認知症対応型通所介護の運営指導(実地指導)とは
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介護保険に基づくサービスを提供する事業所・施設は、管轄する行政機関によって定期的に、「法令等を遵守し、適切な事業所運営がされているか」を確認する『運営指導(実地指導)』が実施されます。
これから運営指導を控える方の中には、どのような内容なのか、何が行われるのか知りたい、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、運営指導(実地指導)について、概要や確認される項目・書類等について解説します。
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目次
- 運営指導(実地指導)・監査とは?
- 認知症対応型通所介護の運営指導の内容
- 運営指導のチェック項目と書類内容
- 認知症対応型通所介護の運営指導のチェックリスト・自己点検票とは?
- 認知症対応型通所介護の運営指導対策のポイントとは?
- まとめ
運営指導(実地指導)・監査とは?
行政機関が実施する指導の中には、「集団指導」と「運営指導」があり、運営指導や情報提供により不正等の疑いがある時は、「監査」が実施されます。
それでは、それぞれの違いについてみていきましょう。
運営指導(実地指導)とは?
運営指導(実地指導)とは、行政機関が指定基準等に定められた介護サービスの質や事業所の運営体制、介護報酬の請求や加算の算定状況などについて、現地等にて書類等を確認して実施する指導です。
運営指導は、指定の有効期間(6年)に少なくとも1回以上実施されることになっています。
以前は、現地に赴いて指導が行われていたので「実地指導」という名称でしたが、確認する内容によってはオンラインで実施する場合があるため、2022年に『運営指導』という名称になりました。
集団指導とは?
集団指導とは、行政機関が指定基準等に定められた介護サービスの質や事業所の運営体制、介護報酬の請求や加算の算定状況などについて、オンラインや集合形式の講習会などで実施する指導です。
年に1回以上実施されることになっています。
監査とは?
監査とは、運営指導などで人員基準違反や運営基準違反、不正請求の疑いのある事業所に対し、その確認のために実施される検査です。担当者に出頭を要請して質問を行うほか、直接現地に入った上で検査を実施し、違反や不正等の内容に応じて指導や行政処分等が決定します。
認知症対応型通所介護の運営指導の内容
では、具体的に運営指導ではどのようなことを確認されるのでしょうか。観点は大きく分けて3つあります。
介護サービスの実施状況指導
「介護サービスの実施状況指導」では、ケアマネジメント・プロセスに基づくサービス実施がされているか、高齢者虐待や適切な手続きを経ていない身体的拘束等が行われていないかなどについて確認されます。
最低基準等運営体制指導
「最低基準等運営体制指導」では、個別サービスの質を確保するための体制に関する事項について確認されます。
報酬請求指導
「報酬請求指導」では、不正請求の防止を目的として、事業所が適正に介護報酬を請求しているかを確認されます。
具体的には、各種加算に関する算定や請求の状況と算定要件を満たしているか、算定している基本報酬が実際のサービスに相当したものであるかなどを確認されます。
運営指導のチェック項目と書類内容
ここでは運営指導に向けて準備すべき、書類についてご説明します。
運営指導の標準確認項目とは?
運営指導で確認される項目は、 『標準確認項目』としてその項目・内容が定められています。(下記の項目は一部抜粋。)
【個別サービスの質に関する事項】
- 指定申請時(更新時含む)又は直近の変更届の平面図に合致しているか【目視】
- 使用目的に沿って使われているか【目視】
- 利用申込者又はその家族への説明を行っているか
- 利用申込者の同意を得ているか
- 重要事項説明書の内容に不備等はないか
- サービス担当者会議等に参加し、利用者の心身の状況把握に努めているか
- サービス担当者会議等を通じて介護支援専門員や他サービスと密接な連携に努めているか など
【個別サービスの質を確保するための体制に関する事項】
- 利用者に対し、従業者の員数は適切であるか
- 必要な専門職が配置されているか
- 必要な資格を有しているか
- 管理者は常勤専従か、他の職務を兼務している場合、兼務体制は適切か
- 管理者は必要な研修を受けているか
- 被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期限を確認しているか など
*参考:厚生労働省 確認項目
運営指導の標準確認文書とは?
