デイサービス(通所介護)を黒字化させるには?赤字の理由やその対策を解説

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デイサービスを経営・管理者の中には、「デイサービスが赤字になる理由は?」「黒字化させるにはどうしたらいいの?」と疑問に思われている方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、デイサービスの赤字の割合やその理由、事業所の規模による利益率の違いや黒字化のポイントを解説します。

目次

デイサービスの黒字事業所の割合

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表した『2023年度 通所介護の経営状況について』によると、2023年度のデイサービスでは『56.1%』の事業所が黒字であると報告されています。(43.9%の事業所が赤字とされています。)

デイサービスが赤字になる理由

デイサービスが赤字経営に陥ってしまう主な理由は、「収入の不足」と「支出が多い」の2点です。

これらの理由について、詳しく解説していきます。

収入の不足

デイサービスで収入が不足する原因として、以下のような点が挙げられます。

稼働率が低い

デイサービスの収入の構造上、稼働率が低いと収入が少なくなります。
例えば、競争が激化している地域では、近隣の競合に利用者が流れ、利用者数を確保できないことがあります。

加算が取得できていない

収入が不足している原因のひとつとして、予定していた加算を取得できていないケースも挙げられます。
加算の算定要件を満たすための人員を配置できない、対象となる利用者がいない、手続きや計画・記録などに対応する余裕がないといった理由から加算を取得できない場合があります。

支出が多い

デイサービスで支出が多くなる原因として、以下のような点が挙げられます。

人件費が高い

デイサービスの事業は、人件費率の高い事業です。
近年、介護人材が不足していることや人件費が上がってきていることから、人件費が増えていることも赤字になる理由のひとつになっています。

近年、人件費が高騰しており、人員基準を満たす職員を雇う人件費は、事業所の支出の中で大きな割合を占めます。

採用コストが高い

デイサービスには、生活相談員や介護職員、看護職員、機能訓練指導員など、配置すべき人員(人員基準)が定められています。
これらの人員を確保できない場合、指導の対象となったり、減算が適用になったりします。
そのため、人員基準に定められる職種が不足する際は、採用コストをかけてでも採用活動をすすめることがあります。

物価高による影響

デイサービスを運営するには、様々な備品・消耗品を使用し、水道光熱費などもかかります。
近年の物価高の影響により、食材、消耗品、ガソリン代、電気料金などが高騰しているので、想定していたよりも支出が増えてしまうということが起きます。

デイサービスが黒字化するためのポイント

デイサービスが黒字化するためのポイントは次の2点です。

それぞれ詳細を解説していきます。

収入を増やす

デイサービスの収入を増やすための方法は次の通りです。

稼働率を上げる

売上を増やすためには、稼働率を高める工夫が大切です。
利用者を獲得するための営業方法を改善することや、サービスの質を上げて利用者の満足度を向上させることなどが、稼働率を上げることにつながっています。

平均要介護度を上げる

デイサービスの介護報酬は、利用者の要介護度が高いほど、単位数が高く設定されているので、利用者の平均要介護度を上げることも収入を増やすことに繋がります。
要介護度が高い利用者も受け入れる、利用中の利用者の要介護度が上がっても利用を継続できるように調整する、といったことを行うことが収入の増加につながります。

加算を取得する

売上を増やすためには、今まで算定していない加算を算定できないか確認したり、現在算定している加算の上位区分を算定できるように体制や取り組み等を見直したりすることが大切です。

支出を減らす

デイサービスの支出を減らすための方法は次の通りです。

定着率を上げる取り組みを行う

職場環境を整備し、定着率を上げることで、採用にかかるコストや新人教育にかかるコストを抑えることができます。
職場環境を整備するには、有給休暇の取得促進、処遇改善加算の適切な活用(賃金アップ)などの取り組みが効果のある取り組みとされています。

経費の支出を見直す

支出を減らすためには、使用しているサービスや消耗品、購入先などの見直しをすることが有効です。
インターネット回線や電話のプラン、介護ソフト、電気の契約、節電・節水器具の導入、消耗品の変更、購入先の変更などを検討し、経費の支出を抑えましょう。

デイサービスの規模による利益率(収支差率)の違い

厚生労働省が公表する『令和5年度介護事業経営実態調査結果』によるとデイサービスの平均の利益率(収支差率)は「2.0%」となっています。

これをデイサービスの事業規模(延べ利用者数)で分類したデータを見ると、事業所の規模が大きくなるほど利益率が高くなっていることがわかりますので、事業所や法人の大規模化を進めるという選択肢も黒字化のための方法のひとつに挙げられます。

事業所の延べ利用者数 利益率(収支差率)
300人以下 -8.9%
301~450人 -4.0%
451~600人 -1.2%
601~750人 3.5%
751~900人 5.0%
901人以上 6.9%

まとめ

この記事では、デイサービスの赤字の割合やその理由、黒字化するためのポイント、事業所の規模による利益率の違いなどを解説してきました。

デイサービスは、赤字の事業所が多い一方で、利用者数をしっかり確保することで利益を得ることができる事業です。
現状、赤字になっている場合は、黒字化するための方針や短期~中期の計画を作成し、事業所全体で改善に取り組みましょう。
ここでご紹介した内容が皆様の参考になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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