介護ICTの導入事例と導入のメリット・デメリット

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人手不足や事務業務の負担軽減のため、多くの介護事業所がICTを導入しています。
そのような中で、導入するために情報を集めてみると「介護のICTってどんな種類があるの?」「ICTを導入したいけれど、何から始めればいいかわからない」と悩まれる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ICT導入を検討している方に向けて、介護のICTの種類、導入のメリット・デメリットと対策、補助金、ICT導入の流れ、導入事例について詳しく説明していきます。

目次

  1. 介護のICTとは?
  2. 介護のICTにはどんな種類がある?
  3. ICT導入のメリット
  4. ICT導入のデメリットと対策
  5. 【2025年版】介護のICTに活用できる補助金・助成金
  6. 介護のICT導入の流れ
  7. 介護のICT導入事例3選
  8. まとめ

1.介護のICTとは?

ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、日本語では「情報通信技術」のことを指します。
ICTという言葉だけ聞くと「難しそう」「苦手」といった印象を受ける方も多いでしょうが、私たちが日常生活で使っているスマートフォンやタブレットなどもICTの一種です。
介護現場においては、「介護記録ソフト」や「インカム」、「見守りセンサー」、「勤怠管理システム」、「シフト作成ソフト」などが代表的なICTツールです。
介護業界では、深刻な人手不足の状況が続いていることから、厚生労働省はICT導入を推進しており、様々な支援事業を行っています。

2.介護のICTにはどんな種類がある?

介護のICTの種類は以下のように大きく3つに分けることができます。

ICTの分類 ICTツール
記録や情報共有を効率化するICT
  • 介護記録ソフト
  • インカム
  • チャットツール
見守り業務の負担を軽減するICT
  • 見守りセンサー
  • 見守りカメラ
バックオフィス業務を効率化するICT
  • 介護請求ソフト
  • 勤怠管理システム
  • 給与計算ソフト
  • シフト作成ソフト

記録や情報共有を効率化するICT

記録や情報共有を効率化するICTとして、「介護記録ソフト」や「インカム」、「チャットツール」などが例として挙げられます。

介護記録ソフト

「介護記録ソフト」は、介護記録をパソコンやタブレットで簡単に作成できるソフトウェアです。
手書きで記録用紙に記入していると、別の用紙にも同じ内容を何度も転記する場面がでると思います。また、利用者の数が増えればその分書類の量も膨大になり、管理・保管が大変になります。
介護記録ソフトを使えば、他の用紙への転記は不要になります。利用者の数が増えても、データなので紙の書類の管理や保管場所、紛失リスクに悩まされることもありません。

インカム

「インカム」は、無線通信機器の一種です。
複数人で同時に通話ができるため、職員全体への連絡や指示が迅速に行えるようになります。
広い施設内で担当者を探し回らなくても、インカムで呼びかけるだけでよくなり、情報伝達のスピードが向上します。
また、ハンズフリーで使えるため、連絡が来るたびに手を止めて応答する必要がなく、業務に集中できます。

チャットツール

「チャットツール」は、テキストベースでメッセージをやり取りできるコミュニケーションツールです。
グループチャット、ファイル共有、ビデオ通話、タスク管理機能など様々な機能を備えたツールが多く、メールや紙ベースよりも早く着実なコミュニケーションが行えるので、業務連絡や情報交換をスムーズにします。
また、送受信したメッセージは履歴として残っていくため、あとで情報を見返したり申し送りの内容を再確認したりするときに便利です。

見守り業務の負担を軽減するICT

見守り業務の負担を軽減するICTとしては、「見守りセンサー」や「見守りカメラ」などが例として挙げられます。

見守りセンサー

「見守りセンサー」は、利用者の健康状態や安全を、音や光、赤外線や重さなどを通して遠隔から確認できる機器です。
利用者の見守りに関わる業務負担を軽減し、職員の夜勤などの身体的・精神的な負担を軽減します。
人感センサー、離床センサー、バイタルセンサーなど様々な種類があり、取り付ける場所も、ベッドや床、窓、扉など様々です。
センサーから得たデータを収集し、異常を検知した場合はアラームを鳴らす機能があるものもあります。

見守りカメラ

「見守りカメラ」は、利用者の健康状態や安全を、カメラを通して遠隔からリアルタイムで確認できる機器です。
利用者の見守りに関わる業務負担を軽減し、職員の夜勤などの身体的・精神的な負担を軽減します。
サポートが必要な場合や危険な状況を察知してすぐに対応できるようになるため、利用者の安全確保や転倒事故防止につながります。
また、記録として映像が残るため、トラブルや問題解決の客観的な証拠として活用が可能です。
ただし、利用者のプライバシーや職員への細やかな配慮が必要な点には注意が必要です。