続いて、運営指導で確認される書類は、厚生労働省から『標準確認文書』として例示されています。
<確認文書>
- 平面図(行政機関側が保存しているもの)
- 重要事項説明書(利用申込者の同意があったことがわかるもの)
- 利用契約書
- サービス担当者会議の記録
- 居宅サービス計画
- 認知症対応型通所介護計画(利用者の同意があったことがわかるもの)
- サービス提供記録
- 送迎記録がわかるもの
- 身体的拘束等の記録(身体的拘束等がある場合)
- 居宅サービス計画
- 認知症対応型通所介護計画(利用者の同意があったことがわかるもの)
- アセスメントの結果がわかるもの
- モニタリングの結果がわかるもの
- 従業者の勤務体制及び勤務実績がわかるもの(例:勤務体制一覧表、勤務実績表)
- 従業者の勤怠状況がわかるもの(例:タイムカード、勤怠管理システム)
- 資格要件に合致していることがわかるもの(例:資格証の写し)
- 管理者の雇用形態がわかるもの
- 管理者の勤務体制及び勤務実績がわかるもの(例:勤務体制一覧表、勤務実績表)
- 管理者の勤怠状況がわかるもの(例:タイムカード、勤怠管理システム)
- 研修を修了したことがわかるもの
- 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等
- 請求書
- 領収書
- 運営規程
- サービス提供記録
- 従業者の勤務体制及び勤務実績がわかるもの(例:勤務体制一覧表、勤務実績表)
- 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかるもの
- 研修の計画及び実績がわかるもの
- 職場におけるハラスメントによる就業環境悪化防止のための方針
- 業務継続計画
- 研修の計画及び実績がわかるもの
- 訓練の計画及び実績がわかるもの
- 国保連への請求書控え
- 非常災害時の対応計画(管轄消防署へ届け出た消防計画(風水害、地震対策含む)又はこれに準ずる計画)
- 避難・救出等訓練の実施状況がわかるもの
- 通報、連絡体制がわかるもの
- 感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会の開催状況・結果がわかるもの
- 感染症の予防及びまん延の防止のための指針
- 感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練の実施状況・結果がわかるもの
- 個人情報の利用に関する同意書
- 従業者の秘密保持誓約書
- パンフレット/チラシ
- web広告
- 苦情の受付簿
- 苦情への対応記録
- 運営推進会議の記録
- 市町村、利用者家族、居宅介護支援事業者等への連絡状況がわかるもの
- 事故に際して採った処置の記録
- 損害賠償の実施状況がわかるもの
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会の開催状況及び結果がわかるもの
- 虐待の防止のための指針
- 虐待の防止のための研修の計画及び実績がわかるもの
- 担当者を置いていることがわかるもの
*参考:厚生労働省 確認文書
認知症対応型通所介護の運営指導のチェックリスト・自己点検票とは?
自己点検票とは、介護保険法に定められる基準(人員基準・設備基準・運営基準)や介護報酬の算定が適正に行われているかどうかを、事業所自らが点検するための票です。運営指導を受ける事業所は、実施前に自己点検票を利用したチェックを行うことが求められますので、指定権者のホームページから自己点検票をダウンロードしてチェックしましょう。
ここでは一例として、足立区が公開している認知症対応型通所介護の自己点検票をもとに、その内容の一部をご紹介していきます。
【人員基準(単独・併設型)】
- 生活相談員
- サービスの提供日ごとに、サービスを提供している時間帯に生活相談員が勤務している時間数の合計数をサービスを提供している時間帯の時間数で除して得た数が1以上確保されているか。
- 生活相談員は、社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者又はこれらと同等以上の能力を有する者が配置されているか。
- 看護職員又は介護職員
- 単位ごとに、専ら当該サービスの提供にあたる看護職員(看護師又は准看護師)又は介護職員が1以上及び看護職員又は介護職員が勤務している時間数の合計数をサービスを提供している時間数で除して得た数が1以上確保されるために必要な数を配置しているか。
- 機能訓練指導員
- 機能訓練指導員を1以上配置しているか。
- 機能訓練指導員は、必要な訓練を行う能力を有している者(※)が配置されているか。
【運営に関する基準】
- 利用者の認知症の症状の進行の緩和に資するよう、その目標を設定し、計画的に行っているか。
- 事業者は、自らその提供するサービスの質の評価を行い、常にその改善を図っているか。
- 指定認知症対応型通所介護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定認知症対応型通所介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じているか。
- 利用定員を超えてサービスの提供を行っていないか。
- 虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じているか。
【介護給付費の算定および取り扱い】
- 所要時間による区分については、現に要した時間ではなく、認知症対応型通所介護計画に位置づけられた内容の指定認知症対応型通所介護を行うのに要する標準的な時間で、それぞれ所定単位数を算定しているか。
- 心身の状況その他利用者のやむを得ない事情により、長時間のサービス利用が困難である利用者に対して、所要時間2時間以上3時間未満の指定認知症対応型通所介護を行う場合は、施設基準に掲げる区分に従い、「所要時間4時間以上5時間未満の場合」の所定単位数の100分の63に相当する単位数を算定しているか。
- 指定認知症対応型通所介護事業所の従業者が、平成21年厚生労働省告示83号の2に定める地域に居住している利用者に対して、指定地域密着型サービス基準54条第六号に規定する通常の事業の実施地域を越えて、サービスを提供した場合は、1日につき所定の単位数から100分の5に相当する単位数を所定単位数に加算しているか。
※参考 東京都足立区「介護サービス事業者の自己点検票について」自己点検票 【令和3年度版】認知症対応型通所介護
認知症対応型通所介護の運営指導対策のポイントとは?
運営指導において指摘・指導を受けないために、対策のポイントをいくつかご紹介します。
- 基本報酬、加算の算定要件を理解し、要件を満たした上で算定しているかを確認する。
- 請求した介護報酬とサービス提供の実績に差異がないかを確認する。
- 日頃から定期的に書類の不備がないかを確認する。
- 研修の実施状況や寄せられた苦情の内容などを記録として残しているか確認する。
- 事務所内は日頃から整理整頓をして、清潔を保持する。
まとめ
認知症対応型通所介護の運営指導について述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。
運営指導の前には自己点検票を使用した準備はもちろん、万全の状態で臨めるよう標準確認文書等を用意し、対策のポイントを参考に日頃から書類作成や書類整理・保管を行いましょう。
ここでご紹介した内容が、皆様の事業所運営のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。