訪問介護を開業したら儲かるの?平均売上や利益アップの方法もご紹介
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訪問介護事業所の開業を検討している皆様は、「訪問介護事業所を開業したらどのくらい儲かるのだろうか?」や「訪問介護で利益を上げるためにはどうしたらいいの?」といった悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、訪問介護事業所の平均売上推移や収支差率の分布、事業所数の推移などから、訪問介護事業サービスの需要や市場の動向を解説するほか、訪問介護事業所で利益を上げる方法などについてもご紹介していきます。
目次
訪問介護事業所を開業したら儲かるの?
訪問介護は、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者などの訪問介護員等が要介護状態にある利用者様の居宅を訪問し、入浴・排せつ・食事等の介護、調理・洗濯・掃除等の家事等を提供するサービスです。
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、訪問介護事業所の収支差率は6.1%と、介護サービス全体の平均収支差率よりも高い水準となっており、十分に儲かる可能性のある事業と言えます。
ここでは、訪問介護事業所の平均売上や需要、収支差率の分布などについてご紹介していきます。
訪問介護事業所の平均売上
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」では、2021年度の訪問介護事業所の平均収入は一月あたり『300万3,000円』、平均延べ訪問回数は一月あたり『807.6回』となっています。
訪問介護事業所の需要と市場の動向
厚生労働省の介護給付費等実態調査によると、訪問介護の年間実受給者数は右肩上がりに推移しており、2021年度には153万人に達しています。
(出典:厚生労働省 平成27年度~令和3年度 介護給付費等実態調査)
また、訪問介護の事業所数も増加傾向にあり、2021年度には3万5,612事業所となっています。高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、厚生労働省が地域包括ケアシステムの構築を推進していることや、要介護の状態になっても在宅で過ごしたい高齢者が増えていることなどから訪問介護サービスのニーズがあり、事業所数が増していることが伺えます。
(出典:厚生労働省 平成27年度~令和3年度 介護給付費等実態調査)
訪問介護事業所の平均収支差率(2021年度)
収支差率は収入と支出の差を表す指標です。
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、2021年度決算の収支差率は、訪問介護が「6.1%」となっていることからも、十分に儲かる可能性のある事業と言えます。
訪問介護 | 介護サービス全体 | |
---|---|---|
収支差率の平均(2021年度決算) | 6.1% | 3% |
(出典:厚生労働省 令和4年度介護事業経営概況調査)
訪問介護事業所の収支差率の分布
収支差率の分布を見ると、以下のグラフのように、2021(令和3)年度の決算だと収支差率が「5%〜35%」と高い事業所もある一方、「-30%〜0%」と赤字の事業所もあることが分かります。ですから、平均収支差率が黒字と言えども、収支計画を立てて、それに沿って運営していくことが大切になります。
(出典:厚生労働省 令和4年度介護事業経営概況調査)
訪問介護事業所の平均収支差率の推移
訪問介護事業所の平均収支差率の推移を見ると、2019年に2.6%と下がってはいるものの、一貫してプラスで推移しており、報酬改定や感染症等の影響を受けていますが、安定的な黒字を目指せる事業だと言えるでしょう。
(出典:厚生労働省令和元年度、4年度介護事業経営概況調査、平成28年度、29年度、令和2年介護事業経営実態調査)
訪問介護事業所を開業・立ち上げるための手順・流れ
訪問介護を開業する手順・流れは、以下のようになります。
【訪問介護事業所を開業する流れ】
- 法人設立
- 事業計画書の作成
- 開業資金の調達
- 物件探し・契約
- 従業員を採用
- 備品等の調達
- 指定申請
- 請求ソフトの手配
- 利用者様の獲得
訪問介護事業所の立ち上げの流れについて、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
訪問介護事業所の開業資金