バックオフィス業務を効率化するICT

バックオフィス業務を効率化するICTとしては、「介護請求ソフト」、「勤怠管理システム」、「給与計算ソフト」、「シフト作成ソフト」などが例として挙げられます。

介護請求ソフト

「介護請求ソフト」は、サービス実施記録等の実績から、介護給付費請求書・明細書や利用者負担金の請求書を作成し、伝送まで行うことができるソフトウェアです。
介護記録ソフトと一体になっているものも多く、記録と請求を一元管理することでより効果的な業務効率化が期待できます。
入力ミスや、基本情報と加算の組み合わせが間違っている場合にエラーで知らせてくれるものもあり、返戻リスクを軽減します。
これらの機能を活用することで、請求業務を大幅に効率化することができます。

勤怠管理システム

「勤怠管理システム」は、従業員の勤務状況を管理するシステムです。
従業員一人ひとりの勤務時間を集計したり、残業時間を把握したり、休暇等の申請・承認の対応などが効率的に行えます。
タイムカードによる管理を行っている場合、従業員の数に応じた枚数のタイムカードをチェックして、不備を確認して訂正する必要があります。
勤怠管理システムを使うと、不備がある場合はエラーで知らせてくれるため、確認や管理の手間が大幅に削減できます。

給与計算ソフト

「給与計算ソフト」は、従業員の給与計算を自動で行うソフトウェアです。
給与明細の作成や給与振込、年末調整などにも対応しているものが一般的です。
勤怠管理システムと連動する給与計算ソフトを導入すると、より給与計算業務を効率化できます。

シフト作成ソフト

「シフト作成ソフト」は、従業員の勤務シフトの作成・管理を効率的に行うためのソフトウェアです。
Excelなどでシフトを作成している場合、様々な条件を考慮してシフトを作成する必要があるため、大幅に時間がかかります。
収集したシフト希望のデータや法的な労働規制などを考慮し、AIが最適なシフトを自動で作成するソフトを使えば、シフト作成の手間を削減でき、管理業務を効率化できます。

3.ICT導入のメリット

ICT導入のメリットは大きく分けて以下の3つに分けられます。

それぞれ詳しく見ていきます。

①生産性の向上

ICTを導入することで得られる直接的な恩恵は、記録や書類作成、情報共有などの業務を効率化できることです。
また、転記ミスや計算ミス、伝達漏れ、連絡ミスなどの人的ミスを減らすことができ、チェック業務も効率化できます。
その結果、利用者様と向き合う時間を増やすことができ、生産性の向上(介護の価値を高めること)につながっています。

②職場環境の改善

ICTを導入することは、職場環境の改善にもつながっています。
ICTを導入することで職員の業務負担が減り、「働きやすい」と感じる職場になるでしょう。
また、ICTの導入によって情報共有がスムーズになると職員間のコミュニケーションも円滑になり、時間や心に余裕が生まれます。

③サービスの質の向上

ICTの導入により、ケアに充てる時間を増やすことは、サービスの質の向上につながっています。
また、研修等の人材育成に充てる時間も増やすことができるので、職員の資質向上を図ることができ、事業所全体のサービスの質の向上につながっています。
それ以外にも、職員が心に余裕を持ち、やりがいを感じて働くことによるサービスの質の向上も期待できます。

4.ICT導入のデメリットと対策

ここまでICTの良い面ばかり見てきましたが、デメリットももちろんあります。
以下のようなデメリットが懸念されますので、対策とあわせて詳しく解説します。

①導入コストがかかる

ICTを導入するということは、パソコン、スマートフォン、タブレットなどのハードウェアや、介護ソフトなどのソフトウェア、Wi-Fi環境やインターネット環境を導入・整備することになります。
そのため、どうしても導入時の初期費用やランニングコストが発生します。

対策としては、補助金や助成金の活用がおすすめです。
厚生労働省はICT導入を推進するため、補助金や助成金の制度を設けています。
補助金・助成金の対象になると導入費用やランニングコストの一部を助成してもらえるので、対象になるかどうかを確認しましょう。

②教育の必要がある

ICTを導入して業務効率化を実現するためには、導入したICTツールを職員に活用してもらう必要があります。
せっかく最新のICTツールを導入したのに、職員に使ってもらえなかったり、使いこなせなかったりすると、良い効果が得られません。

対策としては、ICTツールに関する研修や勉強会の開催や、マニュアルの作成などが考えられます。
特に、使い方やルールなどを記載したマニュアルを作成することで、誰でも同じような使い方ができ、教育コストの削減にもつながります。
職員のなかにはスマートフォンやタブレットなどICTツールの操作に苦手意識が強い方もいるかもしれないので、その場合は丁寧にフォローしましょう。

③情報漏洩リスク

ICTの導入では、ツールをインターネットに接続することになるため、外部からの攻撃に対するリスクが発生します。
また、持ち運べるICTツールは紛失のリスクもあります。

対策として、セキュリティソフトのインストール、運用ルールを定めたマニュアルの作成、スマホやタブレットは遠隔でロックをかけられる設定にする、紛失時の対応マニュアルを作成するなどが考えられます。

