障がない場合は、福祉用具専門相談員の職務を兼務することができます。
福祉用具貸与における兼務のポイント
- 管理者と福祉用具専門相談員は兼務が可。
- 特定福祉用具販売の指定も受けている場合は、特定福祉用具販売の業務の兼務が可。
上記から、常勤2名を配置すれば福祉用具貸与事業所を開設することができます。
福祉用具貸与の設備基準とは?
設備基準には、事業を行う上で必要となる区画、設備、器材、備品等が定められています。
設備及び備品等
- 利用申込の受付、相談等に対応するために適切な区画を確保すること。
- 福祉用具の保管のための設備を有していること。(※)
- 清潔であること。
- 消毒・補修がされている福祉用具とそれ以外の福祉用具を区分することができること。
- 福祉用具の消毒のための器材を有していること。(※)
- 適切な消毒効果を有すること。
(※)ただし、福祉用具の保管または消毒を他の事業者に行わせる場合は、保管のための設備、消毒のための器材を有していなくても構いません。
福祉用具貸与の運営基準とは?
運営基準には、事業を行う上で必要となる手続きや書類、業務内容、サービスの提供方針等が定められています。
内容及び手続の説明と同意
利用者やその家族に対して説明する運営規程や重要事項などの書類や説明する内容が定められています。
提供拒否の禁止
正当な理由なく福祉用具貸与の提供を拒んではならないことが定められています。
サービス提供困難時の対応
適切なサービス提供が困難な場合に、他の事業者の紹介など取るべき措置が定められています。
受給資格等の確認
サービスの提供にあたって被保険者証により被保険者資格、要介護認定の有無、有効期間、認定審査会の意見等を確認することが定められています。
要介護認定の申請に係る援助
要介護認定に係る申請・更新についての援助を行うことが定められています。
心身の状況等の把握
サービスの提供にあたって、居宅介護支援事業者が開催するサービス担当者会議等を通じて利用者の心身の状況や環境等の把握に努めることが定められています。
居宅介護支援事業者との連携
サービスの提供や終了の際、居宅介護支援事業者等との連携に努めることが定められています。
法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
法定代理受領サービスを行うために必要な援助を行うことについて定められています。
居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
居宅サービス計画に沿った福祉用具貸与を提供することについて定められています。
居宅サービス計画等の変更の援助
利用者が居宅サービス計画の変更を希望する場合の援助について定められています。
身分を証する書類の携行
福祉用具専門相談員に身分を証する書類を携帯させ、必要に応じて提示させることが定められています。
サービスの提供の記録
サービスの提供の記録の作成、交付について定められています。
利用料等の受領
利用料の受領やその際の領収書を交付することが定められています。
保険給付の請求のための証明書の交付
法定代理受領サービスに該当しない利用料の支払いを受けた場合、サービス提供証明書を交付することが定められています。
指定福祉用具貸与の基本取扱方針
福祉用具貸与のサービス提供にあたっての基本的な方針が定められています。
指定福祉用具貸与の具体的取扱方針
基本取扱方針に基づき、実際に福祉用具貸与を提供する際に求められる具体的な方針が定められています。
福祉用具貸与計画の作成
福祉用具専門相談員が、利用者の希望、心身の状況、環境等を踏まえて、サービス提供の目標、そのための具体的なサービス内容等を記載した福祉用具貸与計画を作成することなどが定められています。
利用者に関する市町村への通知
不正受給等などがあった場合、市町村へ通知しなければならないことが定められています。
管理者の責務
従業者の管理、利用申込の調整、業務の実施状況など管理・指揮について定められています。
運営規程
運営規程に定めなくてはいけない事項が定められています。
※令和3年4月1日から虐待の防止のための措置に関する事項が加わりました。(令和6年3月31日までは努力義務。)
勤務体制の確保
適切なサービス提供のための勤務体制、職場環境の整備について定められています。
※令和3年4月1日から職場におけるハラスメントの防止のために雇用管理上の措置を講じることが義務化されました。
業務継続計画の策定等
感染症や非常災害の発生時の業務継続計画の策定について定められています。
※令和3年4月1日から業務継続計画の策定が明文化されました。(令和6年3月31日までは努力義務。)
適切な研修の機会の確保並びに福祉用具専門相談員の知識及び技能の向上等
