訪問介護・ヘルパーの給与計算を効率化する方法とは?給与計算ソフトを活用するポイント

公開日 更新日

訪問介護事業者の皆様の中には、毎月の給与計算が大きな業務負担になっている方もいらっしゃるでしょう。

「給与計算を効率化するためにはどうすればいいの?」や「どんな機能のある給与計算ソフトを導入した方がいいの?」といった悩みをお持ちの経営者・管理者の皆様に向けて、この記事では、訪問介護事業所で給与計算を効率化する方法や、給与計算ソフトを活用するポイントなどについて解説しています。

目次

給与の計算から支給まで流れ

まずはじめに、訪問介護事業所における給与の計算から支給までの流れを確認します。

【給与計算から支給までの流れ】

  1. 給与の支給・控除に影響する情報を確認する。
  2. 労働時間を集計する。給与の支給額を計算する。
  3. 給与の控除額を計算する。
  4. 差引支給額(手取り額)を計算する。
  5. 給与明細を印刷して渡す。
  6. 給与を振り込む

それでは、一つひとつのステップについて、詳しく見ていきましょう。

ステップ①給与の支給・控除に影響する情報を確認する

給与計算をする前に、以下のような給与の支給・控除に影響する情報の変更等を確認します。

ステップ②労働時間を集計する

従業員の労働時間を集計します。

特に登録ヘルパーの労働時間を計算する際には、移動時間と待機時間に注意しましょう。

移動時間の取扱い

使用者が、業務に従事するために必要な移動を命じ、その時間の自由利用が従業員に保障されていないと認められる場合は労働時間に該当するため、賃金を支払う必要があります。

例えば、下記のどちらかの移動時間であって、その時間が通常の移動に必要な時間程度である場合は、労働時間に該当します。

待機時間の取扱い

待機時間は、使用者が急な需要等に対応するために事業所等で待機を命じ、その時間の自由利用が従業員に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するため、賃金を支払う必要があります。

ステップ③給与の支給額を計算する

労働時間から時間外労働時間・所定外労働時間・休日労働時間等を計算し、それらに対する手当等の金額を計算し、総支給額を算出します。

割増賃金の種類と割増率は以下のようになっています。

割増賃金の種類 支払う条件 割増率
時間外
(時間外手当・残業手当)
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき 25%以上
時間外労働が限度時間(1カ月45時間、1年360時間等)を越えたとき 25%以上
時間外労働が1カ月60時間を超えたとき 50%以上
休日
(休日手当)
法定休日(週1日)に勤務させたとき 35%以上
深夜
(深夜手当)
22時から5時までの間に勤務させたとき 25%以上

東京労働局 しっかりマスター割増賃金編を参考に作成

ステップ④給与の控除額を計算する

以下の項目を計算し、給与の控除額を算出します。

また、上記の法定控除以外にも以下のような控除の項目が設けられていることがあります。法定の項目以外のものを給与から控除する際には、労使協定の締結が必要になるため、注意が必要です。

ステップ⑤差引支給額(手取り額)を計算する

総支給額から控除額を差し引いて、差引支給額(手取り額)を計算します。

ステップ⑥給与明細を印刷して渡す

所得税法第231条には、給与を支払う者は給与の支払いを受ける者に、支払明細書を交付しなければならないと規定されています。

そのため、給与を支払う際は、全ての従業員に給与明細を印刷して渡す必要があります。

ただし、給与の支払いを受ける従業員の承諾を得れば、電子メールでのデータ交付やweb閲覧などの電磁的方法で提供することも可能です。

ステップ⑦給与を振り込む

給与を支払う方法については、労働基準法で以下のようなルールが定められています。

  1. 通貨払いの原則
  2. 直接払いの原則
  3. 全額払いの原則
  4. 毎月1回以上定期払いの原則

通貨払いの原則

賃金は現金で支払わなければならず、会社の商品などの現物で払うことはできません。ただし、労働者の同意を得た場合は、銀行振込み等の方法によることができます。

直接払いの原則

賃金は労働者本人に支払わなければなりません。

全額払いの原則

賃金は全額支払わなければならず、「積立金」などの名目で、強制的に賃金の一部を天引きして支払うことは禁止されています。

毎月1回以上定期払いの原則

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならず、支払日を「毎月19〜24日の間」や「毎月第4木曜日」などの変動する期日とすることもできません。

訪問介護の給与計算における注意点とは?

