認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の開設方法・開業の流れを紹介
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「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」は、要介護者であって認知症である人に家庭的な環境と地域住民の交流を提供すると同時に、排泄や食事等の世話を行なう施設です。認知症に特化した特殊な施設なため、一見すると開業するのが難しく感じるかもしれません。今回はそんな認知症対応型共同生活介護について紹介していきます。一読し、今後の経営のお役に立ててください。
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認知症対応型共同生活介護の開設の基準について
認知症対応型共同生活介護の種類は、大きく分けて3つに分類されます。併設型、単独型、そして合築型です。種類は異なりますが、指定基準は共通なので注意してください。
認知症対応型共同生活介護を開設する際、厚生労働省が定めた「指定基準」(「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3つ)を満たす必要があります。また、各都道府県・市区町村が厚生労働省の定めた指定基準を基に、一部変えて独自の指定基準を設けている場合があります。認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスなので、各市区町村の指定基準に従ってください。
施設は、この指定基準を満たして事業を行っているかを確認する実地指導を適時受け、6年ごとに指定更新の手続きが必要となります。
人員基準
代表者
- 特別養護老人ホーム、老人デイサービス、認知症対応型共同生活介護事業所等の従業者または訪問介護員として、認知症高齢者の介護に従事した経験を持つこと
- 保健医療サービスまたは福祉サービスの提供を行う事業の経営に携わっていた経験があること
また、厚生労働大臣が定める「認知症介護サービス事業者開設者研修」を修了していることが求められます。 「認知症介護サービス事業者開設者研修」の他にも事業者の代表者として必要な研修を修了したものとみなされる研修がありますので、該当になる研修を市町村窓口へ確認をしましょう。
管理者
- 共同生活住居ごとに配置すること
- 専ら管理者の職務に従事するものであること(ユニットの管理上支障がない場合に限り他の職務、他の事業所と兼務可能)
- 常勤であること
- 適切な指定認知症対応型共同生活介護を提供するために必要な知識及び経験を有すること
- 特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設、老人デイサービス、認知症対応型共同生活介護事業所等の従業者または訪問介護員として、3年以上認知症高齢者の介護に従事した経験を有すること
- 厚生労働大臣が定める研修を修了していること(認知症対応型サービス事業者管理者研修)
介護従業者
- 一人以上は常勤であること
- 夜間及び深夜の時間帯を通じて、1以上の介護従業者に夜勤を行わせるために必要な数以上配置すること
- 夜間及び深夜以外は利用者の数が3またはその端数を増すごとに、常勤換算法で1以上を配置すること
- 小規模多機能型居宅介護事業所の人員を満たす従業者を配置している時は、併設する小規模多機能型居宅介護事業所の職務に従事することができる
計画作成担当
- 共同生活住居ごとに配置すること
- 厚生労働大臣が定める研修を修了していること(実務者研修基礎課程または認知症介護実践者研修)
- 専らその職務に従事するものであること(利用者の処遇に支障がない場合は、他の職務の兼務が可能)
- 保健医療サービスまたは福祉サービスの利用に係わる計画の作成に関し、知識および経験を有すること
- 計画作成担当者のうち、少なくとも1人は介護支援専門員を持っていなければならない
- 介護支援専門員以外の計画作成担当者は、生活相談員、支援相談員として認知症高齢者の介護サービスに係わる計画の作成に関し実務経験を有すること
設備基準
事業単位
共同生活住居の入居定員は5人以上9人以下であること
居室
個室であり、1つの居室の床面積が7.43平方メートル以上であること
居間、食堂、台所、便所、洗面設備、浴室、事務室、消火設備、その他の設備等
認知症がある方でも安全に過ごせるように配慮し、鍵のかかる棚なども完備していること
運営基準
