居宅療養管理指導事業所で必要なマニュアルの一覧【開業準備】



居宅療養管理指導事業の立ち上げを検討している皆様の中には、「居宅療養管理指導事業所では何のマニュアルが必要なの?」や「分かりやすいマニュアルはどうやって作ればいいの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、居宅療養管理指導事業所で作成する必要のあるマニュアルの種類や、分かりやすいマニュアルを作成する手順などについてご紹介していきます。

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目次

居宅療養管理指導事業所で必要なマニュアルの一覧

マニュアルとは、業務の全体像や仕事に対する考え方と共に、仕事の進め方や必要な準備などを、誰が見ても分かるよう具体的に示したものです。
居宅療養管理指導事業所が作成するマニュアルには、ハラスメント防止マニュアルや事故対応マニュアルなどの運営指導で確認されるものと、業務マニュアルや他職種との連携に関するマニュアルなどの作成義務はないが業務を効率化するために作成しておいた方が良いものに分けられます。

居宅療養管理指導事業所で必要なマニュアルの一覧
作成しておかなくてはいけないマニュアル
  • ハラスメント防止マニュアル
  • 衛生マニュアル
  • 感染症の予防及びまん延の防止のための指針
  • 苦情対応マニュアル
  • 事故対応マニュアル
  • 虐待の発生・再発防止のための指針
作成しておいた方が良いマニュアル
  • 職種ごとの業務マニュアル
  • 他職種との連携に関するマニュアル
  • マナー・接遇マニュアル
  • プライバシー保護の取組みに関するマニュアル
  • 認知症対応マニュアル
  • 請求業務のマニュアル
    など

居宅療養管理指導事業所に必須のマニュアル

居宅療養管理指導事業所で必須のマニュアルは、運営基準に作成する旨が定められているマニュアル等です。
これらのマニュアルは、運営指導(実地指導)で作成されているかどうかをチェックされることになりますので、作成し、運用しましょう。

【開業時に必須なマニュアルの一覧】

  • ハラスメント防止マニュアル
  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
  • 苦情対応マニュアル
  • 事故対応マニュアル
  • 虐待の発生・再発防止のための指針

ここからは、それぞれのマニュアルに記載する項目などを詳しくご紹介していきます。

居宅療養管理指導の必須マニュアル①ハラスメント防止マニュアル

ハラスメント防止マニュアルは、職場におけるセクシャルハラスメントやパワーハラスメントを防止するために、ハラスメント対策への基本方針や具体的な取組みなどについて記載するマニュアルです。
居宅療養管理指導では、ハラスメントの防止について運営基準に以下のように定められています(「勤務体制の確保等」より一部抜粋)。

(勤務体制の確保等)
第三十条
  4 指定居宅療養管理指導事業者は、適切な指定居宅療養管理指導の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより居宅療養管理指導従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。

(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

ハラスメント防止マニュアルの作成に当たっては、厚生労働省老人保健健康増進等事業「 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所)」を参考にして作成しましょう。

介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

(出典:厚生労働省老人保健健康増進等事業「 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所)」 )

居宅療養管理指導の必須マニュアル②衛生マニュアル

衛生マニュアルには、設備および備品等の衛生的な管理の方法などについて記載します。
居宅療養管理指導では、衛生管理について、運営基準に以下のように定められています(「衛生管理等」より一部抜粋)。

(衛生管理等)
第三十一条
  2 指定居宅療養管理指導事業者は、指定居宅療養管理指導事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めなければならない。

(引用:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

衛生マニュアルには、以下の項目を分かりやすく記載します。

【衛生管理マニュアルに記載する項目】

  • 衛生マニュアルの目的
  • 衛生管理に留意したサービス提供の流れ
  • 設備および備品等の衛生的な管理方法
  • 日頃からの体調管理の方法
    など

居宅療養管理指導の必須マニュアル③感染症の予防及びまん延の防止のための指針

感染症の予防及びまん延の防止のための指針は、居宅療養管理指導事業所において感染症が発生・まん延しないために、事業所が行う対策について記載するマニュアルです。
居宅療養管理指導では、感染症の予防及びまん延の防止について、運営基準に以下のように定められています(「衛生管理等」より一部抜粋)。
※2024年3月31日までは努力義務。2024年4月1日より適用。

