ケアプラン点検とは?点検項目・マニュアル・支援ツールについてまとめて解説
居宅介護支援事業所を経営している皆様は、市町村が実施する『ケアプラン点検』について、「どのような目的で実施されるの?」、「運営指導と何が違うの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか?
この記事では、ケアプラン点検の目的や運営指導との違い、ケアプラン点検マニュアル、ケアプラン点検の流れ、ケアプラン点検項目、ケアプラン点検支援ツールなどについてまとめて解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
ケアプラン点検の概要と目的
ケアプラン点検とは、介護保険サービスが適切かつ効果的に提供されているかを確認するため、市町村等の保険者が、ケアマネジャーが作成したケアプランの内容を第三者の視点で確認し、助言・指導を行う取り組みです。
介護保険法第115条の45第3項第1号に規定される「介護給付等に要する費用の適正化のための事業」のひとつとして位置づけられ、実施されています。
また、ケアプラン点検を実施する目的は、ケアマネジメントの質を高めるとともに、地域の実情への理解を深め、「地域全体のケアマネジメント」の質の向上を図り、その結果として、利用者の意思決定支援や適切な介護給付が実現され、最終的には利用者の尊厳保持や自立支援に資することとなっています。
ケアプラン点検と運営指導の違いとは?
一部の保険者では、ケアプラン点検における面談を運営指導と同じタイミングで実施しているのですが、ケアプラン点検と運営指導は目的や制度上の位置づけに以下のような違いがあります。
| 項目 | ケアプラン点検 | 運営指導 | 
|---|---|---|
| 目的 | ケアプランがケアマネジメントのプロセスを踏まえ「自立支援」に資する適切なケアプランとなっているかを、基本となる事項を介護支援専門員とともに検証確認しながら、介護支援専門員の「気づき」を促すとともに「自立支援に資するケアマネジメント」とは何かを追求し、その普遍化を図り健全なる給付の実現を支援する。 | 利用者の自立支援及び尊厳の保持を念頭において、介護保険施設及び事業者の支援を基本とし、介護給付等対象サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図る。 | 
| 制度上の位置づけ(根拠法令) | 介護保険法第115条の45(地域支援事業)に基づいて実施される介護給付費等費用適正化事業の一つ | 介護保険法第23条(文書の提出等)及び第24条(帳簿書類の提出等) | 
| 実施対象 | 介護支援専門員 | 事業所(事業者) | 
| 実施方法 | 各保険者による | 確認文書・確認項目一覧を用いて、施設又は事業所において関係書類を基に、実地指導を行う。 | 
| 指導(助言)に従わない場合の措置 | 特になし(法令上の不正な事案や不当な事案が確認された場合には、運営指導もしくは監査にて対応) | 監査へと移行 | 
ケアプラン点検マニュアルとは?
ケアプラン点検マニュアルとは、自治体(保険者)向けに点検者(自治体の担当職員)がケアプラン点検の目的、具体的な点検の手順や実施方法、ケアプラン点検の効果などを理解するために作成されたマニュアルです。
自治体がケアプラン点検を実施する際の手順・流れ
1.ケアプラン点検の目的の設定
自治体における現状と課題を踏まえ、ケアプラン点検の目的が設定されています。
【目的の例】
- ケアマネジメントの質の向上
- ケアプラン作成能力の向上
- 地域全体のケアマネジメントの向上
- 適切な介護給付の実現
2.事業所選定
ケアプラン点検の目的や保険者の課題意識に応じて事業所が選定されます。
【事業所選定の観点の例】
- 給付や請求内容に特異性があるケアプラン(区分支給限度額に対する利用率が高いケアプラン等)を作成している事業所
- 特定事業所加算を算定している事業所
- 新規事業所、ケアプラン点検の実績がない事業所
- 介護支援専門員が一人の事業所
3.ケアプランの抽出
ケアプラン点検の目的や保険者の課題意識に応じて、該当するケアプランが抽出されます。
【ケアプラン抽出の観点の例】
- 特定のサービスを多く利用しているケアプラン
- 訪問系サービスのみ利用している
- 福祉用具の貸与のみ利用している
- 生活援助中心型を多く利用している
 
- 医療系サービスが入っていない等、サービスの種類が少ないケアプラン
- 同一法人のサービスを多用しているケアプラン
- 介護支援専門員等から相談のあったケアプラン
4.点検書類提出の依頼(通知)
点検する書類(アセスメントシート及び第1表~第5表等)の提出依頼が届きます。
5.書類の受領、確認、面談の準備
保険者は、事業所から届いた書類を確認し、面談の際に何を確認するか等について検討します。
点検では「ケアプラン点検支援ツール」を活用することが推奨されています。
また、点検や面談は、専門職を含む2人1組で実施するなど、点検の観点に偏りが生じないように進められます。
6.面談
自治体担当者と介護支援専門員が、ケアプラン点検の結果について面談を行います。
ケアプラン点検支援ツールによる点検結果などの根拠を示すことで、点検を受ける介護支援専門員の気づきが促されることなどを目的として実施されます。
7.点検結果の分析
自治体は、面談まで終えたケースの結果を分析します。
ケアプラン点検項目とは?
