介護事業は一人でも開業できる?開業の条件や流れを徹底解説!

介護事業で開業を検討されてる方の中には「自分一人で開業できる?」「開業をするために必要な条件は?」など悩まされてる方も多いのではないでしょうか。

介護事業では、それぞれのサービス種別に最低限配置しなければならない職種・人数が「人員基準」として定められています。
そのため、「居宅介護支援」は一人でも開業することができますが、それ以外のサービス種別は一人では開業することができません。
この記事では、介護事業の主なサービス種別について、開業に必要な条件と開業するまでの流れを解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

目次

介護事業は一人でも開業できる?

介護事業では、「居宅介護支援」を除き、一人で開業することはできません。
なぜなら、サービス種別ごとに最低限配置しなければならない職種・人数が人員基準として定められており、「居宅介護支援」以外のサービスでは二人以上の人員配置が定められているからです。

介護事業の経営者・管理者として必要な資格・条件

介護事業を開業する際には、提供するサービス種別によって、経営者や管理者に特定の資格や経験が求められる場合があります。
一方で、資格がなくても開業・運営が可能なサービス種別も存在します。
ここでは、主要なサービス種別に、どのような資格や条件が必要なのか、または資格が不要なのかをみていきましょう。

サービス種別 資格・条件
訪問介護 資格要件なし
通所介護 資格要件なし
訪問看護 (管理者)実務経験のある保健師・看護師
居宅介護支援 (管理者)主任介護支援専門員
福祉用具貸与 資格要件なし
介護老人福祉施設 社会福祉主事等
介護老人保健施設 医師
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム) 資格要件なし
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) (経営者)認知症対応型サービス事業開設者研修
(管理者)認知症対応型サービス事業管理者研修
小規模多機能型居宅介護 (経営者)認知症対応型サービス事業開設者研修
(管理者)認知症対応型サービス事業管理者研修

介護事業を開業するために満たすべき3つの指定基準

介護事業を開業するためには、サービス種別ごとに定められた下記の3つの基準を満たす必要があります。

それぞれ詳しく解説していきます。

人員基準

介護事業の人員基準とは、事業所等に配置しなければならない管理者や介護職員、介護支援専門員(ケアマネジャー)などの職種と人数について定めている厚生労働省令です。

介護事業における主なサービス種別の人員基準は下記の通りです。

サービス種別 人員基準
訪問介護 ●管理者
●サービス提供責任者
●訪問介護員
通所介護 ●管理者
●生活相談員
●看護職員
●介護職員
●機能訓練指導員
訪問看護 ●管理者
●看護職員
●理学療法士、作業療法士または言語聴覚士
居宅介護支援 ●管理者
●介護支援専門員
福祉用具貸与 ●管理者
●福祉用具専門相談員
介護老人福祉施設 ●管理者(施設長)
●介護支援専門員
●医師
●生活相談員
●介護職員
●看護職員
●栄養士または管理栄養士
●機能訓練指導員
●調理師、事務員等
介護老人保健施設 ●医師
●薬剤師
●看護職員
●介護職員
●理学療法士、作業療法士または言語聴覚士
●支援相談員
●栄養士または管理栄養士
●介護支援専門員
●調理師、事務員等
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム) ●管理者
●生活相談員
●看護職員または介護職員
●機能訓練指導員
●計画作成担当者
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ●管理者
●代表者
●介護従事者
●計画作成担当者
小規模多機能型居宅介護 ●管理者
●代表者
●看護職員
●介護従事者
●介護支援専門員

設備基準

介護事業では、サービスの種類や規模によって食堂や機能訓練室、静養室、事務室など設備の基準(ルール)が定められています。

介護事業における主なサービス種別ごとの設備の基準は下記の通りです。

サービス種別 設備基準
訪問介護 ●事業を行うために必要な広さ専用の区画(事務室・相談室)