(衛生管理等)
第三十一条 
3 指定居宅療養管理指導事業者は、当該指定居宅療養管理指導事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定居宅療養管理指導事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置その他の情報通信機器(以下「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。)をおおむね六月に一回以上開催するとともに、その結果について、居宅療養管理指導従業者に周知徹底を図ること。
二 当該指定居宅療養管理指導事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定居宅療養管理指導事業所において、居宅療養管理指導従業者に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること。

(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

運営基準の解釈通知によると、感染症の予防及びまん延の防止のための指針には以下の項目を記載します。厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」には、それぞれの項目の記載内容の例も示されていますので、マニュアルを作成する際に参考にしましょう。

【感染症の予防及びまん延の防止のための指針に記載する項目】

  • 平常時の対策
    1. 事業所内の衛生管理(環境の整備等)
    2. ケアにかかる感染対策(手洗い、標準的な予防策)
  • 発生時の対応
    1. 発生状況の把握
    2. 感染拡大の防止
    3. 医療機関や保健所、市町村との連携
    4. 行政等への報告
  • 発生時における事業所内の連絡体制
  • 関係機関への連絡体制

居宅療養管理指導の必須マニュアル④苦情対応マニュアル

苦情対応マニュアルは、利用者様やご家族からの苦情に適切に対応するために、事業所における苦情処理の体制や手順を記載するマニュアルです。
居宅療養管理指導の運営基準には、以下のように苦情に対応しなければならないことが定められています。

(苦情処理)
第三十六条 指定居宅療養管理指導事業者は、提供した指定居宅療養管理指導に係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定居宅療養管理指導事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定居宅療養管理指導事業者は、提供した指定居宅療養管理指導に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定居宅療養管理指導事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定居宅療養管理指導事業者は、提供した指定居宅療養管理指導に係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定居宅療養管理指導事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。

(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

苦情対応マニュアルには、以下の項目を分かりやすく記載します。

【苦情対応マニュアルに記載する項目】

  • 苦情対応の基本(話し方、話を理解してもらえない場合の対応方法など)
  • 苦情処理の体制(相談窓口や担当者)
  • 苦情処理の流れ(記録、市町村や国保連等への調査の協力、改善報告、家族やケアマネジャー、主治医への報告など)
    など

居宅療養管理指導の必須マニュアル⑤事故対応マニュアル

事故対応マニュアルは、利用者様が安心して居宅療養管理指導サービスを利用できるよう、事故が発生した場合に事業者が取る措置や対応、その手順等を記載するマニュアルです。
居宅療養管理指導の運営基準には、「事故発生時の対応」について以下のように定められています。

(事故発生時の対応)
第三十七条 指定居宅療養管理指導事業者は、利用者に対する指定居宅療養管理指導の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。
2 指定居宅療養管理指導事業者は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録しなければならない。
3 指定居宅療養管理指導事業者は、利用者に対する指定居宅療養管理指導の提供により賠償すべき事故が発生した場合は、損害賠償を速やかに行わなければならない。

(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

事故対応マニュアルには、以下の項目を記載します。

【事故対応マニュアルに記載する項目】

  • 事故対応の全体像と流れ
  • 利用者様の身体の保護と安全確保の方法(事故状況の把握、傷害の程度を判断、救急車の手配、止血や人工呼吸等等の対応)
  • 関係者への連絡(行政、医師、救急車等)
  • ご家族への連絡(職員からの報告⇒管理者⇒ご家族)
  • 被害拡大防止のための対応(感染症の発生等の際は医師や関係機関等の指示に従う)
  • 事故の記録の作成方法
    など

居宅療養管理指導の必須マニュアル⑥虐待の発生・再発防止のための指針

虐待の発生・再発防止のための指針は、虐待の未然防止や早期発見、虐待等への迅速かつ適切な対応をするために、事業所が行う対策について記載するマニュアルです。
居宅療養管理指導の運営基準には、「虐待の防止」について以下のように定められています。
※2024年3月31日までは努力義務。2024年4月1日より適用。

(虐待の防止)
第三十七条の二 指定居宅療養管理指導事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定居宅療養管理指導事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、居宅療養管理指導に周知徹底を図ること。
二 当該指定居宅療養管理指導事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定居宅療養管理指導事業所において、居宅療養管理指導従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

(引用元:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)

