認知症対応型通所介護の2021年度介護報酬改定



2021年(令和3年)度の介護報酬改定では、『感染症や災害への対応力強化』、『地域包括ケアシステムの推進』、『自立支援・重度化防止の取組の推進』、『介護人材の確保・介護現場の革新』、『制度の安定性・持続可能性の確保』から改定率『+0.70%』のプラス改定となりました。

ここでは、認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護の介護報酬改定の内容についてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

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認知症対応型通所介護の基本報酬の改定

認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護の基本報酬について以下のように改定が行われました。

認知症対応型通所介護、介護予防認知症対応型通所介護の基本報酬

サービス提供時間が7時間以上8時間未満の単位数を記載しています。

基本報酬 現行 改定後 増減
単独型 要支援1 856 859 +3
要支援2 956 959 +3
要介護1 989 992 +3
要介護2 1,097 1,100 +3
要介護3 1,204 1,208 +4
要介護4 1,312 1,316 +4
要介護5 1,420 1,424 +4
併設型 要支援1 769 771 +2
要支援2 859 862 +3
要介護1 889 892 +3
要介護2 984 987 +3
要介護3 1,081 1,084 +3
要介護4 1,177 1,181 +4
要介護5 1,272 1,276 +4
共用型 要支援1 482 483 +1
要支援2 510 512 +2
要介護1 520 522 +2
要介護2 539 541 +2
要介護3 557 559 +2
要介護4 575 577 +2
要介護5 595 597 +2

※令和3年9月30日までの間は、基本報酬について、所定単位数の千分の千一に相当する単位数を算定します。

認知症対応型通所介護の加算・減算等の改定

加算・減算等については、以下のように加算や区分の新設、算定要件の変更等の改定が行われています。

感染症又は災害の発生を理由とする利用者数の減少が一定以上生じている場合の加算

延べ利用者数の減が生じた月の実績が前年度の平均延べ利用者数から5%以上減少している場合、3ヵ月間、算定できる加算が新設されました。

感染症又は災害の発生を理由とする利用者数の減少が一定以上生じている場合の加算:+基本報酬3/100

中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算

離島や中山間地域等の要介護者に対する介護サービスの提供を促進する観点から、認知症対応型通所介護も、中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の対象となり、加算が新設されました。

中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算:+基本報酬5/100

入浴介助加算

利用者の自宅での入浴の自立を図る観点から、現行の加算の評価の見直しと、個別の入浴計画作成や計画に基づいた個別の入浴介助を評価する入浴介助加算(Ⅱ)の区分の新設がありました。

入浴介助加算(Ⅰ):(現行)50単位/日 ⇒ (改定後)40単位/日

入浴介助加算(Ⅱ):(新設)55単位/日

※(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定不可

入浴介助加算(Ⅰ)の算定要件

  • 入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して、入浴介助を行うこと

入浴介助加算(Ⅱ)の算定要件

  • 入浴介助を適切に行うことができる人員及び設備を有して、入浴介助を行うこと
  • 医師等が利用者の居宅を訪問し、浴室における当該利用者の動作及び浴室の環境を評価していること。この際、当該居宅の浴室が、当該利用者自身又は家族等の介助により入浴を行うことが難しい環境にある場合は、訪問した医師等が、介護支援専門員・福祉用具専門相談員と連携し、福祉用具の貸与・購入・住宅改修等の浴室の環境整備に係る助言を行うこと
  • 当該事業所の機能訓練指導員等が共同して、利用者の居宅を訪問した医師等と連携の下で、当該利用者の身体の状況や訪問により把握した当該居宅の浴室の環境等を踏まえた個別の入浴計画を作成すること
  • 上記の入浴計画に基づき、個浴その他の利用者の居宅の状況に近い環境にて、入浴介助を行うこと

生活機能向上連携加算

ICTの活用等により、外部のリハビリテーション専門職等が当該サービス事業所を訪問せずに、利用者の状態を適切に把握し助言した場合について評価する生活機能向上連携加算(Ⅰ)の区分が新設されました。

生活機能向上連携加算(Ⅰ):100単位/月(3月に1回を限度)

生活機能向上連携加算(Ⅱ):200単位/月(個別機能訓練加算を算定している場合は100単位/月)(単位数に変更なし)

※(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算定不可

生活機能向上連携加算(Ⅰ)の算定要件

  • 訪問・通所リハビリテーションを実施している事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設(※)の理学療法士等や医師からの助言を受けることができる体制を構築し、助言を受けた上で、機能訓練指導員等が生活機能の向上を目的とした個別機能訓練計画を作成等すること
  • 理学療法士等や医師は、通所リハビリテーション等のサービス提供の場又はICTを活用した動画等により、利用者の状態を把握した上で、助言を行うこと