訪問介護事業所を開業するために必要な資金は、約1,000万円程度が一般的な相場と言われています。 内訳の例としては、物件取得費や採用費といった開業資金が約300万円、人件費や家賃などの運転資金(約半年分)が約700万円です。特に訪問介護事業所は、開業後の運転資金のほとんどを人件費が占めるため、開業前に月々の人件費がいくらになるのか、運転資金がどのくらい必要なのかを試算しておくことが大切です。
また、こうした開業資金を自己資金のみで用意するのは難しいため、金融機関などから資金調達を行う場合が多いです。
訪問介護の開業時に必要な資金について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。
訪問介護事業所の売上・収益の仕組み
訪問介護事業所の売上は、基本報酬と加算・減算を加減した単位数に、地域区分で決められた単価を掛け合わせて算出する仕組みとなっています。
例えば、神奈川県横浜市で身体介護が中心の訪問を20分以上30分未満行い、認知症専門ケア加算(Ⅰ)を算定している場合、売上は、
- (250単位+3単位)×11.12円=2813円(小数点以下切り捨て)
となります。
また、基本報酬と加算以外にも、お弁当の配食サービスや美容院への同行、ペットの世話などの保険外サービス(自費サービス)を実施することで、収入を増やす事業所もあります。
地域区分による1単位あたりの単価
介護報酬の1単位あたりの単価は地域によって違いがあり、1級地から7級地、その他の8つに区分されています。地域区分による1単位あたりの単価は以下の表のようになります。
地域区分 | 単価 | 適用地域 |
---|---|---|
1級地 | 11.40円 | 東京都特別区 |
2級地 | 11.12円 | 神奈川県横浜市、大阪府大阪市、東京都町田市など |
3級地 | 11.05円 | 埼玉県さいたま市、千葉県千葉市、神奈川県鎌倉市など |
4級地 | 10.84円 | 千葉県船橋市、東京都立川市、茨城県牛久市など |
5級地 | 10.70円 | 茨城県水戸市、京都府京都市、福岡県福岡市など |
6級地 | 10.42円 | 宮城県仙台市、栃木県宇都宮市、群馬県高崎市など |
7級地 | 10.21円 | 北海道札幌市、長野県長野市、山梨県甲府市など |
その他 | 10.00円 | 1級地~7級地以外 |
訪問介護の基本報酬
訪問介護の基本報酬は、「身体介護」、「生活援助」、「通院等乗降介助」の3つに分類されています。このうち、「身体介護」と「生活援助」は、サービスを提供する時間の長さに応じて金額(単位数)が定められています。
訪問介護の基本報酬の単位数は、以下の表のようになります。
種類 | 所要時間 | 単位数 |
---|---|---|
身体介護が中心 | 20分未満 | 163単位 |
20分以上30分未満 | 244単位 | |
30分以上1時間未満 | 387単位 | |
1時間以上 | 567単位に所要時間1時間から計算して30分経過するごとに82単位を加算 | |
生活援助が中心 | 20分以上45分未満 | 179単位 |
45分以上 | 220単位 | |
通院等のための乗車又は降車の介助が中心 | (1回につき) | 97単位 |
訪問介護の主な加算
訪問介護の主な加算は、以下の表のようになります。このうち介護職員処遇改善加算や介護職員等ベースアップ等支援加算等は、開業時から算定することができる加算になります。
加算名 | 単位数または加算率 | |
---|---|---|
初回加算 | 200単位/月 | |
生活機能向上連携加算 | (Ⅰ) | 100単位/月 |
(Ⅱ) | 200単位/月 | |
認知症専門ケア加算 | (Ⅰ) | 3単位/日 |
(Ⅱ) | 4単位/日 | |
介護職員処遇改善加算 | (Ⅰ) | 24.5% |
(Ⅱ) | 22.4% | |
(Ⅲ) | 18.2% | |
(Ⅳ) | 14.5% | |
特定事業所加算 | (Ⅰ) | 20% |
(Ⅱ) | 10% | |
(Ⅲ) | 10% | |
(Ⅳ) | 3% | |
(Ⅴ) | 3% | |
特別地域訪問介護加算 | 15% | |
中山間地域等における小規模事業所加算 | 10% | |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 5% | |
緊急時訪問介護加算 | 100単位/回 |
訪問介護事業所の利益を増やす方法
訪問介護事業所の利益は「収入-支出」で算出するため、利益を出すためには収入(売上)をアップして支出を少なくする必要があります。
ここからは、売上をアップする方法と支出を少なくする方法についてそれぞれご紹介していきます。