- モニタリングを行うこと(介護予防のみ)
認知症対応型共同生活介護計画が作成されていること。その他、各市町村で公開している運営基準に準拠していることが求められます。
認知症対応型共同生活介護の開設の流れ
法人格を取得する
認知症対応型共同生活介護の開設をする際、まずは法人格取得する必要があります。会社の種類は一般社団法人、NPO法人、合同会社などどれでも構いません。
指定基準を満たすことができる事業所を建てる・借りる・改修する
認知症対応型共同生活介護を含む、介護事業を行なう際は、前項にも述べた指定基準を満たす必要があります。
事業者指定を受ける
事業予定地の市町村に指定申請書類を提出する必要があります。市町村によっては「設置を計画していた施設の数を満たしている」という理由などで、申請を受けつけていない場合もあるため、事前に各市区町村に尋ねておくのがベストです。
認知症対応型共同生活介護の開設の書類
前項でも述べたように認知症対応型共同生活介護は、地域密着型サービスであるため、各市区町村が指定申請の書類を管轄しています。各市区町村で書類の種類、枚数、提出方法(窓口提出or郵送)が異なるので注意してください。ここでは、下記に書類の一部を例として挙げます。
例) ・事業所の平面図 →賃貸の場合は契約書のコピー、所有物の場合はその証拠となる資料を提出する義務があります。 →事業所内の面積を記入し、時には外観などの写真を一緒に提出する必要があります。
・従業員の勤務体制および勤務形態の一覧表 →人員基準や運営基準に違反していないか確認する書類の1つです。主に従業員の4週間分の勤務予定を記載した後、従業員の資格免許の写しを提出します。
・収支予算書 →人件費、事業所経費等、収益の見通しなどを、単価・数量・年間費用予想に分けて細かく提示します。想像ではなく、どのような宣伝方法、アクティビティーを行なって、どれくらいの売り上げを見込めるかなどを具体的に記載する必要があります。
・事業計画書 →事業の目的や利用者見込みの数などを根拠に基づいて記載する必要があります。また事業計画を作成する際には、理想だけでなく現実的なシビアな視点を持つことも求められます。
認知症対応型共同生活介護の開設にかかる費用
目安として、賃貸物件を改修した、1ユニットほどの小規模の施設で1000万円前後と言われています。新たに建設する場合は、億単位の資金が必要となるので注意してください。費用科目は設備費(賃貸物件の改修、什器類の購入)、人件費、指定申請に掛かる費用などが主に含まれています。
物件確保代 100万円~400万円 規模、立地、地域、仲介料などによって大きく変動します。地域にもよりますが、敷金は家賃の2~6か月分ほどかかります。
内装工事費 200万円~500万円 トイレやお風呂が広い、階段や段差が少ないなど、なるべく工事の手間がかからない物件を選ぶことがポイントになります。
備品購入代 50万円~150万円 消耗品から事務用品、ベッドや予備の車いすなどの備品も必要になります。
人材採用費 0万円~100万円 開業前に介護関係の人脈があれば、お金をかけずに比較的簡単に人材を集めることができます。どうしても集まらない時は、ハローワークや民間の人材紹介会社などを活用しましょう。ハローワークについては人材募集費用がかかりません。
その他費用 登記や書類の作成の際に専門家に委託することもできます。その際は、20万円から50万円ほどです。
認知症対応型共同生活介護の開設者研修について
各都道府県が、適切なサービス提供と技術の向上に向けて、定期的に認知症対応型サービス事業開設者研修会を開いています。募集要項は各都道府県がwebサイトで募集しているので確認してください。指定申請や事業申請書は市区町村単位ですが、研修が都道府県単位と異なるので注意してください。
認知症対応型共同生活介護の開設者研修
・研修日程 2日間研修が行われます。初日は講義で、2日目は現場研修になります。
・受講対象者 認知症対応型共同生活介護の代表者になる予定の方
・受講料 12,500円(神奈川県の認知症対応型サービス事業者研修での金額です)
まとめ
認知症を持つ高齢者の数はますます増加しています。 現状では認知症の方が安心して暮らせる場所は限られており、少人数で生活できる認知症対応型共同生活介護は今後さらに必要とされる施設になります。 認知症対応型共同生活介護は、『地域密着型サービス』に分類されますので、開業を検討している方は、市町村が策定してる『グループホームの整備の予定・計画』を確認しましょう。
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