訪問リハビリテーションを立ち上げる流れは?開業・開設に必要な準備も解説!



訪問リハビリテーションの立ち上げを検討している皆様は、「訪問リハビリテーションの事業は利益がでるの?」や「訪問リハビリテーションを立ち上げるためにどんな準備をしなければならないの?」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、訪問リハビリテーションを立ち上げる際の流れや開業時に満たさなければならない基準、訪問リハビリテーションの需要の動向などについてご紹介していきます。


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目次

訪問リハビリテーションの開設主体は病院・診療所が76.8%、続いて老健が23.1%

訪問リハビリテーションとは、要介護者が居宅において心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために、理学療法・作業療法・その他必要なリハビリテーションを行うサービス種別です。
訪問リハビリテーションの開設主体は、病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院の3つに分けられます。 このうち、病院または診療所が全体の『76.8%』、次に介護老人保健施設が『23.1%』、介護医療院が『0.001%』と、病院または診療所が運営する事業所が大半を占めるサービス種別となっています。

開設主体割合 (出典:令和5年7月24日 厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会資料4

訪問リハビリテーションへの需要はあるの?

訪問リハビリテーション事業所の立ち上げを検討している皆様は、訪問リハビリテーションにどのくらいの需要があるのか気になっている方もいらっしゃるでしょう。
訪問リハビリテーションの受給者数(利用者数)は、その数は毎年増加を続け、2022年に約13.6万人となっていることから、訪問リハビリテーションの需要は伸びていると言えます。

訪問リハビリテーションの受給者数推移 (厚生労働省「介護給付費等実態統計(調査)(各年4月審査分)」より作成)

また、利用者数の増加に伴って訪問リハビリテーションの請求事業所も増加しており、訪問リハビリテーション事業は今まさに成長している市場であることが分かります。

訪問リハビリテーションの請求事業所数推移 (厚生労働省「介護給付費等実態統計(調査)(各年4月審査分)」より作成)

訪問リハビリテーションは儲かるの?

厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、収入と支出の差を表す収支差率は、2021年度の決算で訪問リハビリテーションの全国平均が「0.6%」となっています。介護サービス全体の平均収支差率は「3%」ですので、収支差率が高いとは言えない事業となっています。

訪問リハビリテーション 介護サービス全体
収支差率の平均(2021年度決算) 0.6% 3%

ただし、以下のグラフのように、収支差率が0%を上回っている黒字の事業所も多く、2021年度の決算だと収支差率が「0~5%」、「5%~10%」の事業所の割合が大きいことから、訪問リハビリテーションは『十分に儲かる可能性がある事業』だと言えるでしょう。

訪問リハビリテーションの請求事業所数推移 (出典:厚生労働省 令和4年度介護事業経営概況調査)

訪問リハビリテーションを開業・立ち上げ・開設に必要な資格・基準

訪問リハビリテーションは、開設主体が病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院に限られているため、経営するためには医療法人や社会福祉法人等の法人格が必要となります。
また、訪問リハビリテーションを立ち上げる際には、満たさなければいけない3つの基準がありますので見ていきましょう。

  1. 人員基準
  2. 設備基準
  3. 運営基準

訪問リハの開設基準①人員基準

訪問リハビリテーションの人員基準は、サービスを提供するために必要な職員の員数や資格等が定められている厚生労働省令です。訪問リハビリテーションの人員基準には、専任の常勤医師が1人以上、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を適当数置かなければならないとされています。 ただし、医師や理学療法士等は兼務が認められているため、人員基準を満たすために新たに職員を採用するというよりも、もともと病院や老健に所属している医師や理学療法士等の兼務によって人員を確保する場合が多いようです。

職種 配置基準 兼務
医師 常勤・専従で1人 病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院では、当該病院等の常勤医師との兼務で差し支えない。
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士 適当数を配置 病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士との兼務も可能。

こちらの記事では、訪問リハビリテーションの人員基準について詳しくご紹介しています。

訪問リハの開設基準②設備基準

訪問リハビリテーションの設備基準には、訪問リハビリテーションの事業の運営を行うための専用の区画など、最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。
設備基準に「設備および備品については、病院、診療所、介護老人保健施設または介護医療院における医療用に備え付けられたものを使用することができる」と記載があり、訪問リハビリテーションは病院や老健のスペースを一部借りて開業することが多いです。

【訪問リハビリテーションの設備基準の例】

訪問リハの開設基準③運営基準

訪問リハビリテーションの運営基準には、事業所が適切なサービスを提供するために、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類・記録・マニュアル、行わなければならない取り組み・研修などが規定されています。

【訪問リハビリテーションの運営基準の項目例】

訪問リハビリテーションの開業・立ち上げ・開設の流れ

訪問リハビリテーションを立ち上げるためには、以下の流れで開設準備をすすめていきます。

【訪問リハビリテーションの立ち上げ・開業の流れ】

  1. 事業計画書の作成
  2. 開業資金の算出
  3. 訪問リハ専用の区画を確保
  4. 従業員を採用
  5. 指定申請
  6. 請求ソフトの手配
  7. 利用者様の獲得