訪問介護の売上をアップする方法
売上アップの方法①利用者数を増やす
訪問介護事業所における一月あたりの売上は、「1回の訪問における単価×訪問回数」で計算することができます。
1人の利用者様に対する一月あたりの訪問回数はケアマネジャーのケアプランによって決められていますので、事業所全体の訪問回数を増やすためには利用者数を増やすことが大切です。
新規の利用者様を獲得するためには、居宅介護支援事業所のケアマネジャーや地域の病院、地域包括支援センターなどへ営業活動を行いましょう。
利用者獲得のための営業について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
売上アップの方法②加算を取得する
1回の訪問における単価を上げるためには、加算を算定するという方法があります。冒頭でご紹介したように、訪問介護の加算には様々な種類がありますが、算定率は加算によって異なります。
特に、訪問介護における特定事業所加算は経営に与える影響が大きい単位数(率)の加算なので、算定要件を理解し、算定できるように事業所の体制等を整えていくことが重要になります。
売上アップの方法③保険外サービスを提供する
売上を増やす方法として、保険外サービスの提供も考えられます。ただし、保険外サービスは、その金額の10割を利用者様が負担することになりますので、利用者様の経済的な負担について留意し、提案しましょう。
訪問介護事業所の保険外サービスの例として、
- お弁当の配食サービス
- 美容院への同行
- ペットの世話
- 大掃除
などが考えられます。
訪問介護でコストダウンをする方法
コストダウンの方法①効率的な訪問ルートを設定する
訪問介護事業所のコストと多くを占めるのが人件費です。人件費をおさえるためのひとつの方法が、効率的に訪問ルートを設定することになります。
例えば、距離の離れた利用者宅に移動するのではなく、移動距離をできるだけ短くするような訪問スケジュールを組むことが大切です。
コストダウンの方法②残業時間を短くする
従業員が残業を行っていると残業代を支払わなければなりませんし、長時間労働は従業員のモチベーションの低下にもつながってしまいます。
残業時間を短くするためには、業務を効率化するための取り組みを行いましょう。
具体的には、
- 直行や直帰ができるように、出退勤の打刻をスマートフォンで行えるよう機器・ソフトを導入する
- 記録や請求業務を簡素化するために訪問介護事業所向けの記録・請求ソフトを導入する
- シフト作成や訪問スケジュールを効率化するために、シフト作成機能やスケジュール管理のあるソフトを導入する
- 情報共有をスムーズにするためにチャットツールを導入する
などといった取り組みが考えられます。
コストダウンの方法③固定費を見直す
訪問介護事業所を運営する上で毎月かかっている固定費の見直しを行うこともコスト削減に有効です。まずは固定費のリストアップし、削減できないかを検討しましょう。見直しが可能な固定費は以下のようなものが考えられます。
- 固定電話・インターネット回線の通信料
- 電気料金
- 請求・記録ソフトの利用料
- スマートフォンやタブレットの通信料
- リース料
- 損害賠償保険や自動車保険、火災保険などの保険料
など
訪問介護事業所の開業をカイポケがサポートします!
訪問介護事業所を立ち上げるためには、指定申請などの行政手続き、事業計画書の作成、従業員の採用活動など、やらなければならないことが多くあります。
『カイポケ開業支援』では、行政手続きに関する情報提供や開業スケジュールの作成など、開業に必要な様々なサポートを行っています。
「身近に開業について相談できる人がいない」、「インターネットでの情報収集では分からないことが多い」などといった悩みをお持ちの方は、ぜひカイポケ開業支援へご相談ください。
まとめ
ここまで、訪問介護事業所の収入の推移や収支差率の分布、事業所数の推移などから、訪問介護事業サービスの需要や市場の動向を解説し、利益を増やす方法などについてもご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
訪問介護事業所の利用者数や事業所数は増え続けていますが、すべての事業所が黒字になっているわけではなく、赤字になっている事業所もあります。開業から早期に黒字化を目指すためには、経営に関する各月の数値目標を設定し、目標達成に向けた行動を取ることがとても大切です。
ここでご紹介した内容が、皆様の訪問介護の開業・立ち上げのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。