【開業】介護事業の人員基準とは



介護事業所・施設の開業を検討している皆様は、「介護事業所の人員基準を満たすためには職員が何人必要なの?」や「介護事業所の人員基準を満たせないとどうなるの?」などといった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、介護事業所・施設の人員(配置)基準と人員基準における「常勤」「常勤換算方法」などの語句の意味、人員基準違反の指導事例などについてご紹介していきます。

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目次

介護事業所・施設の人員基準とは

介護事業所・施設の人員基準とは、事業所等に配置しなければならない管理者や介護職員、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの職種と人数について定めている厚生労働省令です。
人員基準は、サービス種別ごとに定められており、例えば通所介護(デイサービス)の人員基準では、管理者が『常勤専従で1人』、生活相談員が『1人以上』、看護職員が『1人以上』、介護職員が利用者の数が15人までは『1人以上』、利用者の数が15人を超す場合は『1人に利用者の数が15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上』、機能訓練指導員が『1人以上』配置することとされています。

介護事業所・施設の指定基準とは

指定基準とは、介護事業所・施設を開業する際に、自治体から「指定」を受けるために満たさなければならないルールのことで、人員基準のほかに設備基準や運営基準があります。
介護保険法では、利用者に対して適切なサービスが提供されるように、事業者に様々なルールが課されています。

介護事業所・施設の設備基準とは

設備基準には、介護事業所・施設を開業・運営する際に用意しなければならない事務室や食堂等の区画、設置しなくてはいけない設備、サービス提供に必要な備品等について定められています。
介護事業所・施設の指定申請を行う際には、設備基準を満たしていることを証明する書類として、事業所の平面図や備品・設備等一覧表等の提出が求められています。
例えば、認知症対応型通所介護の設備基準には、以下のような設備・備品を設置することが定められています。

【認知症対応型通所介護で必要な設備・備品の例】

  • 食堂
  • 機能訓練室
  • 静養室
  • 相談室
  • 事務室
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
  • その他認知症対応型通所介護の提供に必要な設備・備品

介護事業所の設備基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

介護事業所・施設の運営基準とは

介護事業所の運営基準には、事業者が適切なサービスを提供するために守らなければならないルールが定められており、サービス提供開始までの手順、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類や記録などが定められています。
例えば、訪問介護の運営基準には以下のような項目が定められています。

【訪問介護の運営基準の項目例】

  • 内容および手続きの説明と同意
  • 提供拒否の禁止
  • サービス提供困難時の対応
  • 受給資格等の確認
  • 要介護認定の申請に係る援助
  • 心身の状況等の把握
  • 居宅介護支援事業者等との連携
  • 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  • 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
  • 保険給付の請求のための証明書の交付
  • 訪問介護の基本取扱方針
  • 運営規程
  • 広告
  • 不当な働きかけの禁止
  • 居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  • 苦情処理
  • 地域との連携等
  • 事故発生時の対応
  • 虐待の防止
  • 会計の区分
  • 記録の整備
    など

介護事業所の運営基準について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

介護事業所・施設の人員基準で使われる用語

介護事業所の人員基準では、常勤や専従といった馴染みのない用語が使われますので、その言葉の意味を確認していきましょう。

常勤とは

人員基準における常勤は、常勤の従業員が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本)を勤務している従業員のことを指します。
例えば、常勤の勤務時間が週40時間の通所介護事業所の場合、雇用契約がパートタイマーであったとしても、勤務時間が週40時間であれば「常勤」として扱うことになります。

常勤換算方法とは

常勤換算方法は、従業員の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業員が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本)で割ることで、当該事業所の従業員の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法です。

常勤換算方法の計算例

例えば、福祉用具貸与の人員基準では、福祉用具専門相談員が常勤換算方法で2人以上必要とされています。
常勤の勤務時間が週40時間の福祉用具貸与事業所の場合、以下のように計算することで福祉用具専門相談員が常勤換算で2人以上という人員基準を満たしているかどうか確認することができます。

この場合、「1人+0.5人+0.5人=2人」となるため、常勤換算で2人以上を満たしていることになります。

専従とは

専従は、人員基準の中で「専ら従事する」や「専ら提供に当たる」と表現されることもあり、原則としてサービス提供時間帯を通じて当該サービス以外の職務に従事しない従業員のことを指します。

介護事業所・施設の人員配置基準を一覧で確認

介護事業所の人員基準はサービス種別ごとに異なりますから、ここからはサービス種別ごとの人員基準をご紹介していきます。

居宅介護支援の人員配置基準

居宅介護支援の人員基準は、事業所を開設・運営するにあたって必要な職種や人数が定められており、介護支援専門員(ケアマネジャー)は常勤で1人以上、管理者は常勤専従で1人と決められています。

職種名 配置基準 資格要件
介護支援専門員 常勤で1人以上 介護支援専門員
管理者 常勤専従で1人※ 主任介護支援専門員

※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
居宅介護支援の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

