通所リハビリテーションにおけるマニュアルを一覧でご紹介!
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通所リハビリテーション事業所の開業を検討している皆様の中には、「通所リハビリテーション事業所ではどのようななマニュアルを作成しなきゃいけないの?」や「マニュアルはどのようなな点に気を付けて作成すればいいの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、通所リハビリテーション事業所を開業する際に作成するマニュアルの種類や作成方法などについてご紹介していきます。
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目次
通所リハビリテーションのマニュアル一覧
マニュアルとは、業務の全体像や仕事に対する考え方と共に、仕事の進め方や必要な準備などを、誰が見ても分かるよう具体的に示したものです。
通所リハビリテーション事業所が作成するマニュアルには、苦情対応マニュアルやハラスメント防止マニュアルなどの運営指導で確認されるものと、従業員の接遇マニュアルや送迎マニュアルなどの作成義務はないが業務を効率化するために作成しておいた方が良いものに分けられます。
作成必須なマニュアル |
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作成しておいた方が良いマニュアル |
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通所リハビリテーションに必須のマニュアル
通所リハビリテーション事業所で必要なマニュアルには、運営基準に作成が義務付けられているマニュアルが挙げられます。
運営指導(実地指導)では、マニュアル等を作成しているかをチェックされますので、もしマニュアル等を作成していない場合、改善に向けた指摘を受けることになります。
【運営指導でチェックされるマニュアル・指針の一覧】
- 緊急時対応マニュアル
- 非常災害時対応マニュアル
- 苦情対応マニュアル
- 事故対応マニュアル
- ハラスメント防止マニュアル
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
- 虐待防止のための指針
ここからは、それぞれのマニュアルに記載する項目などについて詳しくご紹介していきます。
通所リハに必須のマニュアル①緊急時対応マニュアル
緊急時対応マニュアルには、通所リハビリテーション事業所で利用者様の体調・病状に急変が生じた場合に取るべき対応等を記載します。
通所リハビリテーションの運営基準には、「現に指定通所リハビリテーションの提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。」とされていますから、主治医や救急隊等に速やかに連絡ができるようにマニュアルを作成しておく必要があります。
緊急時対応マニュアルに記載する項目は以下のようになります。
【緊急時対応マニュアルに記載する項目】
- 急変時の確認事項(意識状態、呼吸状態、発熱、嘔吐等)
- 急変時に行う処置内容
- 救急隊へ連絡するべき状況(意識障害、呼吸停止、呼吸困難、けいれん発作等)
- 119番で救急隊へ伝える情報・伝え方
- ケアマネジャーや家族への連絡方法
など
通所リハに必須のマニュアル②非常災害時対応マニュアル
非常災害時対応マニュアルには、火災や台風等の非常災害が発生した際に適切な対応を取れるように、災害時の連携体制や避難、救出などの手順を記載します。
非常災害時対応マニュアルに記載する項目は以下のようになります。
【非常災害時対応マニュアルに記載する項目】
- 施設の立地条件(地形、災害危険区域等の該当の有無、予測される災害)
- 災害に関する情報の入手方法
- 関係機関の連絡先および通信手段(消防、警察、市町村、電力会社、水道局、自治会、病院、取引先)
- 職員の連絡先と緊急連絡網
- 利用者様やご家族の連絡先
- 避難を開始する時期、判断基準
- 避難場所
- 避難経路
- 避難方法
- 災害時の職員の参集基準、役割分担
- 関係機関との連携体制
- 食料、防災資材・機材の備蓄リスト
など
通所リハに必須のマニュアル③苦情対応マニュアル
苦情対応マニュアルには、利用者様やご家族からの苦情に適切に対応するために、事業所における苦情処理の体制や手順を記載します。
通所リハビリテーションでは、運営基準に以下のように苦情に対応しなければならないことが定められていますから、苦情があった際に適切な対応ができるようにマニュアルを作成しておく必要があります。
(苦情処理)
第三十六条 指定通所リハビリテーション事業者は、提供した指定通所リハビリテーションに係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定通所リハビリテーション事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定通所リハビリテーション事業者は、提供した指定通所リハビリテーションに関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定通所リハビリテーション事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定通所リハビリテーション事業者は、提供した指定通所リハビリテーションに係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定通所リハビリテーション事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。
(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)
苦情対応マニュアルに記載する項目は以下のようになります。