居宅療養管理指導の運営基準の解釈通知には、虐待の発生・再発防止のための指針として以下の項目を記載しなければならないことが定められています。

【虐待の発生・再発防止のための指針に記載する項目】

  • 事業所における虐待の防止に関する基本的考え方
  • 虐待防止検討委員会その他事業所内の組織に関する事項
  • 虐待の防止のための職員研修に関する基本方針
  • 虐待等が発生した場合の対応方法に関する基本方針
  • 虐待等が発生した場合の相談・報告体制に関する事項
  • 成年後見制度の利用支援に関する事項
  • 虐待等に係る苦情解決方法に関する事項
  • 利用者等に対する当該指針の閲覧に関する事項
  • その他虐待の防止の推進のために必要な事項
    など

居宅療養管理指導事業所で作成した方が良いマニュアル

居宅療養管理指導事業所で作成した方が良いマニュアルには、業務マニュアルや請求業務マニュアルなどが挙げられます。これらのマニュアルを作成することで、職員が入れ替わった際の引継ぎなどがスムーズになります。

【居宅療養管理指導事業所で作成しておいた方が良いマニュアル】

  • 職種ごとの業務マニュアル
  • 他職種との連携に関するマニュアル
  • マナー・接遇マニュアル
  • プライバシー保護の取組みに関するマニュアル
  • 認知症対応マニュアル
  • 請求業務のマニュアル
    など

居宅療養管理指導事業所でマニュアルを作成する方法

ここからは、居宅療養管理指導事業所で分かりやすいマニュアルを作成する方法を手順を追ってご紹介していきます。

ステップ①目的を明確にする

マニュアルを作成する際は、マニュアルの目的を明確にすることが大切です。
また、いつ、誰が、どのような目的で使用するためのマニュアルなのかを具体的に考え、マニュアルの冒頭に記載しましょう。

【目的を記載したマニュアルの例】

目的を記載したマニュアルの例

(出典:厚生労働省老人保健健康増進等事業「 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所)」)

ステップ②語句の定義をする

マニュアルの目的の一つは、「職員がマニュアルに沿った同じ行動をとること」です。
語句の定義がされていないと、マニュアルを見た人によって解釈に違いが出てしまう可能性や、伝えたいことが正確に伝わらない恐れがありますから、解釈が難しいと思われる語句や専門用語を使用する際には、あらかじめ語句の定義をしておきましょう。

 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

(出典:厚生労働省老人保健健康増進等事業「 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所)」)

ステップ③業務の全体像・流れを説明する

マニュアルでは、説明したい業務の全体像・流れを説明します。
説明の際は、文章だけで記載するのではなく、フローチャートなどを用いて説明するとより伝わりやすいマニュアルになるでしょう。

【フローチャートを利用したマニュアルの例】

苦情・相談の対応マニュアル

(出典:徳島県・徳島県国民健康保険団体連合会「 苦情・相談の対応マニュアル」)

ステップ④それぞれの段階における手順を細かく説明する

業務の流れを説明したら、それぞれの段階で行うことについて、手順を細かく説明します。
その際に、チェックリストや画像、表、よくある質問(F&Q)などを用いることで、マニュアルの内容が伝わりやすくなるでしょう。

居宅療養管理指導事業所でマニュアルの運用方法

労力をかけて作成したマニュアルを現場で活用してもらうために、居宅療養管理指導事業所で作成したマニュアルを効果的に運用するための注意点についてご紹介していきます。

管理方法を統一する

居宅療養管理指導事業所ではたくさんのマニュアルを作成することになります。複数あるマニュアルの保管場所や参照方法がばらばらだと、必要になった時に探す手間がかかりますし、最悪の場合、見つけられない可能性もあります。
ですから、

  • マニュアルを管理する担当者を決める
  • マニュアルを保管する場所を決める
  • 必要なマニュアルを探しやすい仕組みを整える(マニュアルの電子化、ファイリングの工夫)

などといった点に注意して作成・保管しましょう。

マニュアルのアップデートを行う

一度マニュアルを作成しても、何年か経過して情報が古くなってしまうと、実際の業務内容とマニュアルの内容が一致しなくなってしまう可能性があります。
また、居宅療養管理指導のサービス内容の変更・拡大等によって、マニュアルのアップデートが必要となるケースもあります。
定期的に見直しを行う体制を構築しましょう。

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まとめ

ここまで、居宅療養管理指導事業所で作成する必要のあるマニュアルの種類や、分かりやすいマニュアルを作成する手順などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
開業時に必要なマニュアルを一通り作成するだけでなく、現場で活用されるためにも、マニュアルの管理や更新のルールなどについてもあらかじめ決めておくことが大切になります。
この記事が皆様の開業準備のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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