訪問介護の人員配置基準

訪問介護の人員基準は、訪問介護員を常勤換算で2.5人以上、サービス提供責任者を利用者数40人ごとに常勤1人以上、管理者を常勤専従で1人と決められています。

職種名 配置基準 資格要件
訪問介護員 常勤換算で2.5人以上 介護福祉士
実務者研修修了者
介護職員初任者研修修了者
生活援助従事者研修修了者(生活援助中心型のみ提供可能)
旧介護職員基礎研修修了者
旧訪問介護員1級課程修了者
旧訪問介護員2級課程修了者
サービス提供責任者 利用者の数が40人またはその端数を増すごとに1人以上。(※)
常勤のサービス提供責任者を3人以上配置し、かつ、サービス提供責任者の業務に主として従事するサービス提供責任者を1人以上配置して、業務を効率的に行っている場合は、利用者の数が50人または端数を増すごとに1人以上。
介護福祉士
実務者研修修了者
旧介護職員基礎研修修了者
旧訪問介護員1級課程修了者
管理者 常勤専従で1人(※) 特になし

※1 サービス提供責任者は、「常勤の訪問介護員等のうち」から配置します。
※2 管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
訪問介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

通所介護(デイサービス)の人員配置基準

通所介護(デイサービス)の人員基準は、管理者が常勤専従で1人、生活相談員が1人以上、看護職員が1人以上、介護職員が利用者の数が15人までは1人以上、利用者の数が15人を超す場合は1人に利用者の数が15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上、機能訓練指導員が1人以上と決められています。

職種 配置基準 資格要件
生活相談員 1人以上 社会福祉士
精神保健福祉士
社会福祉主事
看護職員 1人以上 看護師
准看護師
介護職員 利用者数が15人までは1人以上
利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上
特になし
機能訓練指導員 1人以上 理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
看護師
准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師(※実務経験の要件あり)
管理者 常勤専従で1人※ 特になし

※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
通所介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

地域密着型通所介護の人員配置基準

地域密着型通所介護の人員基準は、管理者が常勤専従で1人、生活相談員が1人以上、看護職員が1人以上、介護職員が利用者様の数が15人までは1人以上、利用者様の数が15人を超す場合は1人に利用者様の数が15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上、機能訓練指導員が1人以上と決められています。

職種 配置基準 資格要件
生活相談員 1人以上 社会福祉士
精神保健福祉士
社会福祉主事
看護職員 1人以上 看護師
准看護師
介護職員 利用者数が15人までは1人以上
利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上
特になし
機能訓練指導員 1人以上 理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
看護師
准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師(※実務経験の要件あり)
管理者 常勤専従で1人※ 特になし

ただし、定員が10人以下の場合、看護職員または介護職員の勤務時間数の合計をサービス提供時間数で割った数が1以上となるように、看護職員または介護職員を配置することが認められています。
※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
地域密着型通所介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

認知症対応型通所介護の人員配置基準

認知症対応型通所介護の人員基準は、単独型および併設型の場合、管理者が常勤で1人、生活相談員が1人以上、機能訓練指導員が1人以上、介護職員または看護職員が2人(単位ごと、及びサービス提供時間に応じた配置)以上と決められています。

職種 配置基準 資格要件
生活相談員 1人以上 社会福祉士
精神保健福祉士
社会福祉主事
介護職員・看護職員 2人以上
  • 専従で1人以上及び勤務している時間数の合計をサービス提供時間数で割った数が1人以上
  • 常時1人以上となるように配置
看護職員は看護師もしくは准看護師
介護職員は資格要件なし
機能訓練指導員 1人以上 理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
看護師
准看護師
柔道整復師
あん摩マッサージ指圧師
はり師・きゅう師(※実務経験の要件あり)
管理者 常勤専従で1人※ 厚生労働大臣が定める研修を修了している者

共用型の場合、単独型・併設型と同様で、管理者は厚生労働省が定める研修を修了している職員を常勤専従で1人配置する必要がありますが、従業員(生活相談員、機能訓練指導員、介護職員または看護職員)の人数は、認知症対応型共同生活介護事業所等の各事業ごとに規定する従業者の員数を満たすために必要な数以上を配置することで満たすことができます。
※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
認知症対応型通所介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

訪問入浴介護の人員配置基準

訪問入浴介護の人員基準は、管理者を1人以上、看護職員(看護師または准看護師)を1人以上、介護職員を2人以上と決められています。

職種 配置基準 資格要件
看護職員 1人以上※1 看護師、准看護師
介護職員 2人以上※1 特になし
管理者 常勤専従で1人※2 特になし

※1 看護職員または介護職員のうち1人以上は常勤である必要があります。
※2 管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
訪問入浴介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

夜間対応型訪問介護の人員配置基準

夜間対応型訪問介護の人員基準は、随時訪問サービスを行う訪問介護員等が1人以上、定期巡回サービスを行う訪問介護員等が必要な数以上、オペレーターが1人以上、面接相談員が1人以上、管理者が1人と決められています。