【苦情対応マニュアルに記載する項目】
- 苦情対応の基本(話し方、話を理解してもらえない場合の対応方法など)
- 苦情処理の体制(相談窓口や担当者)
- 苦情処理の流れ(記録、市町村や国保連等への調査の協力、改善報告、家族やケアマネジャー、主治医への報告など)
など
通所リハに必須のマニュアル④事故対応マニュアル
事故対応マニュアルには、利用者様が安心してサービスを利用できるよう、事故が発生した場合に事業者が取る措置や対応、その手順等を記載します。
通所リハビリテーションの運営基準では、以下のように定められていますから、万が一、事故が発生してしまった際に、慌てずに適切な対応がとれるよう、マニュアルを整備しておく必要があります。
(事故発生時の対応)
第三十七条 指定通所リハビリテーション事業者は、利用者に対する指定通所リハビリテーションの提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
2 指定通所リハビリテーション事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。
3 指定通所リハビリテーション事業者は、利用者に対する指定通所リハビリテーションの提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。
(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)
事故対応マニュアルに記載する項目は以下のようになります。
【事故対応マニュアルに記載する項目】
- 利用者様の身体の保護と安全確保の方法(事故状況の把握、傷害の程度を判断、救急車の手配、止血や人工呼吸等等の対応)
- 関係者への連絡網(ケアマネジャー、行政、医師、救急車等)
- ご家族への連絡網(職員からの報告⇒管理者⇒ご家族)
- 被害拡大防止のための対応(食中毒や感染症の発生等の際は医師や関係機関等の指示に従う)
- 事故の記録の作成方法
など
通所リハに必須のマニュアル⑤ハラスメント防止マニュアル
ハラスメント防止マニュアルには、職場におけるセクシャルハラスメントやパワーハラスメントを防止するために、ハラスメント対策への基本方針や具体的な取組みなどについて記載します。
男女雇用機会均等法等で職場におけるハラスメントの防止のための雇用管理上の措置を講じることが事業主に義務付けられていることから、通所リハビリテーシの運営基準には、「勤務体制の確保等」の項目にて以下のように定められています(一部抜粋)。
(勤務体制の確保等)
第百一条
4 指定通所リハビリテーション事業者は、適切な指定通所リハビリテーションの提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより通所リハビリテーション従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。
(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)
厚生労働省老人保健健康増進等事業「
介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所) 」によると、ハラスメント防止マニュアルに記載する項目は以下のようになります。
【ハラスメント防止マニュアルに記載する項目】
- ハラスメント防止マニュアルの目的
- ハラスメント防止マニュアルにおける用語の定義と使い方
- ハラスメント対策の基本的な考え方
- 事業所としての日頃からの備え
- 従業員自身によるハラスメント対策への備え
- 契約時の予防
- ハラスメント事案発生時の従業員としての対応
- ハラスメント事案発生時の事業所としての対応
- ハラスメント事案発生後の被害従業員に対する対応
- ハラスメント事案発生後のハラスメント行為者に対する対応
- ハラスメント事案発生後の事業所内における組織的対応
- ハラスメントを受けた時の連絡・相談先
通所リハに必須のマニュアル⑥感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針には、通所リハビリテーション事業所において食中毒・感染症が発生・まん延しないために、事業所が行う対策について記載します。
通所リハビリテーションの運営基準には以下のように「当該指定通所リハビリテーション事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること」が定められています。
(衛生管理等)
第百十八条 指定通所リハビリテーション事業者は、利用者の使用する施設、食器その他の設備又は飲用に供する水について、衛生的な管理に努め、又は衛生上必要な措置を講ずるとともに、医薬品及び医療機器の管理を適正に行わなければならない。
2 指定通所リハビリテーション事業者は、当該事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定通所リハビリテーション事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)をおおむね六月に一回以上開催するとともに、その結果について、通所リハビリテーション従業者に周知徹底を図ること。
二 当該指定通所リハビリテーション事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定通所リハビリテーション事業所において、通所リハビリテーション従業者に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること。
厚生労働省の「
介護現場における感染対策の手引き」によると、感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針に記載する項目は以下のようになります。
