デイケアの業務改善のためのポイントと手順・便利ツールをご紹介!
デイケア(通所リハビリテーション事業所)で業務改善をしたいと考えている皆様は、「どのような流れで業務改善を進めればいいの?」「業務改善に役立つツールとしてどのようなソフトがあるの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。
この記事では、業務改善を進めるための考え方や手順、便利なツールなどをご紹介します。
1.デイケア(通所リハ)の業務改善が必要な理由とは?
通所リハビリテーションでは、以下のような理由から業務改善に取り組む事業所が多いようです。
- 通常の労働時間内に業務が終わらない。
- 残業が多い。
- 従業員の業務負担が大きい。
- 特定の従業員に負荷がかかっている。
このような状況が起きていると、人件費が増加したり、従業員のモチベーションが下がったり、離職が増えたりします。
こうした状況を改善したいと思ったタイミングが、「業務改善」や「業務効率化」に取り組み始めるタイミングになっているようです。
また、業務改善の取り組みを行うことは、介護職員等処遇改善加算の算定要件の一部を満たすことにもなるので、職場環境等要件の一つである「生産性向上のための業務改善の取組」に該当する取り組みを行うことが多いようです。
処遇改善加算の算定要件:生産性向上のための業務改善の取組
- タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
- 高齢者の活躍等による役割分担の明確化
- 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
- 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減
2.デイケア(通所リハ)における業務改善の進め方
それでは、デイケアの業務改善を進めるための具体的な手順について確認しましょう。
厚生労働省の「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き」を参考に流れをご紹介します。
ガイドラインでは、業務改善を進めるための手順として、以下3つのステップを紹介しています。
- ステップ1:事業所の課題抽出・仮説設定・方針策定
- 目的の明確化
- 情報収集・現状把握
- 課題分析
- 仮説の設定・業務改善方針の策定
- ステップ2:体制準備・実行
- 体制整備
- 研修・ワークショップの実施
- 改善活動の実施
- ステップ3:改善活動の評価
ステップ1:事業所の課題抽出・仮説設定・方針策定
①目的の明確化
- 「サービスの質の向上」を念頭に置いた業務改善を行うという、目的や意義を明確にしましょう。
- 業務の見直しの範囲を決めましょう。
- 組織内の誰が中心となって業務改善を行うかを明確にしましょう。
②情報収集・現状把握
- 定性面:聞き取り調査で収集した情報を一覧化しましょう。
- 定量面:各職種の業務時間の配分を定量的に把握しましょう。
【定性面のイメージ】
(画像引用:「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き(医療系サービスガイドライン)」令和元年度改訂版より)
【定量面のイメージ】
(画像引用:「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き(医療系サービスガイドライン)」令和元年度改訂版より)
③課題分析
- 施設・事業所が抱える課題を洗い出しましょう。
- 課題を体系化しましょう。
【介護サービスにおけるムリ・ムダ・ムラとは】
発生するケース | |
---|---|
ムリ |
|
ムダ |
|
ムラ |
|
【ワークショップによる課題抽出のイメージ】
(画像引用:「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き(医療系サービスガイドライン)」令和元年度改訂版より)
④仮説の設定・業務改善方針の策定
- 取り組む業務改善の優先度を検討し、仮説を設定しましょう。
- 業務改善方針を検討する際は、後で評価しやすい目標を設定しましょう。
【業務改善の取り組みに優先度を設定するイメージ】
(画像引用:「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き(医療系サービスガイドライン)」令和元年度改訂版より )
ステップ2:体制整備・実行
①体制整備
- 施設・事業所内の業務改善の遂行体制を明確にしましょう。
- 各サービスのあるべき姿を共有しましょう。
②研修・ワークショップの実施
- 業務改善の意識・方法を共有するために、研修・ワークショップを実施しましょう。
【研修のイメージ】
(画像引用:「介護サービスの質の向上に向けた業務改善の手引き(医療系サービスガイドライン)」令和元年度改訂版より)
③改善活動の実施
- 業務改善活動を施設・事業所全体で一定期間実施してみましょう。
- 疑問点や課題が発生したら、ワーキング・チームに集約しましょう。
ステップ3:改善活動の評価
- ステップ1で設定した仮説の妥当性を検証しましょう。
- 改善活動の評価を踏まえ、さらなる改善を目指しましょう。
デイケアにおける業務改善活動の事例
ここからは、厚生労働省が公開しているデイケアでの業務改善の取り組み事例について紹介します。