ケアプランの点検項目として以下の項目が示されています。
| 点検対象書類 | 点検項目 | 
|---|---|
| アセスメントシート | 課題分析の理由 かかりつけ医 既往歴の有無・内容 主傷病 内服薬・処置 ADL IADL 認知機能や判断能力 コミュニケーションにおける理解と表出の状況 一日に摂取すべき水分量 実際に摂取した水分量 食事内容・カロリー数等 BMI 口腔内の状態 排尿、排便の状態 清潔の保持 「一部介助」項目の特記 「見守り」項目の特記 外出頻度、外出先 利用者の主訴・要望 一日の過ごし方 離床、臥床 現在の生活状況 生活歴 家族の主訴・要望 経済状況 本人の役割 課題の確認 課題の分析結果の文章化 家族等の状況 家族関係や周辺の社会資源との状況 留意すべき事項 | 
| 居宅サービス計画書(第1表) | 利用者及び家族の生活に対する意向を踏まえた課題分析の結果 総合的な援助の方針における自立の具体性 | 
| 居宅サービス計画書(第2表) | アセスメントで抽出した課題に基づくニーズの記載 利用者や多職種に理解できる表記 長期目標 短期目標 本人の役割設定 介護保険サービス 福祉用具貸与・販売の種類と利用の理由 介護保険外サービス(インフォーマルサポートを含む) 利用者の意思を反映したサービス事業所の利用 | 
| 週間サービス計画表(第3表) | 週間計画の整合性(介護保険サービス) 週間計画の整合性(インフォーマルサポート) 週間計画の整合性(一日の習慣化された活動) 家族の役割設定の整合性 | 
| サービス担当者会議の要点(第4表) | サービス担当者会議の開催 サービス担当者会議への本人の出席 サービス担当者会議への家族の出席 サービス担当者会議へのサービス担当者の出席 サービス担当者会議の議題(検討項目) サービス担当者会議の検討内容 サービス担当者会議で残された課題 ケアプランに位置付けられていない多職種との連携 | 
| 居宅介護支援経過(第5表) モニタリングシート | 居宅サービス計画の交付の記録 サービス担当者会議の招集 利用者宅への月1回以上の訪問 サービス事業所との連絡・モニタリング内容 変化を捉える視点 本人の心身状態に関する変化の医療者への報告 | 
| その他 | ケアプランに位置付けられている多職種との連携 | 
ケアプラン点検支援ツールとは?
ケアプラン点検支援ツールとは、自治体のケアプラン点検に係る事務負担を軽減するために開発されたツールです。
ケアプラン点検支援ツールを使うことで、点検結果をもとに「ケアプランの記載の充実度」や「面談時の確認ポイント」を可視化することができます。
ケアプラン点検支援ツールの動作環境
ケアプラン点検支援ツールを動作させるためには、以下のWindows版のMicrosoft Officeをインストールしていることが必要となります。
- Microsoft Office 2013
- Microsoft Office 2016
- Microsoft Office 2019
- Microsoft Office 2021
まとめ
ケアプラン点検は、自治体が「利用者の意思決定支援や適切な介護給付が実現され、利用者の尊厳保持や自立支援に資すること」を目的として実施されています。
効率的な実施のために、マニュアルや支援ツールが開発され、今後、定期的に実施されることが予想されます。
介護保険法第69条の34第3項に記載されている介護支援専門員の義務にある「介護支援専門員は、要介護者等が自立した日常生活を営むのに必要な援助に関する専門的知識及び技術の水準を向上させ、その他その資質の向上を図るよう努めなければならない。」を満たすためにも、ケアプラン点検等を活用することが望まれています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
参考情報(厚生労働省の資料等)
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