●訪問介護の提供に必要な備品・設備

通所介護 ●事務室
●食堂
●機能訓練室
●静養室
●相談室
●静養室
●トイレ
●浴室
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
●通所介護の提供に必要なその他の設備及び備品等
訪問看護 ●事務室
●訪問看護の提供に必要な設備・備品
居宅介護支援 ●事業を行うために必要な広さの区画
●居宅介護支援の提供に必要な設備及び備品等
福祉用具貸与 ●福祉用具の保管及び消毒のために必要な設備及び器材
●事業の運営を行うために必要な広さの区画
●福祉用具貸与の提供に必要なその他の設備及び備品等
介護老人福祉施設 ●居室
●静養室
●食堂
●浴室
●洗面設備
●便所
●医務室
●調理室
●介護職員室
●看護職員室
●機能訓練室
●面談室
●洗濯室又は洗濯場
●汚物処理室
●介護材料室
●事務室その他の運営上必要な設備
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
介護老人保健施設 ●療養室
●診察室
●機能訓練室
●談話室
●食堂
●浴室
●レクリエーション・ルーム
●洗面所
●便所
●サービス・ステーション
●調理室
●洗濯室又は洗濯場
●汚物処理室
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム) ●介護居室
●一時介護室
●浴室
●便所
●食堂
●機能訓練室
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ●居室
●居間
●食堂
●台所
●浴室
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
●利用者が日常生活を営む上で必要な設備
小規模多機能型居宅介護 ●居間
●食堂
●台所
●宿泊室
●浴室
●消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
●小規模多機能型居宅介護の提供に必要な設備及び備品等

運営基準

介護事業における運営基準とは、介護保険に基づく事業を運営する事業者が遵守しなければならない厚生労働省が定めるルールです。
サービス種別によって、指定申請(介護事業者としての指定を受ける手続き)の際に満たすべき運営基準が異なります。
※運営を開始する時点では定められている全ての運営基準を満たす必要があります。

介護事業における主なサービス種別ごとの運営基準は下記の通りです。

サービス種別 運営基準
訪問介護 ●運営規程
●苦情処理
通所介護 ●運営規程
●苦情処理
訪問看護 ●運営規程
●苦情処理
居宅介護支援 ●運営規程
●苦情処理
福祉用具貸与 ●運営規程
●苦情処理
●衛生管理等
介護老人福祉施設 ●運営規程
●苦情処理
●協力医療機関等
介護老人保健施設 ●運営規程
●苦情処理
●協力医療機関等
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホーム) ●運営規程
●苦情処理
●協力医療機関等
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) ●運営規程
●苦情処理
●協力医療機関等
小規模多機能型居宅介護 ●運営規程
●苦情処理
●協力医療機関等

介護事業を開業するまでの流れは?

介護事業を起業・開業するまでの流れは、次の通りです。

  1. 経営するサービス種別の決定
  2. 法人設立
  3. 資金調達
  4. 設備基準を満たすための物件等の調達
  5. 人員基準を満たすための人材採用
  6. 指定申請

1.経営するサービス種別の決定

まずは経営するサービス種別を決めます。
介護事業は、多様なサービス種別があるので、事業の概要と開業・運営するための条件、費用等を把握して、経営する介護のサービス種別を決めましょう。

2.法人設立

介護事業を行うためには、「法人であること」が必要になります。

サービス種別によって、開業できる法人格が異なるので適切な法人を設立しましょう。

株式会社等の営利法人でも運営できる介護のサービス種別

社会福祉法人・医療法人など特定の法人しか運営できない介護のサービス種別

法人設立にかかる期間

法人設立にかかる期間は法人の種類によって違いがあります。
株式会社の場合、設立には1週間から3週間程度の期間が必要です。
合同会社の場合は、数日から10日程度の期間を要します。
社会福祉法人や医療法人といった非営利法人の場合、10日から3週間程度の期間が必要です。

3.資金調達

介護事業を開業し、運営するためには、開業資金が必要になります。
サービス種別によって違いがあるため一概には言えませんが、訪問介護や通所介護などの小規模な介護事業所を開業するためには、一般的に約250万円〜2,000万円ほどが必要と言われています。
事業の種類や規模によって必要となる設備・人員・準備期間が変わるので、開業資金としていくら資金調達しなくてはいけないのかを明確にしましょう。