職種 配置基準 資格要件
定期巡回サービスを行う訪問介護員等 適切にサービス提供をするために必要な数以上 介護福祉士
実務者研修修了者
介護職員初任者研修修了者
旧介護職員基礎研修
旧訪問介護員1級課程修了者
旧訪問介護員2級課程修了者
随時訪問サービスを行う訪問介護員等 提供時間帯を通じて専従で1人以上
オペレーションセンター従事者(オペレーター) 提供時間帯を通じて1人以上
(オペレーションセンターを設置しない場合は配置不要)
看護師
介護福祉士
医師
保健師
准看護師
社会福祉士
介護支援専門員
オペレーションセンター従事者(面接相談員) 1人以上
(オペレーションセンターを設置しない場合は配置不要)
オペレーターと同様の資格又は同等の知識経験を有する者(努力義務)
管理者 常勤専従で1人※ 特になし

※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等(一体的に運営している定期巡回・随時対応型訪問介護看護、訪問介護)の職務に従事することができます。
夜間対応型訪問介護の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

訪問リハビリテーションの人員配置基準

訪問リハビリテーションの人員基準は、専任の常勤医師が1人以上、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を適当数配置すると決められています。

職種 配置基準
医師 常勤専従で1人※1
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士 適当数を配置※2

※1 病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院では、当該病院等の常勤医師との兼務で差し支えないとされています。
※2 病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士との兼務も可能とされています。

訪問リハビリテーションの人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

福祉用具貸与の人員配置基準

福祉用具貸与の人員基準は、福祉用具専門相談員が常勤換算方法で2人以上、管理者が常勤専従で1人と決められています。

職種 配置基準 資格要件
福祉用具専門相談員 常勤換算方法で2人以上 保健師
看護師
准看護師
理学療法士
作業療法士
社会福祉士
介護福祉士
義肢装具士
都道府県知事が指定する福祉用具専門相談員指定講習事業者が行う講習の修了者
管理者 常勤専従で1人※ 特になし

※管理者は、管理上支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所等の職務に従事することができます。
福祉用具貸与の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

介護事業所・施設で人員配置基準に違反するとどうなる?

人員基準を満たしていない場合は指定を受けることができないため、介護事業所を開業することはできません。また、開業後に運営指導(実地指導)などで人員基準違反が発覚すると、指定権者から指摘、指導を受けることになります。

人員基準欠如による減算のあるサービス種別も

人員基準欠如による減算とは、人員基準に定められた従業員の員数が下回っている場合に、基本報酬を減算しなければいけないというルールです。
例えば通所介護の場合、看護職員および介護職員の人数が下回ってしまうと基本報酬を「70/100」で算定しなければなりません。また、著しい人員基準欠如が継続する場合には、都道府県知事等により職員の増員や利用定員の見直し等の指導が行われ、特別な事情がある場合を除き、この指導に従わない場合は、指定の取消し等の行政処分が行われます。
人員基準欠如による減算のあるサービス種別は以下の通りです。

【人員基準欠如減算のあるサービス種別】

  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

人員基準欠如減算について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

介護事業所・施設における人員配置基準違反の例

ここでは、人員基準違反となって実際に処分を受けた事業所の事例をご紹介します。

訪問介護の人員基準違反の例【指定取消】

指定の更新後、人員基準違反と知りながら、サービス提供責任者を配置せず、訪問介護員等の人員が最低基準の常勤換算2.5人以上を満たさなかった。
(引用: 青森県 介護サービスの提供における不適正事例について
この事業所は人員基準違反のほか、不正の手段による指定や不正請求により、指定取消処分を受けました。

通所介護の人員基準違反の例【指定取消】

看護職員を単位ごとに配置できていない日が月に5日以上あった。
(引用: 青森県 介護サービスの提供における不適正事例について
この事業所は人員基準違反のほか、看護職員の人員基準欠如があるにもかかわらず減算せずに請求したことにより、指定取消処分を受けました。

居宅介護支援の人員基準違反の例【指定の一部の効力停止】

管理者兼主任介護支援専門員が、指定を受けた事業所において常勤専従で勤務すべきところ、同法人本部で法人役員としての業務を日常的に行い、人員基準を満たしていない月があった。
(引用: 北九州市 介護サービス事業者等の行政処分(福岡県内)
この事業所は人員基準違反のほか、運営基準違反や不正請求および不正または著しく不当な行為により、指定の一部の効力停止(3カ月)の処分を受けました。

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まとめ

ここまで、介護事業所・施設の人員基準の内容と人員基準違反の事例などについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
介護事業所として指定を受けて開業するためには、人員基準を理解した上で、それを満たすように職員を採用する必要があります。また、開業後に適切な事業所運営を行い、運営指導(実地指導)で指摘を受けないためにも職員を定着させていくことも大切になるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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