訪問入浴介護の開業の流れ、開業資金、指定申請を徹底解説!



高齢化が進む現代において、様々な介護サービスのニーズが高まっています。
地域の中で、自宅での入浴が困難な要介護高齢者の増加と、それに対する訪問入浴サービスの不足を感じている方は、「訪問入浴介護を開業しよう」と考えているのではないでしょうか。
この記事では、訪問入浴介護事業を開業するまでの流れと満たさなくてはいけない条件、開業資金と資金調達方法などを解説しています。

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目次

訪問入浴介護のサービス内容とは?

訪問入浴介護とは、自宅での入浴が難しい要介護・要支援の高齢者に対して、専用の浴槽を持参して自宅を訪問し、入浴サービスを提供する事業です。
「訪問入浴介護」と「訪問介護による入浴介助」の違いは、

という点になります。

訪問入浴介護を開業するまでの流れ

ここでは訪問入浴介護を開業するまでに必要な手続きを、①法人設立、②物件と設備の手配、③採用、④指定申請に分けて、順序だてて解説します。

法人設立

訪問入浴介護事業所を開設するためには「法人であること」が求められていますので、法人として登記していない場合は、法人の設立登記の手続きを行う必要があります。
既に法人を設立している場合は、定款の目的の変更等を行いましょう。
介護事業を運営できる法人(法人格)には、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人、社会福祉法人などたくさんの種類がありますので、設立要件、設立費用、税制の取り扱いなどを把握して、自身に合った法人(法人格)を選びましょう。
介護事業を開業する際は、設立費用が少なく、設立するまでが短期間である株式会社や合同会社が選ばれることが多いです。

設備基準を満たすための物件と設備の手配

訪問入浴介護の設備基準

訪問入浴介護の設備基準には、事業を運営する上で最低限準備しなくてはならない設備や備品などについて以下のように定められています。

専用の事務室及び区画

事務室・区画に関しては、専用が望ましいですが、間仕切り等で明確に区分される場合は、他の事業と同一の事務室でも差し支えないとされています。

設備・備品等

設備・備品等に関しては、運営に支障がない場合は、同一敷地内の他の事業所・施設等に備え付けられた設備及び備品等を使用することができるとされています。

建物・設備・備品の手配の方法

ここでは設備基準に定められる事務室や設備・備品等の手配の方法をご紹介します。

事務室(事務所)

事務室(事務所)を借りる場合には、不動産業者に直接行くか、不動産物件検索アプリを使うことが多いです。

賃貸物件には、事業用賃貸物件と居住用賃貸物件の2種類あります。

事業用賃貸物件 居住用賃貸物件
使用目的 商業・ビジネスのため 住むため
初期費用 居住用賃貸物件に比べて高い
(多くの従業員が出入りし、物件が劣化しやすいため)
事業用賃貸物件に比べて安い

通常、事業用賃貸物件を借りることが一般的ですが、居住用賃貸物件を借りる場合には、賃貸契約書に「事業用(介護事業所)として利用する」ことを必ず記載してください。物件オーナーの許可なく転用した場合は、違約金や契約解除といったトラブルにつながる可能性があるので注意しましょう。

冒頭にてお伝えした通り設備基準を満たすことが大前提ですが、その他の条件、例えば、車を置ける十分な駐車場はあるかどうか、毎月継続的に支払いができる賃料かどうか、今後の営業拡大や採用の観点から立地・アクセスはどうかなどの条件から物件を探しましょう。

浴槽

各メーカーのホームページなどから情報を集めて、どのメーカーの浴槽にするのか、どうような機能がある浴槽にするのかを決めましょう。
購入にあたっては、一括での支払、分割での支払、リース契約などの支払い方法も検討します。

車両

前提の条件として、浴槽を積むことができて、従業員3人が同乗できる車種を選ぶことになります。 希望する予算に合わせて、「新車・中古車」、「購入・支払の方法」などを検討します。また、新車を購入する場合は、納車までの期間を確認しましょう。

訪問入浴介護の人員基準

訪問入浴介護の人員基準には、事業を運営する上で最低限配置しなくてはならない職種や人数などについて以下のように定められています。

管理者
配置基準 資格要件
常勤専従で1人 特になし

職務上支障がない場合は、同一事業所内の他の職務や他の事業所の職務との兼務が認められます。

看護職員
配置基準 資格要件
1人以上 看護師、准看護師

※看護職員または介護職員のうち、1人以上は常勤である必要があります。

介護職員
配置基準 資格要件
2人以上 特になし

※看護職員または介護職員のうち、1人以上は常勤である必要があります。

採用活動のポイント

訪問入浴介護は、看護職員1名、介護職員2名が最低限必要な人員として定められているため、開業するためには採用活動を行う必要があります。
介護業界では、人手不足が深刻な問題となっていることから、「看護職員」や「介護職員」の採用活動は難航することが予測されますので、様々な媒体を通じて採用活動を行うことをおススメします。