訪問介護事業所において給与計算を行う際は、以下の点に注意しましょう。

キャンセル時の休業手当

労働基準法には、下記の通り、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させた場合、平均賃金の60%以上の金額を「休業手当」として支払わなければならないとされています。

(休業手当)

第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

引用元:労働基準法

例えば、訪問介護の利用者様からキャンセルの連絡があって従業員を休業させる際に、他の利用者宅での勤務を検討するなど、使用者として行うべき最善の努力を尽くしたと認められない場合は、「使用者の責に帰すべき事由」があるものとされます。

処遇改善加算の支給額の調整と確認

介護職員等処遇改善加算を算定している場合、算定要件を満たした賃金改善を行う必要があります。

それぞれの加算の算定要件から、「支給しなければならない金額を超えて支給しているか」、「支給のルールに則って対象者に支給しているか」について確認しましょう。

年末調整

年末調整とは、1年間の給与総額が確定する年末に、従業員ごとにその年に納めるべき税額を正しく把握し、それまでに徴収・納付した税額との過不足を計算することを指しています。

これまでに徴収・納付した税額と納めるべき税額に差がある場合、その差額を従業員の給料から徴収または還付することになります。

年末調整は、所得税法第190条に雇用主の義務として定められています。

訪問介護の給与計算を効率化するための方法とは?

訪問介護事業所の給与計算に係る業務はとても煩雑です。

訪問介護事業所では、一般的に給与計算ソフトを導入して給与計算、社会保険料、雇用保険料、所得税などの計算を行っていますが、それ以外にも給与計算ソフト・システムによって様々な機能があり、活用することで効率化を図ることができるでしょう。

振込データ作成機能

給与計算の結果、従業員ごとの振込の金額が確定したら、インターネットバンキングなどに取り込めるデータを作成する機能があると便利です。

シフト管理・勤怠データとの連携機能

給与計算のベースになるのは、労働時間等の勤怠情報なので、シフト管理や勤怠データと連動して労働時間を計算できると、転記作業や転記ミスが減り、業務を効率化することができます。

年末調整システム

年末調整は、従業員ごとに所得税の計算を行うための書類(生命保険料控除証明書など)を集め、その内容をソフト・システムに入力し、チェックすることになり、とても煩雑です。

提出書類の内容を従業員がWEB上で入力する機能があるシステムを導入することで、入力をスムーズにして、書類の内容の確認、未提出に対する通知・連絡などの業務を効率化することができるでしょう。

まとめ

給与計算を効率化するためには、給与計算ソフトやそれに関連するソフトの機能を活用するという方法をご紹介しました。

もし訪問介護事業所で使っている給与計算ソフトが、「給与計算の機能しかない場合」や「給与ソフトと勤怠管理ソフトが連動していない場合」などは、機能が充実したソフト・システムへの切り替えも検討してみましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【監修者情報】 トリプルグッド社会保険労務士法人

トリプルグッド社会保険労務士法人は、トリプルグッドグループのメンバーファームとして、トリプルグッド税理士法人、トリプルグッド司法書士法人、トリプルグッド行政書士法人、トリプルグッド法律事務所、トリプルグッドウェルスマネジメント株式会社、トリプルグッド株式会社など、さまざまな専門家が連携し、ワンストップでのサービスを提供。介護特化部門を擁し介護事業者の支援に力をいれている。

© SMS Co., Ltd.