資金の内訳

介護事業に必要な資金は開業前と開業後で内訳が変わります。

「開業前」の資金の内訳
「開業後」の資金の内訳

資金の調達方法

開業のための資金調達には次のような方法が考えられます。

4.設備基準を満たすための物件等の調達

サービス種別によって設置しなくてはいけない設備・備品等が「設備基準」として定められています。
特に建物を建築する場合は準備期間が長くなるので、基準の詳細を確認の上、設備・物件の調達準備を進めましょう。

5.人員基準を満たすための人材採用

サービス種別によって配置しなくてはいけない職種と人数が「人員基準」として定められています。
介護業界全体で、介護職員をはじめ、看護職員、介護支援専門員などの採用に苦労する状況が続いているので、早めに採用活動を始めましょう。

6.指定申請

介護事業を開業するためには、都道府県や市町村から事業者としての指定(許認可)を受けなくてはいけません。
この指定を受けるための手続きを「指定申請」といいます。
指定申請では、人員基準、設備基準、運営基準を満たしていることを証明する書類等を作成し、審査を受けます。

一人で開業手続きを進めて困ったらどうすればいい?

一人で開業の準備を進めていると、「手続きの方法が分からない」「一人では資料を作成しきれない」など困る場面もあるかと思います。
そのような時には、外部の開業サポートを活用することも選択肢として検討しましょう。

カイポケ開業支援サポート

カイポケ開業支援サポートは、経験豊富な専任スタッフが通所介護・訪問介護・居宅介護支援・訪問看護の開業をサポートするサービスです。
「介護事業を開業したいが何から始めたらよいか分からない」という方でも、電話やチャットで気軽に相談でき、スケジュールの立て方や各種申請の流れなどをご案内します。
さらに、事業計画の作成支援、融資相談、人材採用、指定申請書類の作成など、幅広いオプションサービスも用意しています。
これらは必要なサービスだけを自由に選択して利用できるため、コストを抑えながら効果的なサポートを受けることが可能です。

詳しい内容は、こちらよりご確認いただけます。

士業の開業サポート

介護事業を開業するためには煩雑な行政手続きが必要になります。
そこで、専門的な知識を持つ士業のサポートを受けることも選択肢の一つになります。
例えば、行政書士や社会保険労務士などに依頼することで、公的書類の正確な作成・提出を支援してもらえます。
業務の範囲や介護のサービス種別によって費用が変動するため、依頼する前にしっかりと見積もりを取るようにしましょう。

フランチャイズの利用

一人で開業手続きを進めることが難しい場合、フランチャイズに加盟するという選択もあります。
フランチャイズは、新しく介護事業を開業したい個人・事業者が加盟店としてフランチャイズ企業と契約を結び、加盟金やロイヤリティを支払うことで、本部が培ってきた介護事業の運営ノウハウや特定の商標を使用する権利などを得られる仕組みです。
介護事業のフランチャイズに加盟すると、開業までの準備をサポートしてくれるだけでなく、開業後も利用者獲得など運営をサポートしてくれるため、スムーズかつ効率的にノウハウを活かした運営を行うことができます。
一方で、対価として加盟金やロイヤリティ支払いが必要となるため、対価に見合ったメリットがあるのかどうか見極めることが大切になります。

まとめ

介護事業はサービス種別に最低限配置しなければならない職種・人数が「人員基準」として定められているため、「居宅介護支援」を除き一人で開業することができません。
人員基準だけではなく、設備基準や運営基準や経営者・管理者の資格要件など、サービス種別によって条件が異なるので、事前に条件を確認したうえで開業準備を進めましょう。
訪問介護・通所介護・訪問看護・居宅介護支援の開業の手続きが困難だと感じた場合には、ぜひカイポケ開業支援サポートの活用もご検討ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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