【開業時に利用されている求人媒体】

指定申請

訪問入浴介護を開業するためには、事業を実施するための許可をもらうために、指定権者(都道府県または市)に指定申請を行います。指定申請手続きでは、以下のような指定申請書及び添付書類を作成・準備し、提出します。

【指定申請書・添付書類の例】

※書類は例示です。実際に必要となる書類は、指定権者にご確認ください。

申請書類や期日は指定権者のホームページ等で確認することができます。
指定申請前に研修の受講が必要となる都道府県もあるので早めにスケジュールの確認をしましょう。

訪問入浴介護の開業資金と調達方法

訪問入浴介護事業を開始するにあたって、どのような費用がいくらかかるのでしょうか。
開業資金の目安の金額と資金調達の方法を解説します。

訪問入浴介護を開業資金の目安は500万円~1,000万円

訪問入浴介護を開業するための資金の目安は約500~1,000万円になるでしょう。
※こちらの金額はあくまでも目安になりますので、開業する地域や用意する設備等により、必要となる開業資金は違います。
開業資金の内訳として、以下のような項目があります。

法人設立費用

法人を設立する際、法人格によって登録免許税などに違いがあります。株式会社や合同会社を設立する場合は、おおよその設立費用として以下の金額がかかります。

物件の契約に係る費用

ここでは事業所の物件を賃貸するとして、家賃が月15万円の場合のおおよその費用をご紹介します。

このように、おおよそ20万円~140万円ほどが初期費用としてかかるでしょう。

設備・備品の購入費用

このように、おおよそ420万円~1350万円ほどが初期費用としてかかるでしょう。

開業前の人件費・賃貸料

開業する前の「開業準備期間」にも、開業準備に係る業務を行っている従業員や研修に参加している従業員には、給与を支払う必要があります。
また、物件の賃貸料も契約時から発生します。

運転資金

開業し、サービスの提供を開始しても、開業当初は利用者数が少なく、また介護報酬の入金が約2カ月後からであることから、経営が安定するまでの運転資金が必要になります。
運転資金は、毎月かかる経費(人件費や賃料、その他)の3カ月~6カ月分として、約300万円~600万円を準備しておきましょう。

開業資金の調達方法

開業時の資金調達方法としては、『自己資金』と『金融機関からの融資』を組み合わせるケースが多いです。
まずは、「全体でいくら資金が必要なのか?」を計算し、「自己資金でいくら用意できるのか?」を確認しましょう。

事業計画書を作成する

『事業計画書』とは、『事業の見通しを立てる』ために作成する資料のことです。
開業に向けて「どのような事業を行うのか?」や「その事業で経営は成り立つのか?」といったことを中心に記載します。

自己資金を準備する

自己資金とは、自身が所有・集めた資金等のうち、事業に投資できる資金のことです。
金融機関から融資を受ける際は、開業資金の総額の10分の1から3分の1は自己資金として用意する必要があると言われています。

金融機関に融資の相談をする

冒頭でもお伝えした通り、開業時の資金調達方法は、『自己資金』と『金融機関からの融資』を組み合わせるケースが多いです。
金融機関からの融資を受ける場合には、金融機関のホームページ等から融資制度についての情報を集めて、必要な書類を作成し、相談の電話をかけます。

【融資を受けるために必要な書類の例】

日本政策金融公庫の融資制度

介護事業の開業時には、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」が、多くの方から選ばれています。
日本政策金融公庫は、創業時の企業に積極的に融資するための融資制度があるので、融資の条件等を比較する上でも候補のひとつとして考えておくのが良いでしょう。

融資制度の種類 概要
ソーシャルビジネス支援資金 介護や保育など社会的課題の解決を目的とするサービス事業向けの融資制度
新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連) 新たに事業を始める事業主等で女性または35歳未満か55歳以上の方が利用できる融資制度

まとめ

訪問入浴介護を開業するにあたっては、自己資金を準備し、法人設立や物件・設備・備品の手配、採用活動、指定申請などの手続きを行う必要があります。
きちんと情報を集めたうえで、スケジュールを立てて開業準備を進めなければ、時間や費用を無駄に使ってしまうことになりますので注意しましょう!
この記事でご紹介した内容が皆様の開業準備のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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