【訪問介護】ヘルパー向け口腔ケアの基本マニュアル
訪問介護の経営者・管理者様の中には、「口腔ケアの手順を確立させたい」「口腔ケアのマニュアルを作成したいけどポイントがわからない」とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、訪問介護における口腔ケアの基礎知識や口腔ケアの手順やマニュアルを作成する際のポイントを解説します。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
訪問介護における口腔ケアとは?
口腔ケアとは?
口腔ケアとは、ヘルパーが利用者様の歯や入れ歯、歯ぐき、舌など口腔内全体を清潔に保つために行うケアのことです。
口腔ケアの効果
口腔ケアには次のような効果があります。
- 食べる楽しみを得ることから、生活意欲の高揚がはかれる。
- 会話、笑顔がはずみ、社会参加が継続する。
- 自立した生活と日常生活動作の維持、向上がはかれる。
- 低栄養、脱水が予防できる。
- 誤嚥、肺炎、窒息の予防ができる。
- 口腔内の崩壊(むし歯、歯周病、義歯不適合)が止まる。
- 経口摂取の質と量が高まる。
出典:口腔機能向上マニュアル~高齢者が一生おいしく、楽しく、安全な食生活を営むために~(改訂版)
訪問介護における口腔ケアの手順
ここでは基本的な口腔ケアの流れを東京都保健所が発行する『要介護高齢者のための口腔ケアマニュアル』に沿って解説します。
①準備
口腔ケアを開始する前に、以下の4点を準備・実施しておきます。
- 歯ブラシ、コップ、タオルなどの用具
- 利用者様へのお声がけと体調確認
- 安全で疲れにくい姿勢の確保(座って行うことが望ましい)
- 使い捨て手袋などで感染予防
➁うがい
口の中が乾いたままで歯磨きをすると粘膜に傷がつくため、はじめに「うがい」をします。
うがいは、頬やくちびるの閉じ良くするための運動にもなります。
利用者様には左右の頬を膨らませて、しっかり動かしながらうがいをしてもらいましょう。
③入れ歯の清掃
利用者様の入れ歯を外してから磨きます。
入れ歯を外す時は、次の点に注意しましょう。
【外す時の注意点】
- 総入れ歯の場合は、下の入れ歯から外す
- 口を大きく開けすぎないように入れ歯を回転させるようにして外す
- 小さな部分入れ歯の場合は、口の中に誤って落とすと飲み込んでしまう可能性があるため両手で慎重に外す
入れ歯を磨く時は次のことに注意します。
【磨く時の注意点】
- 入れ歯は割れやすいので、洗面器などに水を張って流水下で磨く
- 週に1~2回程度は、歯ブラシで磨いた後に入れ歯洗浄剤を使って洗浄する
- 入れ歯が変形するため熱湯を使わない
- 歯の付け根・入れ歯の縁や裏側・バネの部分が汚れやすいため確認する
④粘膜の清掃
粘膜の掃除にはスポンジブラシや球形ブラシなどを水で濡らして使います。
ブラシは奥から手前の方向に動かし、口の中の汚れや痰などを取り除きます。
歯肉と頬の間、くちびると歯肉の間、上あごなどの汚れが残りやすいので注意しましょう。
口腔粘膜は傷がつきやすいので優しくこすります。
⑤歯の清掃
歯磨きの目的は、うがいでは取り除けない歯の表面に付着している歯垢を取り除くことです。
歯を清掃する際のポイントは次の通りです。
【清掃のポイント】
- 歯ブラシを持っていない手で、顎の固定やくちびる、頬をよけながら磨く
- 歯ブラシを動かす時は力を入れすぎないように注意
- 歯ブラシの毛でハカリを押したときに100gになるくらいが適切な力加減
- 歯ブラシが汚れたら、その都度、水ですすぐ
- 歯と歯の間・歯と歯肉の境目・奥歯の溝は磨き残しが多いため注意する
⑥舌の清掃
舌苔が付いている場合は、舌ブラシ、やわらかい歯ブラシ等を使って、奥から前にやさしくこすりとります。
⑦歯ブラシストレッチ
頬の内側をマッサージすることで、硬くなった筋肉をほぐします。
歯ブラシの背の部分で頬の内側を外へ押し広げながら上下に3回程度動かしましょう。
⑧うがい
清掃が終わったら左右の頬を膨らませてしっかり動かしながらうがいをします。
うがいは口腔体操の効果もあります。
⑨入れ歯の装着
最後に取り外した入れ歯を装着します。
次の点に注意しながら入れ歯を装着します。
【入れ歯を装着する時の注意点】
- 部分入れ歯はばねでしっかり装着できているか確認
- 総入れ歯は下の歯を入れてから、上の入れ歯を装着
- 入れ歯は回転させながら正しい位置にいれる
- 上の総入れ歯は中央部を指で押し上げてはめる
口腔ケアに使用する清掃用具
口腔ケアを実施する際に使用する清掃用具は主に次の通りです。
利用者様の状態によって使い分けましょう。
- 歯ブラシ
- 球形ブラシ
- スポンジブラシ
- 電動歯ブラシ
- 改良歯ブラシ
- 吸引機能付き歯ブラシ
- 歯間ブラシ
- 糸つき楊枝
- 舌ブラシ
- コップ
- 歯磨き粉
- うがい薬
- タオル
- 手袋
口腔ケアのマニュアルを作成する際のポイント
事業所で口腔ケアのマニュアルを作成する際は、次の5つのポイントに注意しましょう。
目的と対象を明確にする
マニュアルの目的や対象を曖昧だと、内容が難しすぎたり、逆に簡単すぎたりする可能性があるので目的や対象を明確にしてから作成を始めます。
例えば、「新人ヘルパー(対象)」が「口腔ケア技術の基礎を身に付ける(目的)」ための口腔ケアマニュアルなどが想定できます。
標準手順を決める
誰が口腔ケアを行っても同じ質で実施できるよう、標準手順を確立させてマニュアルに掲載しましょう。
効率的かつ安全性の高い手順を取り入れることで事故防止にも繋がります。
在籍するヘルパーから現在行っている口腔ケアの方法をヒアリングして参考にするのも良いでしょう。
写真やイラストを入れる
マニュアルには、文章だけでなく写真やイラストなどを入れる工夫をしましょう。
正しい姿勢やブラシの当て方など文章だけだと伝わりにくい情報や、文章が続き単調で読みづらい場面では、写真・イラスト・図解を入れることで理解がスムーズになります。
注意点を明記する
口腔ケアの手順や基本知識だけではなく実際のトラブルを想定した注意点を記載しましょう。
痛みや出血があった場合の対応や、歯科医・歯科衛生士への報告タイミングなどを入れておくと安心です。
実際に起こったケースを事例として掲載するのも良いでしょう。
定期的な見直し
マニュアルは配布して終わりではなく、定期的に内容を見直すことが大切です。
実際のケアで使用した際のフィードバックを収集し、改善点を反映させることで、より安全で実用的なマニュアルへとブラッシュアップしていきましょう。
まとめ
この記事では、訪問介護における口腔ケアの基礎知識や口腔ケアの手順やマニュアルを作成する際のポイントを解説しました。
口腔ケアは利用者様の健康や生活の楽しみをサポートする大切なケアの一つです。
口腔ケアのマニュアルを作成する際は、ぜひ次の5つのポイントを意識し、より安全で実践的なマニュアルを作成してみてください。
- 目的と対象を明確にする
- 標準手順を決める
- 写真やイラストを入れる
- 注意点を明記する
- 定期的な見直し
最後までお読みいただきありがとうございました。
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