事業者が行う適切な研修の機会の確保と福祉用具専門相談員が行う資質の向上の努力について定められています。
福祉用具の取扱種目
できるだけ多くの種類の福祉用具を取扱うことが定められています。
衛生管理等
従業者の健康状態の管理、回収した福祉用具の消毒、設備・備品の衛生管理、感染症の予防・まん延防止について定められています。
※令和3年4月1日から感染症の予防・まん延防止の取り組みが加わりました。(令和6年3月31日までは努力義務。)
掲示及び目録の備え付け
運営規程、重要事項、福祉用具の品名や料金などの掲示について定められています。
秘密保持等
業務上知り得た利用者・家族の情報の秘密保持について定められています。
広告
事業所の広告について定められています。
居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
居宅介護支援事業者の公正中立性を確保するために、サービスを利用させることの対償を渡すことなど禁止されている行動等について定められています。
苦情処理
事業者が行う苦情対応について定められています。
地域との連携等
市町村等への協力や同一建物以外の利用者へのサービス提供について定められています。
事故発生時の対応
事業者が行う事故発生時の対応や損害賠償について定められています。
虐待の防止
虐待防止のための委員会の設置、指針の整備、研修の実施、担当者の配置といった事業者が行うことについて定められています。
※令和3年4月1日から虐待防止の取り組みが明文化されました。(令和6年3月31日までは努力義務。)
会計の区分
事業所ごとの会計の経理を区分、その他の事業と会計を区分することが定められています。
記録の整備
事業者が整備する従業者、設備、備品、会計に関する記録について定められています。
サービス提供の完結の日から2年間保存
- 福祉用具貸与計画
- サービス内容等の記録
- 保管・消毒を他の事業者へ委託する場合、その事業者の業務の実施状況の記録
- 市町村への通知に係る記録
- 苦情の内容等の記録
- 事故の記録
福祉用具貸与の指定基準を守らなかったらどうなる?
それでは指定基準を守らなかった場合の実際にあったケースを紹介します。
「人員に関する基準」の違反
別会社に勤務していて、自社で従事する予定のない者を、福祉用具専門相談員とした虚偽の勤務形態一覧表を作成。これを申請書に添付し、指定を申請していた。
「運営に関する基準」の違反
居宅在住者ではない利用者(同一事業者が運営する施設に入居中、住民票も移していた)に対して、算定対象とはならない福祉用具貸与を行ったとして算定、報酬請求を行った。また、実際には貸与していなかった福祉用具の架空請求も発覚。
指定基準違反の結果
この2つの違反は、同じ福祉用具貸与事業所が行っていました。その結果、介護報酬を不正に受領したとして約120万円の返還を求められ、 事業所の指定が取り消されました。
指定基準違反をチェックするタイミングとは?
毎年のように「指定基準違反」はニュースになっています。
ですから、指定基準は『経営者』と『管理者』がその内容をしっかりと把握し、日頃から「違反がないか?」を確認し、また、少なくとも1年に1回は「書類の保管等に不備がないか?」をチェックするのが良いでしょう。
また指定基準違反が発覚するタイミングには、以下の3つが考えられます。
- 集団指導に基づく自己点検、実地指導前に行う自己点検による発覚
- 行政による実地指導による発覚
- 利用者、その他関係者からの通報による監査等による発覚
どのように発覚したのか、違反の程度などにより手続きや行政処分の種類は異なります。先ほどの事例のように報酬の返還及び指定の取消となってしまうと事業に投資した資金を回収することも難しくなってしまいます。そのためにも、自己点検は重要な役割を持っていますので、定期的に自己点検を行いましょう。
実地指導とは?
実地指導とは、事業所を管轄する自治体の職員が行う現地調査、書面調査です。指定基準に則った運営が行われているか、適切に介護報酬が請求されているかを確認するために、各種書類を確認します。
事業所を運営していると定期的に実地指導を受けることになりますが、新規で事業所を開設した場合などは、開設から1~2年以内に実地指導が実施されることが多いようです。
まとめ
福祉用具貸与の指定基準について、違反事例を交えて説明してきました。指定基準に定められている内容は、福祉用具貸与の事業を行うために、必ず満たさなくてはいけない基準です。
ここでご紹介した内容が皆様の事業所経営のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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