※病院にあっては、許可病床数200床未満のもの又は当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しないものに限る

生活機能向上連携加算(Ⅱ)の算定要件

  • 現行と同じ

個別機能訓練加算

より利用者の自立支援等に資する個別機能訓練の提供を促進する観点から、CHASE へのデータ提出とフィードバックの活用による更なる PDCA サイクルの推進・ケアの向上を図ることを評価する区分が創設されました。

個別機能訓練加算(Ⅰ):27単位/日(単位数に変更なし)

個別機能訓練加算(Ⅱ):20単位/月

個別機能訓練加算(Ⅰ)の算定要件

  • 現行と同じ

個別機能訓練加算(Ⅱ)の算定要件

  • 加算(Ⅰ)に加えて、個別機能訓練計画等の内容を厚生労働省に提出し、フィードバックを受けていること

ADL維持等加算

自立支援・重度化防止に向けた取組を一層推進する観点から、算定要件(利用時間の要件、利用者の総数の要件、要介護3~5の割合、初回要介護認定12月以内の割合など)と単位数について見直しが行われました。

ADL維持等加算(Ⅰ):(現行)3単位/月 ⇒ (改定後)30単位/月

ADL維持等加算(Ⅱ):(現行)6単位/月 ⇒ (改定後)60単位/月

ADL維持等加算(Ⅰ)の算定要件

  • 利用者等(当該施設等の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10人以上であること
  • 利用者等全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出していること
  • 利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値を加えて得た値(調整済ADL利得)について、利用者等から調整済ADL利得の上位及び下位それぞれ1割の者を除いた者を評価対象利用者等とし、評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が1以上であること

ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件

  • 利用者等(当該施設等の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10人以上であること
  • 利用者等全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出していること
  • 利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値を加えて得た値(調整済ADL利得)について、利用者等から調整済ADL利得の上位及び下位それぞれ1割の者を除いた者を評価対象利用者等とし、評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が2以上であること

栄養アセスメント加算

管理栄養士と介護職員等の連携による栄養アセスメントの取組を評価する栄養アセスメント加算が新設されました。

栄養アセスメント加算:50単位/月

栄養アセスメント加算の算定要件

  • 当該事業所の従業者として又は外部との連携により管理栄養士を1名以上配置していること
  • 利用者ごとに、管理栄養士、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して栄養アセスメントを実施し、当該利用者又はその家族に対してその結果を説明し、相談等に必要に応じ対応すること
  • 利用者ごとの栄養状態等の情報を厚生労働省に提出し、栄養管理の実施に当たって、当該情報その他栄養管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること

栄養改善加算

栄養改善が必要な者を的確に把握し、適切なサービスにつなげていく観点から、算定要件と単位数の見直しが行われました。

栄養改善加算:(現行)150単位/回 ⇒ (改定後)200単位/回

栄養改善加算の算定要件

  • 現行の栄養改善加算と同じ
  • 栄養改善サービスの提供に当たって、必要に応じ居宅を訪問すること

口腔・栄養スクリーニング加算

利用者の口腔機能低下の重症化等の予防、維持、回復等につなげる観点から、介護職員等が実施可能な口腔スクリーニングと現行の栄養スクリーニング加算の取組を一体的に評価する「口腔・栄養スクリーニング加算」が新設されました。

口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ):20単位/回

口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ):5単位/回

口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅰ)の算定要件

  • 介護サービス事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態及び栄養状態について確認を行い、当該情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供していること

※栄養アセスメント加算、栄養改善加算、口腔機能向上加算との併算定不可

口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)の算定要件

  • 利用者が、栄養改善加算や口腔機能向上加算を算定している場合に、口腔の健康状態と栄養状態のいずれかの確認を行い、当該情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供していること

口腔機能向上加算

CHASEへのデータ提出とフィードバックの活用による更なるPDCAサイクルの推進・ケアの向上を図ることを評価する口腔機能向上加算(Ⅱ)の区分が新設されました。

口腔機能向上加算(Ⅰ):150単位/回

口腔機能向上加算(Ⅱ):160単位/回

口腔機能向上加算(Ⅰ)の算定要件

  • 現行の口腔機能向上加算と同じ

口腔機能向上加算(Ⅱ)の算定要件

  • 現行の口腔機能向上加算と同じ
  • 口腔機能改善管理指導計画等の情報を厚生労働省に提出し、口腔機能向上サービスの実施にあたって当該情報その他口腔衛生の管理の適切かつ有効な実施のために必要な情報を活用していること

