訪問介護事業所の開設に必要な人員基準とは?
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訪問介護をはじめ、介護事業を開設・経営していくには、指定基準(人員基準・設備基準・運営基準)を満たしている必要があります。
今回の記事では、指定基準の1つである人員基準に焦点を当てて、訪問介護における人員基準の内容や人員基準を満たす際の注意点などを解説していきます。
目次
- 訪問介護の人員基準とは?
- 訪問介護の人員基準で定められる職種と人数
- 訪問介護事業所を開業するには職員が3人必要!
- 訪問介護の常勤換算数の計算方法
- 訪問介護で人員基準に違反した場合は?
- 訪問介護の人員基準に違反した場合の指導事例
- 訪問介護の人員基準に違反しないために取るべき対策
- まとめ
訪問介護の人員基準とは?
人員基準とは、サービスを適切に提供するために、最低限必要とされる職種や人数について定められた厚生労働省の省令です。
そのため、事業所を開設する時だけでなく、事業所を運営する間は満たさなくてはいけないルールとなっています。
訪問介護の人員基準で定められる職種と人数
訪問介護の人員基準では、「訪問介護員」「サービス提供責任者」「管理者」の3つの職種について、資格要件や配置しなければならない人数等が定められています。
① 訪問介護員(ホームヘルパー)
訪問介護員を常勤換算で「2.5人以上」配置しなくてはいけません。
【訪問介護員の資格要件】
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- 介護職員初任者研修修了者
- 生活援助従事者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修課程修了者
- 旧ホームヘルパー1級課程修了者
- 旧ホームヘルパー2級課程修了者
- 看護師・准看護師
② サービス提供責任者(サ責)
常勤の訪問介護員のうち、サービス提供責任者を、利用者の数が40またはその端数を増すごとに1人以上配置しなくてはいけません。
【サービス提供責任者の資格要件】
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修課程修了者
- 旧ホームヘルパー1級課程修了者
③ 管理者
専ら管理業務に従事する管理者を常勤で1人配置しなくてはいけません。
ただし、管理上支障がない場合は、他の職務または他の事業所の職務との兼務が認められています。
訪問介護事業所を開業するには職員が3人必要!
訪問介護事業所の人員基準では、『訪問介護員を常勤換算で2.5人以上』配置しなければならないことが定められているので、管理者は兼務するとしても、開業するためには最低3人の職員が必要となります。
訪問介護の常勤換算数の計算方法
常勤換算とは、非常勤の従業員が勤務した時間の合計が、常勤の従業員の何人分にあたるかを計算した数値です。
短時間勤務の常勤職員の取扱い
訪問介護員が育児・介護休業法による短時間勤務制度などを利用する場合には、週30時間以上勤務していれば、常勤換算の計算上で1(常勤)として扱うことが認められています。
登録訪問介護員(登録ヘルパー)の常勤換算の取扱い
勤務時間や勤務日が不定期な登録訪問介護員(登録ヘルパー)の常勤換算は、サービス提供の実績の有無により計算方法が分かれます。
【対象の事業所で登録ヘルパーによるサービス提供の実績がある場合】
事業所での登録ヘルパーの前年度の週当たり平均稼働時間を、登録ヘルパー1人当たりの勤務延べ時間数として、常勤換算数を計算します。
【対象の事業所で登録ヘルパーによるサービス提供の実績がないまたは極めて短期の実績しかない場合】
勤務表に明記されている時間のみを、勤務延べ時間数に含めて常勤換算数を計算します。
ただし、勤務表上の勤務時間と実績が乖離している際は、勤務表上での勤務時間適正化の指導対象となりますので注意しましょう。
常勤換算数の計算例
常勤換算数は
「従業員の勤務延べ時間数」÷「常勤従業員の勤務時間数」=常勤換算数
という式で計算します。
常勤従業員の勤務時間が週40時間として、訪問介護員の常勤換算数の計算例を見ていきましょう。
<計算例>
訪問介護員Aさん(常勤)週40時間 ⇒常勤1人
訪問介護員Bさん(常勤・育児時短勤務)週30時間 ⇒常勤1人
訪問介護員Cさん(非常勤)週10時間 ⇒10時間÷40時間=常勤換算0.25人
訪問介護員Dさん(非常勤) 週20時間 ⇒20時間÷40時間=常勤換算0.5人
このケースでは、常勤2人+非常勤0.75人=2.75人となるため、訪問介護員の人員基準である「常勤換算で2.5人以上」を満たしている、という計算になります。
訪問介護で人員基準に違反した場合は?
人員基準を満たせずに違反してしまった場合、どのような対応が必要となるのでしょうか。
運営指導(実地指導)等で人員基準違反が明らかになった場合には、基準に違反した期間の報酬の返還や、指定取消等の行政処分につながる恐れがあります。
基準を満たしていないことが分かったら、まずは指定権者である都道府県または市(介護保険課)に報告・相談します。
その上で、サービス提供の可否やペナルティの有無などを確認します。
その後、状況が改善した場合には報告を行い、改善が難しい場合には再度相談・報告をしましょう。
訪問介護の人員基準に違反した場合の指導事例
運営指導等で違反が発覚した場合には、行政から指導等を受けることになります。ここでは、実際にどのような指摘があったのか、過去の事例を紹介します。
指導事例①人員基準違反(指定取消)
- 指定更新申請時に、退職している職員を配置していると記載し、指定を受けた。(不正の手段による指定)
- 更新後、人員基準違反と知りながら、サービス提供責任者を配置せず、訪問介護員等の人員が最低基準の常勤換算2.5人以上を満たさなかった。(人員基準違反)
- 人員基準違反と知りながら、介護報酬を請求し、受領した。(不正請求)
指導事例②人員基準違反(指定取消)
管理者が常時勤務していない期間があった。また、実態として管理者やサービス提供責任者を配置していない期間があった。
訪問介護の人員基準に違反しないために取るべき対策
人員基準に違反しないための対策として、採用に注力し、職場環境を改善して人材の流出・離職防止に努めることが重要です。
【介護労働安定センターの令和4年度介護労働実態調査の主な前職をやめた理由】
- 「職場の人間関係に問題があったため」27.5%
- 「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」13.4%
- 「他に良い仕事・職場があったため」19.0%
【人材の離職防止のための施策の一例】
- 職員と管理者の1on1など、現場の不満や不安をキャッチアップできる体制の構築
- 加算を取得し、職員の待遇を改善
- 福利厚生を充実させ、他の事業所と差別化
- ICT機器等を導入し、業務を効率化
- 職員の成長を後押しする資格取得支援や研修の実施
まとめ
ここまで訪問介護の人員基準についてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
人員基準は、訪問介護事業者としての指定を受けるために必須なので、常勤換算の計算方法や職種として必要な資格についてもしっかりと把握しておきましょう。
ここでご紹介した内容が、皆様の訪問介護事業の指定申請のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。