訪問介護の2021年度介護報酬改定
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2021年(令和3年)度の介護報酬改定では、『感染症や災害への対応力強化』、『地域包括ケアシステムの推進』、『自立支援・重度化防止の取組の推進』、『介護人材の確保・介護現場の革新』、『制度の安定性・持続可能性の確保』から改定率『+0.70%』のプラス改定となりました。
ここでは、訪問介護の介護報酬改定の内容についてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
介護事業の運営に役立つ情報を
定期的にお届けします。
訪問介護の基本報酬の改定
訪問介護費の基本報酬及び「身体介護に引き続き生活援助を行った場合」について以下のように改定が行われています。
基本報酬 | 現行 | 改定後 | 増減 | |
---|---|---|---|---|
身体介護 | 20分未満 | 166 | 167 | +1 |
20分以上30分未満 | 249 | 250 | +1 | |
30分以上1時間未満 | 395 | 396 | +1 | |
1時間以上 | 577 | 579 | +2 | |
以降30分増すごとに | +83 | +84 | +1 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 182 | 183 | +1 |
45分以上 | 224 | 225 | +1 | |
通院等乗降介助 | 98 | 99 | +1 | |
身体介護に引き続き生活援助を行った場合 | 20分から起算して25分を増すごとに | +66 | +67 | +1 |
※令和3年9月30日までの間は、基本報酬及び「身体介護に引き続き生活援助を行った場合」について、所定単位数の千分の千一に相当する単位数を算定します。
訪問介護の加算・減算等の改定
加算・減算等については、以下のように加算や区分の新設、算定要件の変更等の改定が行われています。
特定事業所加算
特定事業所加算について、事業所を適切に評価する観点から、勤続年数が一定期間以上の職員の割合を要件とする特定事業所加算(Ⅴ)が新設されました。
特定事業所加算(Ⅴ):所定単位数の3%を加算
特定事業所加算(Ⅴ)の算定要件
【体制要件】
- 訪問介護員等ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施
- 利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催(テレビ電話等のICTの活用が可能)
- 利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告
- 健康診断等の定期的な実施
- 緊急時等における対応方法の明示
【人材要件】
- 訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること
【併算定】
- (Ⅴ)は、(Ⅲ)との併算定が可能、(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅳ)との併算定は不可となっています。
認知症専門ケア加算
認知症対応力を向上させる観点から、訪問介護においても認知症専門ケア加算が新設されました。
認知症専門ケア加算(Ⅰ):1日につき+3単位
認知症専門ケア加算(Ⅱ):1日につき+4単位
認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件
- 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上
- 認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施
- 当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件
- 認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
- 介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定
生活機能向上連携加算
生活機能向上連携加算(Ⅱ)の、「サービス提供責任者とリハビリテーション専門職等がそれぞれ利用者の自宅を訪問した上で、共同してカンファレンスを行う」という要件に関して、利用者・家族も参加するサービス担当者会議の前後に時間を明確に区分した上で実施するサービス提供責任者及びリハビリテーション専門職等によるカンファレンスでも差し支えないことが明確にされました。
介護職員処遇改善加算
介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件について、『取組の見直し』と『当該年度における取組の実施』の変更がありました。
また、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)と(Ⅴ)の区分について、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて、1年の経過措置期間を設けて廃止することになりました。
※画像 第199回社会保障審議会介護給付費分科会 参考資料1より引用
訪問介護の介護報酬に係るその他の改定
看取り期の対応の評価
訪問介護において看取り期(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者)の利用者にサービスを提供する場合、訪問介護に係る2時間ルール(2時間未満の間隔のサービス提供は所要時間を合算すること)を弾力化し、現行の「それぞれの所要時間を合算して報酬を算定」から、改定後は「所要時間を合算せずにそれぞれの所定単位数を算定」することが可能となりました。
通院等乗降介助の目的地
訪問介護の通院等乗降介助について、居宅が始点または終点となる場合の目的地間の移送も算定することが可能となりました。
例)
- 居宅⇔病院のどちらかの送迎がある場合、病院⇒病院の送迎で算定可
- 病院⇒居宅の送迎がある場合、通所や短期入所の事業所⇒病院の送迎で算定可
訪問介護の人員、設備、運営の基準、その他の改定
事業所と同一の建物に居住する利用者に対するサービス提供
事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービス提供を行う場合には、当該建物に居住する利用者以外に対してもサービス提供を行うように努めることが求められます。
情報公表制度における変更
介護サービス情報公表制度において、従業者の認知症介護実践者研修の受講状況などの認知症に係る事業者の取組状況を公表する項目が設けられました。
最後に
本記事は、作成時点の最新資料を基に作成しています。今後、厚生労働省より解釈通知、各自治体より詳細な通知・資料などが公開されますので、具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報を基にご判断をいただきますようお願い致します。