訪問リハビリテーションの2018年度介護報酬改定
SMS CO.,LTD
介護報酬は、3年に1度改定される事となっています。介護報酬の算定を行う介護事業所では、この改定内容について情報収集を行っていると思います。
ここでは、訪問リハビリテーションの2018年度の改定内容をわかりやすくご紹介いたします。介護事業所経営者の皆様の参考になれば幸いです。
介護事業の運営に役立つ情報を
定期的にお届けします。
医師の指示の明確化等
今回の改定にて、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の算定要件に変更がありました。
具体的には、医師から訪問リハビリテーションを実施する理学療法士等に対しての指示についてです。今まではご利用者に提供するリハビリテーションの目的を指示することが必要でしたが、今回の改定ではリハビリテーションの目的に加えて、①リハビリテーション開始前またはリハビリテーションを提供する際の留意事項、②やむを得ず提供予定のリハビリテーションを中止する際の基準、③リハビリテーションを提供する事で起こりえるご利用者の負荷、この3つのうち1つ以上の指示が必要となっています。
改定前 | 改定後 | |
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リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)
(1月あたり) |
60単位 | 230単位 |
リハビリテーション会議への参加方法の見直し等
今までリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)を算定するためには、医師がご利用者等に対してリハビリテーション計画の内容をリハビリテーション会議で説明し、同意を得ることが必要でした。今回の改定では、リハビリテーション会議に参加する事が難しい医師の会議への参加方法、リハビリテーション計画をご利用者に対して説明を行う職種に変更がありました。
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医師の会議への参加方法
今までは、定期的に行われるリハビリテーション会議への医師の直接参加が算定要件でしたが、今回の改正により、テレビ電話、またはテレビ機能のある携帯電話を使っての参加が可能となりました。 -
リハビリテーション計画をご利用者に対して説明を行う職種
今までリハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)を算定するには、リハビリテーション会議の際に作成される計画の説明を医師が行うことが必要でした。今回の改正により、理学療法士等が代わりに説明した場合には、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)が算定でき、医師が説明した場合には、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅲ)が算定できます。
改定前 | 改定後 | |
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リハビリテーションマネジメント加算(Ⅱ)
(1月あたり) |
150単位 | 280単位 |
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅲ)
(1月あたり) |
なし | 320単位 |
リハビリテーション計画書等のデータ提出等に対する評価
今回の改定にて、さらなるリハビリテーションの質の向上につなげるため、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)が創設されました。
リハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)の算定要件は、以下の通りです。
- リハビリテーションマネジメント加算(Ⅲ)の要件に適合すること。
- 訪問リハビリテーション計画書等のデータを、「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業」の使用しているシステム(VISIT)を用いて厚生労働省に提出していること。
※「通所・訪問リハビリテーションの質の評価データ収集等事業」の使用しているシステム(VISIT)とは、リハビリマネジメントに必要な情報の収集、データベースを利用した分析、分析結果をフィードバック、フィードバックの結果を基づいた質の高いリハビリテーションの実施を目的としたシステムです。
改定前 | 改定後 | |
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リハビリテーションマネジメント加算(Ⅳ)
(1月あたり) |
なし | 420単位(新設) |
介護予防訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算の創設
今回の改定にて、介護予防訪問リハビリテーションについても質の高いリハビリテーションを実現するため、リハビリテーションマネジメント加算が創設されました。
算定要件は、以下の通りです。
- 介護予防訪問リハビリテーション事業所の医師が、理学療法士等に対し、リハビリテーションの目的に加えて、リハビリテーション開始前又は実施中の留意事項、やむを得ずリハビリテーションを中止する際の基準、リハビリテーションにおけるご利用者に対する負荷等のうちいずれか1以上の指示を行うこと。
- おおむね3月ごとにリハビリテーション計画を更新すること。
- 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、介護支援専門員を通じて、他の介護予防サービスの従業者に対して日常生活上の留意点、介護の工夫等の情報を伝達すること。
改定前 | 改定後 | |
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リハビリテーションマネジメント加算(介護予防)
(1月あたり) |
なし | 230単位(新設) |
社会参加支援加算の要件の明確化等
今回の改定にて、社会参加支援加算の算定要件に一部変更がありました。具体的には、社会参加支援加算の算定要件である「訪問リハビリテーションの終了者」が移行する一定の事業所(通所介護、通所リハビリテーション、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、第一号通所事業他)に、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、及び一定の介護予防サービス事業所が含まれることになりました。
改定前 | 改定後 | |
---|---|---|
社会参加支援加算
(1月あたり) |
17単位 | 17単位 |
介護予防訪問リハビリテーションにおける事業所評価加算の創設
自立支援、重度化防止の観点から、介護予防通所リハビリテーションにおけるアウトカム評価として設けられている事業所評価加算を、介護予防訪問リハビリテーションにおいても創設することとなりました。
加算算定要件は、以下の通りです。
- リハビリテーションマネジメント加算を算定していること
- 介護予防訪問リハビリテーションの利用実人員数が10名以上であること
- 利用実人員数の60%以上にリハビリテーションマネジメント加算を算定していること
- リハビリテーションマネジメント加算を3月以上算定した者の要支援状態の維持・改善率が一定以上であること
【具体的な計算式】