事例①:表計算ソフトの活用による書類の電子化・転記時間の削減により、業務負荷削減
【取り組みの内容】
- 現在作成している書類と業務フローを確認した。
- 記録を電子化するにあたり不要になる書類や、新規で必要になる書類を整理した。
- 資料している資料を表計算ソフト上に作成した上で、見直すべき書類はフォーマットの変更を行った。
- 利用者情報等の項目を自動で転記・集計するマスタとなる書類を作成し、関数を用いて一度入力した項目を別のシートに反映できるようにした。
- 実際に運用し、改善点や修正点を特定しながら微修正を加え、運用に耐えられるシートを構築した。
【業務改善の効果】
- 手での記入・入力が自動で転記・集計できるようになったことで、書類作成時間を大幅に短縮することができた。
- 介護実施記録は自動転記のみで完成できるようになった。
- 前年同月と比較して残業時間が50%減少した。
- アンケート調査では職員の半数程度から「利用者の情報を検索しやすくなった」、「書類の記録・転記ミスが減少した」と言う意見が得られた。
事例②:インカムの導入による入浴業務や利用者受け入れ業務の効率化
【取り組みの内容】
- インカム導入し、業務時間中は常時インカムを着用。
- 入浴時の連絡をインカムによってスムーズにし、医療処置を行う看護師を探す時間の削減を狙いとした。これによって、利用者の浴室での待ち時間を削減でき、不快な思いをさせないようにするとともに、介護職員の待ち時間も減らすことを目指した。
- 送迎時の利用者受け入れに関しては、送迎車がいつ来るか分からずに複数人が玄関で待機するのではなく、送迎車の到着に合わせてインカムで必要な人数を呼び出して対応することで、到着直前までの時間を利用者へのサービスや間接業務に充てることを目指した。
【業務改善の効果】
- タイムスタディ調査では入浴業務、送迎時の利用者受け入れに関する業務時間の変化は明確に表れなかった。
- 情報共有が効率的に行えるようになったことで、職員間での情報共有の時間が職員1人1日あたり6.6分削減され、利用者の見守りに充てる時間が9.7分増加した。
- アンケート調査では、「情報共有が容易になった」、「情報収集のスピードが速くなった」と回答した職員が9割以上であり、効果として最も大きかった。
- 7割以上の職員が「見守り体制が強化された」と効果を実感し、タイムスタディ調査結果に見られるように、手厚い見守りができるようになった。
- ヒアリング調査では、当初狙いとしていた入浴時の看護師との連絡がスムーズになり、利用者の待ち時間が短縮されたという意見が得られた。
事例③:相談援助員の情報共有業務・送迎表作成業務のプロセスを改善
【取り組みの内容】
- 相談援助員が作成する「相談受付シート」に利用者宅への訪問時に必要となる情報を追加で盛り込み、記載方法の一部を定型化した。
- ケアマネジャーとの連携方法を電話からFAXに変更した。
- 利用者のキャンセル等で全車両の送迎スケジュールを修正する際に、表計算ソフトの参照機能を活用して、号車ごとの送迎表における利用者個別の特記事項(車いす・ヘルパーの要不要など)も連動して修正されるように送迎表の見直しを行い、送迎表修正時の手間・ミスの削減を図った。
【業務改善の効果】
- 相談援助員自身が業務改善を実感しており、アンケート調査においても、「FAXでのやり取りとすることでやり取りの時間が削減された」、「チェック方式にしたことで、後で見た時に利用者情報が確認しやすくなった」との回答が得られた。
- 取り組みの翌年度からは相談員とケアマネジャーとの新規利用者に関する連絡が取りやすくなったことで、新規利用の相談を受けてから利用検討会(利用者情報等をもとに利用可否を判定する会)を開催するまでの日数が平均して10日から6日に短縮した。
- アンケート調査を実施した結果、「送迎表の確認・修正に関する業務時間が削減された」「作成時のミスが削減された」との回答が確認された。
- ヒアリング調査を行ったところ、今後も継続して改善を進めていきたいとのコメントが得られた。
4.デイケア(通所リハ)の業務改善に役立つICTツール
デイケアにおける事務作業や情報共有の効率化など、業務改善や効率化に役立つICTツールを紹介します。
ICTツール | 改善できる業務内容 |
---|---|
介護ソフト |
記録・帳票作成の効率化(転記の削減) 請求業務の効率化 |
インカム |
リアルタイムの情報共有 複数人に対する情報共有 記録の音声保存 |
タブレット端末・介護記録ソフト |
現場での記録入力 現場での情報確認 画像の保存 |
オンライン会議システム・生成AI |
会議の議事録作成 オンライン会議・研修の実施 |
送迎システム |
送迎ルートの最適化 送迎表作成の効率化 |
5.まとめ
ここまで、デイケアの業務改善・業務効率化の取り組みや役立つツールについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
デイケアの業務改善・業務効率化を進めるには、業務の現状を見える化した上で、役割・業務分担を検討し、ソフトや機器を導入していくことが有効な手段です。
ここでご紹介した内容が、皆様の事業所の業務改善・業務効率化を考えるためのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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