認知症対応型共同生活介護の2018年度介護報酬改定
認知症対応型共同生活介護事業所の経営者、または経営を考えている皆様へ参考になれば幸いです。
入居者の医療ニーズへの対応
これまでも認知症対応型共同生活介護では、ご利用者の体調や状態の変化に応じた医療連携と対応が評価されていました。今回の改定ではご利用者の状態に応じた医療ニーズへ、より適切な対応ができるよう現行の医療連携体制加算(Ⅰ)に加え医療連携体制加算(Ⅱ)、(Ⅲ)が新設されました。
具体的には、常勤看護職員の配置や医療機関の連携を評価する加算となります。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
医療連携体制加算(Ⅰ)
(1日あたり) |
39単位 | 39単位 |
医療連携体制加算(Ⅱ)
(1日あたり) |
なし | 49単位(新設) |
医療連携体制加算(Ⅲ)
(1日あたり) |
なし | 59単位(新設) |
入居者の入退院支援の取組
今回の改定では、認知症対応型共同生活介護におけるご利用者の入退院時の支援について、取り組みを評価する項目が創設されました。認知症の方は入退院による環境の変化が、認知症の症状の悪化や行動・心理症状の出現につながりやすいとされています。このような背景から、ご利用者の早期退院や退院後の安定した生活に向けた取り組みを評価することとなりました。
【再入居の受け入れ体制整備に対する評価①入院時費用】
対象者:入院後3カ月以内に退院が見込まれるご利用者
内容:やむを得ない事情がある場合を除き、退院後再入居することができる体制を確保していること
【再入居の受け入れ体制整備に対する評価②初期加算】
対象者:医療機関に1ヵ月以上入院した後、退院して再入居するご利用者
内容:初期加算の算定要件として対象者を追加
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
入院時費用
(1日あたり) |
なし | 246単位 |
口腔衛生管理の充実
認知症対応型共同生活介護には、痛み等の意思表示が困難なご利用者や義歯の自己管理が困難なご利用者が多く入居しており、さらに近年はご利用者の重度化が報告されていることから、口腔衛生管理を必要としている対象者が増加していることが指摘されました。
口腔衛生管理への支援を円滑に実施するためには、歯科専門職の関与が必須ですが、認知症対応型共同生活介護における歯科専門職の配置は少ない為、連携が十分とれず、状況確認や歯科医療の必要性について把握することが困難でした。
そこで今回の改定では、認知症対応型共同生活介護においても他の介護サービスと同じように、歯科専門職による介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言や指導を評価する加算が創設されました。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
口腔衛生管理体制加算
(1月あたり) |
なし | 30単位 |
栄養改善の取組の推進
今回の改定では、介護職員等が、利用開始時または利用中の6ヵ月ごとにご利用者の栄養状態について確認を行い、その栄養状態の情報を介護計画作成担当者と共有し、適切なケアマネジメントを行うことを評価する栄養スクリーニング加算が新設されました。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
栄養スクリーニング加算
(1回あたり) |
なし | 5単位 |
短期利用認知症対応型共同生活介護の算定要件の見直し
認知症グループホームが地域における認知症ケアの拠点として様々な機能を発揮することを促進する観点から短期利用認知症対応型共同生活介護について、ご利用者の状況や家族等の事情などの一定の条件下において、定員を超えた受け入れが認められることになりました。
生活機能向上連携加算の創設
認知症対応型共同生活介護におけるご利用者の自立支援や重度化を防止する役割として、生活上必要な機能訓練を強化して自立に向けた取り組みを評価する加算が創設されました。具体的には、外部のリハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等)と連携し、ご利用者の生活機能を評価すること、生活機能の維持・改善に向けた認知症対応型共同生活介護計画書の作成と計画に沿った介護サービスの提供を行うことが評価されます。
生活機能向上連携加算
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
生活機能向上連携加算
(1月あたり) |
なし | 200単位 |
身体的拘束等の適正化
ご利用者の生命や身体を保護するため緊急でやむを得ない場合をのぞき、身体拘束は介護保険法で禁止されています。しかし、身体拘束廃止の取り組みや職員への周知など具体的な対応は介護事業所に委ねられていたため、身体拘束を廃止する適切な体制が整えられていない事業所がありました。今回の介護報酬改定では、身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、以下の条件を満たさない場合は、大幅な減算が行われることとなりました。
- 身体的拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録すること。
- 身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を3月に1回以上開催し、その結果について介護職員等に周知徹底を図ること。
- 身体的拘束等の適正化のための指針を整備すること。
- 介護職員等に対して身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
身体拘束廃止未実施減算
(1日あたり) |
なし | 10%(減算) |
運営推進会議の開催方法の緩和
運営推進会議の効率化や、事業所間のネットワーク形成の促進等の観点から、現在認められていない複数の事業所の合同開催について、以下の要件を満たす場合に認めることなりました。
- ご利用者及びご利用者家族については匿名とするなど、個人情報・プライバシーを保護すること
- 同一の日常生活圏域内に所在する事業所であること
代表者交代時の開設者研修の取扱い
認知症対応型共同生活介護の代表者は、認知症対応型サービス事業開設者研修を修了していなければなりませんが、代表者の交代時期に認知症対応型サービス事業開設者研修が開催されていないことが多く、交代時期までに受講できないというケースがありました。そのため、この研修修了を代表交代から半年後と次回の認知症対応型サービス事業開設者研修開催日のいずれか早い日程までの猶予期間を設けることになりました。
まとめ
今回の介護報酬改定は、厚生労働省が改定の柱としている「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止のための質の良い介護サービスの実現」「多様な人材確保と生産性の向上」「介護サービスの適正化と重点化を通じた制度の安定化・持続可能性の確保」という点について、認知症対応型共同生活介護の経営に影響がある加算、減算の創設や変更などがありました。
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