要支援状態区分の維持者数+改善者数2/評価対象期間内(前年の1月~12月)に、リハビリテーションマネジメントを3月以上算定し、その後に更新・変更認定を受けた者の数≧0.7
改定前 | 改定後 | |
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事業所評価加算
(1月あたり) |
なし | 120単位(新設) |
訪問リハビリテーションにおける専任の常勤医師の配置の必須化
今回の改定にて、指定訪問リハビリテーションを持つ事業所に専任の常勤医師1名以上の配置が求められています。専任の常勤医師とは、指定訪問リハビリテーションに関する業務のみを担う医師ではなく、併設されている病院、診療所、介護医療院、介護老人保健施設に勤務している常勤医師が兼務することでも認められます。そのため、事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合は、減算の対象となります。
改定前 | 改定後 | |
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事業所の医師がリハビリテーション計画の作成に係る診療を行わなかった場合の減算
(1月あたり) |
なし | -20単位(新設) |
基本報酬の見直し
リハビリテーション計画を作成する際の医師の診療について、利用者が訪問リハビリテーション事業所である医療機関を受診した際に行われた場合や、訪問診療等と同時に行われた場合は、別途診療報酬が算定されていることがありました。
そのため、利用者が訪問リハビリテーション事業所である医療機関を受診した日又は訪問診療若しくは往診を行った日に、訪問リハビリテーション計画を作成する際の医師の診療を行った場合には、診療報酬と介護報酬の二重請求とならないように明確に記録することが必要となりました。
また、前項までの通り、今回の改定では特にリハビリテーションの質の向上が求められており、質の向上に取り組む事業所を評価するリハビリテーションマネジメント加算が創設または単位数が増加し、取り組みの少ない事業所と差別化を図るため、基本報酬の単位数は減少しています。
改定前 | 改定後 | |
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基本報酬
(1月あたり) |
302単位 | 290単位 |
医療と介護におけるリハビリテーション計画の様式の見直し等
今まで、医療保険の疾患別リハビリテーションを受けている方の介護保険のリハビリテーションへの円滑な移行を推進するため、医療保険と介護保険のそれぞれのリハビリテーション計画書の共通する事項について互換性を持った様式を設けることとなりました。
医療保険・介護保険別の作成する様式、加算、要件は以下のようになります。
医療保険・疾患別リハビリテーション
様式:目標設定等支援・管理シート
加算:目標設定等支援・管理料
要件:要介護被保険者等に対し、多職種が共同して、患者の特性に応じたリハビリテーションの目標設定と方向付け等を行った場合に算定
文書の内容:発症からの経過、ADL評価、リハビリテーションの目標、心身機能・活動及び社会参加に関する見通し(医師の説明、患者の受け止め)、介護保険のリハビリテーションの利用の見通し等
介護保険・訪問リハビリテーション
様式:リハビリテーション計画書
加算:リハビリテーションマネジメント計画書
要件:多職種が協働し、継続的にリハビリテーションの質を管理した場合に算定
文書の内容:利用者と家族の希望、健康状態(原疾患名、経過)、参加の状況、心身機能の評価、活動の評価(改善の可能性)、リハビリテーションの目標と具体的支援内容、他職種と共有すべき事項等
離島や中山間地等の要支援・要介護者に対する訪問リハビリテーションの提供
今までは「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」だけが算定可能でしたが、今回の改定で「特別地域加算」と「中山間地域等における小規模事業所加算」が創設されました。
なお、「中山間地域等における小規模事業所加算」と「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」とは、混同されるこることがありますが、別の加算であり、算定要件が異なります。
-
特別地域
離島振興法、奄美群島振興開発特別措置法、山村振興法、小笠原諸島振興開発特別措置法、沖縄振興特別措置法、豪雪地帯対策特別措置法の指定地域 -
中山間地域等
豪雪地帯対策特別措置法、辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律、半島振興法、特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律、過疎地域自立促進特別措置法の指定地域
改定前 | 改定後 | |
---|---|---|
特別地域加算
(1月あたり) |
なし | 15% |
中山間地域等における小規模事業所加算
(1月あたり) |
なし | 10% |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
(1月あたり) |
5% | 5% |
同一建物等居住者にサービスを提供する場合の報酬
今まで同一建物等居住者にサービスを提供する場合の報酬は、事業所と同一敷地内の有料老人ホーム等に居住している方、同一敷地内等ではない同一の有料老人ホーム等に居住する方(20人以上)へサービスを提供した場合が減算の対象でした。今回の改定では建物の要件が見直され、また、ご利用者の人数による減算の率についても変更があり、下記の条件に該当すると減算となります。
改定前 | 改定後 | |
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10%減算 | 10%減算 |
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15%減算 |
介護医療院が提供する訪問リハビリテーション
介護医療院とは、長期にわたり療養が必要な要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護、機能訓練、医療等を行う、一定数の医療職を配置した介護事業所として創設されました。介護医療院においても介護療養型医療施設と同様に訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションの提供が可能となります。
訪問介護連携加算の廃止
2017年度をもって、介護予防訪問リハビリテーションにおける訪問介護連携加算が、介護予防訪問介護の地域支援事業への移行が終了する事により、廃止されることとなりました。
改定前 | 改定後 | |
---|---|---|
訪問介護連携加算
(1月あたり) |
300単位 | なし(廃止) |
まとめ
いかがでしょうか。
2018年の介護報酬の改定の柱は、「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止のための質の良い介護サービスの実現」「多様な人材確保と生産性の向上」「介護サービスの適正化と重点化を通じた制度の安定化・持続可能性の確保」となります。今回の改定では、様々な介護事業所の生活機能向上連携加算の創設に伴い、訪問リハビリテーションのリハビリテーション専門職は地域での活躍が期待されます。連携に伴う業務の増加も踏まえて、今後の事業所運営、経営に大きく影響がある改定内容です。
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