科学的介護推進体制加算

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進し、介護サービスの質の向上を図る観点から、利用者のデータの提出、フィードバックに基づくケアプランや計画への反映などを評価する科学的介護推進体制加算が新設されました。

科学的介護推進体制加算:40単位/月

科学的介護推進体制加算の算定要件

  • 利用者ごとの、ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の利用者の心身の状況等に係る基本的な情報を、厚生労働省に提出していること
  • 必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供に当たって、上記の情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること

サービス提供体制強化加算

サービスの質の向上や職員のキャリアアップを一層推進する観点から見直され、新たな上位区分が新設、従来の区分の要件の変更がありました。

現行の区分・単位数 改定後の区分・単位数
なし サービス提供体制強化加算(Ⅰ):22単位/回
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ:18単位/回 サービス提供体制強化加算(Ⅱ):18単位/回
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ:12単位/回
サービス提供体制強化加算(Ⅱ):6単位/回
サービス提供体制強化加算(Ⅲ):6単位/回

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

以下のいずれかに該当すること

  • 介護福祉士70%以上
  • 勤続10年以上介護福祉士25%以上

サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

  • 介護福祉士50%以上

サービス提供体制強化加算(Ⅲ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

以下のいずれかに該当すること

  • 介護福祉士40%以上
  • 勤続7年以上の者が30%以上

介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件について、『取組の見直し』と『当該年度における取組の実施』の変更がありました。

また、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)と(Ⅴ)の区分について、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて、1年の経過措置期間を設けて廃止することになりました。

職場環境等要件の見直しの方向性

  • 職員の新規採用や定着促進に資する取組
  • 職員のキャリアアップに資する取組
  • 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
  • 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
  • 生産性の向上につながる取組
  • 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組

介護職員等特定処遇改善加算

平均の賃金改善額の配分ルールについて、「その他の職種」は「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは維持した上で以下の改定が行われました。

【現行】「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」

【改定後】「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「より高くすること」

平均の賃金改善額の配分ルール

※第199回社会保障審議会介護給付費分科会 参考資料1より引用

認知症対応型通所介護の介護報酬に係るその他の改定

区分支給限度基準額の計算方法

同一建物減算等の適用を受ける利用者の区分支給限度基準額は、減算の適用前(同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合)の単位数を用いて計算することになりました。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の計画や会議

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハビリテーション専門職、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化されました。

また、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書(リハビリテーション計画書、栄養ケア計画書、口腔機能向上サービスの管理指導計画・実施記録)について、重複する記載項目を整理し、それぞれの実施計画を一体的に記入できる様式が設けられます。

認知症対応型通所介護の人員、設備、運営の基準、その他の改定

非常災害対策

非常災害対策の訓練の実施にあたって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めることが求められることになりました。

管理者の研修修了要件

管理者の要件とされている認知症介護実践者研修及び認知症対応型サービス事業管理者研修の修了について、研修の実施時期が自治体によって他律的に決定されるものであることから、管理者が交代する場合において、新たな管理者が、市町村からの推薦を受けて都道府県に研修の申し込みを行い、研修を修了することが確実に見込まれる場合は、研修を修了していなくてもよい取扱いとなりました。

なお、事業者の新規指定時には、管理者は原則どおり研修を修了していることを必要となります。

共用型認知症対応型通所介護における管理者の兼務

人材の有効活用を図る観点から、管理上支障がない場合の兼務について、現行では「当該共用型指定認知症対応型通所介護事業所の他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することができる」とされていましたが、改定により「当該共用型指定認知症対応型通所介護事業所の他の職務に従事し、かつ、同一敷地内にある他の本体事業所等の職務に従事することとしても差し支えない」となりました。

認知症介護基礎研修の義務化

介護に直接携わる職員の認知症対応力を向上させていくため、介護サービス事業者に、無資格の職員について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることが義務づけられました。これには3年の経過措置、新入職員には1年の猶予期間があります。

情報公表制度における変更

介護サービス情報公表制度において、従業者の認知症介護実践者研修の受講状況などの認知症に係る事業者の取組状況を公表する項目が設けられました。

最後に

本記事は、作成時点の最新資料を基に作成しています。今後、厚生労働省より解釈通知、各自治体より詳細な通知・資料などが公開されますので、具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報を基にご判断をいただきますようお願い致します。

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