訪問介護の多職種連携とは?連携する職種や連携する際のポイントを解説

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本記事は、訪問介護事業所における多職種連携の概要と具体的な連携先、体制構築の方法、連携の事例についてまとめています。

目次

多職種連携とは?

多職種連携(インタープロフェッショナル・ワーク)とは、医療・看護・介護・リハビリテーション・福祉など、異なる専門背景を持つ専門職が、共通の目標(利用者の自立支援やQOLの向上)に向けて、それぞれの専門性を発揮しながら協力・補完し合うプロセスを指します。

訪問介護事業所における多職種連携には、訪問介護員(ホームヘルパー)単独では解決困難な利用者の課題に対し、医療職や他の介護職と情報を共有し、チームとして支援を行う体制の構築などが挙げられます。

業界全体で多職種連携が求められている背景

日本の高齢化率は上昇を続け、団塊の世代が75歳以上となる2025年、さらに高齢者人口がピークを迎える2040年に向けて、介護需要の増大と多様化が予想されています。
これに伴い、単一のサービスや職種だけで利用者の生活を支えることは困難となっており、国は「地域包括ケアシステム」の深化を推進しています。

地域包括ケアシステムとは?

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的とし、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、以下の要素を一体的に提供する体制です。

地域包括ケアシステムの5つの要素

  • 住まい
  • 医療
  • 介護
  • 予防
  • 生活支援

地域包括ケアシステムの5つの要素が機能するためには、各専門職が連携し、包括的な支援体制を構築することが求められています。

訪問介護事業所が多職種連携を進めるメリット

算定できる加算が増える可能性

特に医師やリハビリテーション専門職と連携する体制を構築することで、その後の事業所運営において、加算の算定要件を満たすための協力体制構築などに繋がる可能性があります。

ケアマネジャーや他の事業所・医療機関からの信頼獲得

多職種連携の体制を構築している事業所は、ケアマネジャーや他の介護事業所、医療機関からの信頼を得やすくなります。
「スムーズに連携を取れる事業所」、「信頼できる事業所」という評価を受けることができると、新規利用者の紹介にも繋がるでしょう。

訪問介護の連携先となる職種とそれぞれの役割

訪問介護事業所が連携を行う主な事業所と、そこに所属する専門職の役割は以下の通りです。

連携先・職種 役割
居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員) ケアプランを作成し、サービス調整や医療連携の司令塔です。
デイサービスの生活相談員 デイサービスの契約や通所介護計画書の作成、利用者・家族との相談窓口としての役割を担っています。
ケアマネジャーや他職種との連携なども担当することが多いです。
訪問看護の看護職員 利用者の自宅での医療処置等を担当しています。
医療機関の医師 医学的な管理や治療方針を決定し、急変時の診断や治療、指示等を行っています。
医療機関の医療ソーシャルワーカー(MSW) 医療機関の入退院の調整を行い、入院中の様子や在宅復帰後の留意点の伝達などを担当しています。
訪問リハ・通所リハの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 利用者の自宅におけるリハビリテーションやデイケアでのリハビリテーションを担当しています。
歯科医療機関の歯科医師・歯科衛生士 歯に関する医学的な管理や治療方針を決定し、治療等を行います。
口腔ケアや嚥下機能の評価、その結果、助言や指導なども行っています。

多職種連携の体制を構築する方法

多職種連携の体制を構築するには、医療・看護・介護・リハビリテーション・福祉などの専門職が、共通の目標(利用者の自立支援やQOLの向上)に向けてコミュニケーションをとる機会と手段が必要になります。

コミュニケーションをとる機会は、「サービス担当者会議」や「退院時のカンファレンス」だけではなく、「日々の情報共有」なども含まれます。
そのため、安全に、かつ効率的に情報共有を行う手段を確立することが重要になるでしょう。

日々の情報共有を行う手段としては、例えば、ビジネスチャットアプリなどのコミュニケーションツールを導入することで、関係者間の情報共有がスムーズになります。

在宅介護と医療介護で「連携できる理由」「連携できない理由」をご紹介

「在宅介護の医療介護連携における介護職員の在り方に関する調査研究事業報告書」(平成26年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分))でまとめている、在宅介護と医療介護が連携できる理由・連携がうまくいかない理由の分析結果をご紹介します。

連携ができている理由

連携できていない理由

まとめ

訪問介護における多職種連携は、利用者の自立支援やQOLの向上を目的として取り組むことが求められており、事業所の経営安定やケアの質向上に繋がる可能性があります。

ヘルパーが現場で得た「気づき」を他の専門職に連携するためにも、実現するための情報共有の方法について関係機関で話し合ってみましょう。

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