ここからは、それぞれの段階で行うことを一つずつ確認していきましょう。

訪問リハ立ち上げの流れ①事業計画書の作成

事業計画書には、どのような事業を行いたいのかという事業方針や、どれくらいの利用者数が期待できるのか、周辺の競合となる事業所、収支の見通しなどの情報を記載します。
事業計画書は、指定申請時や金融機関から融資を受ける際に使う書類です。
事業計画書の書き方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

訪問リハ立ち上げの流れ②開業資金の算出

訪問リハビリテーションを開業する際には、病院や老人保健施設の設備や備品を使用することができるため、開業のための資金調達は必要ない場合が多いようです。
ただし、訪問リハビリテーションの立ち上げにあたり、新たに人材採用や車両等の購入を行う場合には、どのくらいの費用がかかるのかを算出し、必要に応じて資金調達を行いましょう。

訪問リハ立ち上げの流れ③訪問リハ専用の区画を確保

訪問リハビリテーションを開業するためには、設備基準を満たしている必要があります。設備基準では「事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けること」とされていますので、訪問リハビリテーションの利用申込の受付や相談等に対応するのに適切なスペースを病院や老人保健施設内に確保しましょう。

訪問リハ立ち上げの流れ④従業員を採用

事業者として「指定」を受けるためには、人員基準を満たす必要があります。訪問リハビリテーションの人員基準では、医師や理学療法士等が病院または診療所、介護老人保健施設、介護医療院等と兼務することが認められているため、開業にあたって新たに従業員を採用しない場合もあるようです。
指定基準を満たすために新たに従業員を採用する場合は、指定申請を行う前に、求人を行い、面接を経て、従業員を採用することになります。
採用の方法には、ハローワーク以外にも、新聞折込、求人雑誌、インターネットの求人広告、人材紹介などもありますので、費用面での負担も考えながら採用活動を進めましょう。

訪問リハ立ち上げの流れ⑤指定申請

訪問リハビリテーションを開業するためには、「指定申請」という行政からの許認可を受けるための手続きを行う必要があります。
指定申請手続きは、開業する事業所が法律に定められた指定基準(人員・設備・運営の基準)を満たしていることを証明するための書類等を準備し、提出することを指します。書類の提出は、都道府県によって期日が決められていますが、開業希望月の『2か月前の末日』が期日となっている都道府県が多いようです。
また、指定申請の前の段階で「事前相談」が必要となるケースもありますので、開業希望月の『3か月前〜6か月前』までに都道府県の担当窓口へ一度、開業の相談をしておきましょう。

訪問リハの立ち上げに必要な指定申請の書類は?

こちらでは例として大阪府で訪問リハビリテーションの新規指定申請の際に必要になる書類を一覧でご紹介します。

【訪問リハビリテーションの指定申請書類】

訪問リハのみなし指定とは

みなし指定とは、健康保険法の保険医療機関・保険薬局に指定された医療機関・薬局が、介護保険法による医療系サービスの事業者として、指定をされたものとみなされることをいいます。
通常、訪問リハビリテーション事業を始めるためには、指定権者に「指定申請」を行う必要がありますが、病院または診療所の場合は指定申請を行わなくても、「みなし指定」を受けた事業所として訪問リハビリテーションのサービス提供を行うことができます。

訪問リハ立ち上げの流れ⑥請求ソフトの手配

訪問リハビリテーション事業では、サービスを提供した対価を国民健康保険団体連合会(以下、国保連)と利用者様へ請求することになります。開業後の請求業務をスムーズに行うためにも開業前に請求ソフトの導入を進めましょう。
請求ソフトには、サービス提供記録の作成や請求データ作成、請求書発行などの機能を中心として、様々な機能が付いています。機能の種類や料金はソフトによって異なるため、複数の請求ソフトを比較して、導入する請求ソフトを決めましょう。
介護ソフトの選び方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

訪問リハ立ち上げの流れ⑦利用者様の獲得

開業日が決まったら、開業日に向けて、事業所を紹介するパンフレット、名刺、HPなどを作成し、利用者様を獲得できるように営業活動を行いましょう。
訪問リハビリテーションの営業先としては、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、(訪問リハを実施していない)病院や介護老人保健施設が考えられます。
訪問リハビリテーションの営業について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

まとめ

ここまで、訪問リハビリテーションを立ち上げる際の流れや開業時に満たさなければならない基準、訪問リハビリテーションの需要の動向などについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。 訪問リハビリテーションを開業するためには、事業計画書の作成や指定申請、利用者様の獲得など、経営者の皆様がやらなければならないことはたくさんあります。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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