【感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針に記載する項目】
- 感染症対策についての基本的な考え方
- 感染管理体制
- 日頃の対策(事業所内の衛生管理、手洗い等のケアにかかる感染対策)
- 感染発生時の対応(発生状況の把握、感染拡大の防止、医療機関や保健所、市町村等との連携、行政等への報告)
- 新型コロナウイルス感染者が発生した場合の対応
など
通所リハに必須のマニュアル⑦虐待防止のための指針
虐待防止のための指針には、通所リハビリテーション事業所における虐待の発生や再発を予防するために、事業所が行う対策について記載します。
通所リハビリテーションの運営基準には、「当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための指針を整備すること」とされています。
運営基準の解釈通知によると、虐待の防止のための指針にに記載する項目は以下のようになります。
【虐待の防止のための指針に記載する項目】
- 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
- 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
- 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
- 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
- 成年後見制度の利用支援に関する事項
- 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
- 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
- その他虐待の防止の推進のために必要な事項
など
通所リハビリテーションで作成したほうが良いマニュアル
運営基準で定められているマニュアル以外にも、業務のマニュアルや送迎マニュアルなどを作成することで、職員を採用した際の人材育成を効率化できるほか、サービスの質を一定の水準に保つことに役立ちます。
通所リハビリテーション事業所で作成した方が良いマニュアルとして、以下のようなものが挙げられます。
【通所リハビリテーションで作成した方が良いマニュアル一覧】
- 請求業務・介護ソフトのマニュアル
- 利用者様の記録に関するマニュアル
- マナー・接遇マニュアル
- 新人研修マニュアル
- 業務マニュアル
- 送迎・福祉車両のマニュアル
- 防犯設備のマニュアル
- 人事手続きマニュアル
- お問い合わせ対応マニュアル
- 個人情報の取扱いに関するマニュアル
など
通所リハでマニュアルを作るときの注意点
通所リハビリテーション事業所の従業員等に活用されるマニュアルを作成するためには、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。ここからは、マニュアルを作成・運用する際のポイントをご紹介していきます。
注意点①マニュアルの目的を明確化する
マニュアルの目的や対象読者を明確にしていないと、誰がどんな時に使うマニュアルなのかが分からず、活用されないままになってしまう可能性があります。
活用されるマニュアルにするためにも、目的や使用方法などをマニュアルの冒頭に記載しましょう。
注意点②誰が読んでも分かりやすい文章・見た目にする
マニュアルは、まだ業務経験が浅い職員や、緊急時などに対応方法を確認する職員が利用します。そのような状況に置かれている職員がマニュアルを見た時に、どこに何が書かれているのか分からなかったり、複雑な文章や言葉が使われていて内容を把握するのに時間がかかったりしたら、マニュアルは活用されないでしょう。
ですから、
- 目次や見出しを設定して情報を分かりやすく整理する
- フローチャートやチェックリストを使う
- 画像やイラストを使う
- 専門用語には解説をつける
などといった点に注意をして、誰が読んでも分かりやすいマニュアルを目指しましょう。
注意点③管理方法を統一する
通所リハビリテーションでは、最低限作らなくてはならないマニュアルだけでも7種類あり、そのほかに作成した方が良いマニュアルも含めると、15種類以上のマニュアルを作成することになります。
複数あるマニュアルの保管場所や参照方法がばらばらだと、必要になった時に探す手間がかかりますし、最悪の場合、見つけられない可能性もあります。
ですから、
- マニュアルを管理する担当者を決める
- マニュアルを保管する場所を決める
- 必要なマニュアルを探しやすい仕組みを整える(マニュアルの電子化、ファイリングの工夫)
などといった点に注意して作成・保管しましょう。
注意点④アップデートを行う
一度マニュアルを作成しても、何年か経過して情報が古くなってしまうと、実際の業務内容とマニュアルの内容が一致しなくなってしまう可能性があります。
業務内容の変更や法改正などのタイミングで、マニュアルのアップデートが必要ないかを検討し、アップデートする担当者・ルールを決めておきましょう。
まとめ
ここまで、通所リハビリテーション事業所を開業する際に作成するマニュアルの種類や作成方法、マニュアルを作成・管理する際の注意点などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
通所リハビリテーション事業所では、複数のマニュアルを作成・管理していく必要があります。誰にでも分かりやすい・活用しやすいマニュアルを作成するだけでなく、作成したあとの管理方法や更新の頻度のルールなどについても考えておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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