訪問介護で作成が必要なマニュアルの一覧【開業準備】



訪問介護事業所の開業を検討している皆様の中には、「訪問介護事業所ではどんなマニュアルを作成しなければならないの?」や「どうやってマニュアルを作成すればいいの?」などとお困りの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、そのような皆様に向けて、訪問介護事業所で必ず作成しなければならないマニュアルとマニュアルを作成する際のポイントなどについてご紹介していきます。

フローチャートと赤鉛筆の写真

目次

訪問介護事業所のマニュアルとは

マニュアルとは、業務の全体像や仕事に対する考え方と共に、仕事の進め方や必要な準備などを、誰が見ても分かるよう具体的に示したものです。
訪問介護事業所が作成するマニュアルは、緊急時対応マニュアルなどの運営指導で確認されるものと、請求業務マニュアルなどの作成義務はないですが業務を効率化するために作成するものに分けられます。

訪問介護事業所の開業時に作成必須なマニュアルの一覧

まずは、訪問介護事業所で開業時に作成が必要なマニュアルをご紹介していきます。開業時に作成が必要なマニュアルは、運営基準に作成が義務付けられているもので、運営指導(実地指導)でもチェックされます。運営指導で法令を遵守した事業所運営ができていないと、悪質な場合は指定取消しになることもありますので、適切にマニュアルを整備する必要があります。

【運営指導でチェックされるマニュアル・指針の一覧】

ここからは、それぞれのマニュアルに記載する項目について見ていきます。

緊急時対応マニュアルとは

訪問介護の運営基準には、「緊急時等の対応」について以下のように定められています。

(緊急時等の対応)
第二十七条 訪問介護員等は、現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない。

利用者様の身体の急変などといった緊急時に対応するためのマニュアルには、速やかな救急車の手配、主治医へ連絡を行う等の必要な措置を講じるために、

などといった主治医や救急隊等に連絡するまでの手順を分かりやすく記載します。

苦情対応マニュアルとは

訪問介護の運営基準には、「苦情処理」について以下のように定められています。

(苦情処理)
第三十六条 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定訪問介護事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定訪問介護事業者は、提供した指定訪問介護に係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定訪問介護事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。


苦情対応マニュアルには、

などを記載します。

事故対応マニュアルとは

訪問介護の運営基準には、「事故発生時の対応」について以下のように定められています(一部抜粋)。

(事故発生時の対応)
第三十七条 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じなければならない。


事故発生時に速やかに関係者に連絡すると共に、必要な措置を講じるために、事故対応マニュアルには、

などを記載します。

ハラスメント防止マニュアルとは

訪問介護の運営基準には、「勤務体制の確保等」について以下のように定められています(一部抜粋)。

(勤務体制の確保等)
第三十条
4 指定訪問介護事業者は、適切な指定訪問介護の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより訪問介護員等の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。


厚生労働省老人保健健康増進等事業「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル (株式会社三菱総合研究所) 」には、ハラスメント防止マニュアルに記載する内容が例示されていますので、参考にして作成しましょう。

介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

(出典:令和4年三菱総合研究所 介護現場におけるハラスメント対策マニュアル

感染症の予防及びまん延の防止のための指針とは

訪問介護の運営基準には、「衛生管理等」について以下のように定められています(一部抜粋)。

(衛生管理等)
第三十一条 
3 指定訪問介護事業者は、当該指定訪問介護事業所において感染症が発生し、又はまん延しないように、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置その他の情報通信機器(以下「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。)をおおむね六月に一回以上開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における感染症の予防及びまん延の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること。


感染症の予防及びまん延の防止のための指針には、厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」を参考に、

虐待防止のための指針とは

訪問介護の運営基準には、「虐待の防止」について以下のように定められています。

(虐待の防止)
第三十七条の二 指定訪問介護事業者は、虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
一 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等を活用して行うことができるものとする。)を定期的に開催するとともに、その結果について、訪問介護員等に周知徹底を図ること。
二 当該指定訪問介護事業所における虐待の防止のための指針を整備すること。
三 当該指定訪問介護事業所において、訪問介護員等に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。
四 前三号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。


運営基準の解釈通知によると、虐待の防止のための指針には、

訪問介護事業所で作成しておいた方が良いマニュアルの一覧

運営基準で定められているマニュアル以外にも、請求業務マニュアルや訪問介護員のマナー・接遇マニュアルなどを作成することで、職員が入れ替わった際の引継ぎや人材育成を効率よく行ったり、サービスの質を一定の水準に保ったりするメリットがあります。
訪問介護事業所で作成しておいた方が良いマニュアルは、以下のようなものが挙げられます。

訪問介護事業所でマニュアルを作成する際のポイント

訪問介護事業所でマニュアルを作成する際には、誰が見ても分かりやすく伝わるように作成することがポイントになります。

ポイント①シンプルな言葉を使う

訪問介護の手順等を説明する上で、専門用語を使用して説明することは避けられないかもしれません。ただし、訪問介護の経験が浅い職員でも分かりやすいように、できるだけシンプルな言葉を使用し、間違いやすい専門用語を使用する際には注釈をつけましょう。

ポイント②手順はフローチャートで示す

マニュアルでは、様々な業務の手順を説明します。複雑な業務の手順やプロセスは、文章で記載するよりもフローチャートにした方が、一目で業務の流れを理解しやすくなり、スムーズに業務を行うことができます。
特に事故や緊急時の対応などは、職員が心理的に焦っていることもあると思いますので、スムーズに対応できるようにフローチャートを活用しましょう。

ポイント③ひな形を参考にする

訪問介護事業所のマニュアルを一から分かりやすく作成するのは難しいので、厚生労働省や市町村等が示しているひな形を参考に作成しましょう。

【ひな形の一覧】

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まとめ

ここまで、訪問介護事業所で必ず作成しなければならないマニュアルと作成のポイントなどについてご紹介してきましたが、いかがでしたか。
訪問介護事業所を開業した後に、法令を遵守した事業所運営をし、人材育成等を効率よく行うためにも、開業前からマニュアルの作成を進めていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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