5.【2025年版】介護のICTに活用できる補助金・助成金

導入や運用コストの高さから、ICT導入を諦めてしまう方もいらっしゃるかと思います。
そこで活用したいのが、補助金や助成金です。
ここでは、ICT導入の際に活用できる補助金として代表的な「IT導入補助金」をご紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が生産性を上げることを目的とし、ITツール(ソフトウェアやサービス等)を導入する際に活用できる補助金です。

IT導入補助金の類型は、対象経費や補助率などの違いにより、「通常枠」「複数社連携IT導入枠」「インボイス枠(インボイス対応類型、電子取引類型)」「セキュリティ対策推進枠」の4種類に分類されます。
「通常枠」が最も間口が広く、補助率は、中小企業が1/2、最低賃金近傍の事業者が2/3となっています。
補助対象となるITツールは「ソフトウェア 」「オプション」「役務」「ハードウェア 」「サイバーセキュリティー 」の5分類で定義されていて、例えば、介護ソフトなどは「ソフトウェア 」に該当します。

IT導入補助金の累計や活用イメージ、補助率などは以下の図をご参考ください。

IT導入補助金2025の概要

(【画像引用】経済産業省 中小企業庁 サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2025』の概要 令和7年6月 中小企業庁 より)

IT導入補助金に関して詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。

6.介護のICT導入の流れ

介護現場でICTを導入する流れについて見ていきましょう。
厚生労働省の資料によると、導入プロセスは以下の7ステップに分けられます。

Step1:導入計画の作成

まず、ICT導入の目的と大まかなスケジュールを定めた導入計画を立てます。
目的には、「介護ソフトを導入することで手書き記録にかかる時間を減らし、残業時間を削減する」など、なぜICTを導入するのか、できるだけ具体的に記載します。
大まかなスケジュールでは、法人内のどの事業所にどのようなプロセスで導入するかを検討し、各ステップの開始・終了の期限を設定します。
準備から導入までの期間は、一般的に、半年〜1年程度が想定されます。

ICT 機器・ソフトウェアの導入計画(イメージ)

(【画像引用】厚生労働省 介護事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き 図表 15 ICT 機器・ソフトウェアの導入計画(イメージ) より)

Step2:導入するICTの検討

次に、導入計画の目的にそったICTを選定します。
様々な製品があるため、以下のような観点から比較検討しましょう。

操作のしやすさなどは実際に触ってみないとわからないため、無料体験やデモンストレーションを行っている製品があれば、積極的に活用しましょう。

Step3:ICT導入に伴う業務フローの見直し

導入するICTが決まったら、日々の業務がどのように変わるかを具体的に洗い出します。
「誰の」「どの業務が」「どう変わるか」を明確にすることで、導入後の混乱を防ぎます。
導入前後の変化は、1か月の業務フロー図を作成するとよいでしょう。
変化がひと目でわかり、利用者やご家族、他の事業所の職員などの各関係者への影響も把握できます。
また、日々のサービス提供記録などは実施指導で確認される書類でもあるため、記録に関するICT導入を検討する場合は、細心の注意を払いましょう。

訪問介護における業務フロー変化

(【画像引用】厚生労働省 介護事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き 図表 20 訪問介護における業務フロー変化(「日々のサービス内容の記録業務」「介護報酬請求業務」に ICT 機器・ソフトウェアを導入した場合) より)

Step4:ICT導入の際の実施体制を整備

ICT導入をスムーズに進めるため、組織内での実施体制を整え、役割分担を明確にします。
職員に不安や反発を生じさせないためにも、ICT導入の目的やメリットを組織全体で共有し、意識統一を図ることが重要です。
「統括責任者」は法人単位で一人選出して導入するICTの決定や導入計画の作成などの意思決定を行う役割を設定し、「管理責任者(管理者)」は事業所単位で一人選出して研修や各関係者への説明を行う役割を設定するなど、誰が何をするのかを明確にします。

Step5:ICT導入に係る関係者への説明等

体制が整ったら、関係者(職員、利用者や家族、他のサービス事業所など)全員へ説明を行いましょう。
ICT導入の目的、導入する製品について、主な変更点、今後のスケジュールなどを、相手の状況に応じて丁寧に伝えます。
職員に対しては、導入するICTの使い方やマニュアル、利用者や家族への説明の仕方なども説明するとよいでしょう。
利用者や家族に対しては、個人情報の取り扱いについて説明し、サービス利用開始時の重要事項説明書の内容と変更がある場合はその部分についても説明を行い、同意を得ましょう。
他のサービス事業所に対しては、変更のある業務フローや付随して変更となる様式などについて説明を加えるとよいでしょう。
様式の変更など、他のサービス事業所の業務に影響がありそうな場合は、必ず事前に説明を行いましょう。

Step6:ICT導入に関する職員への研修

ICTを購入したら、職員が使いこなせるように研修を実施します。
「現場職員向け」「管理者向け」など、役割に応じて研修を分けて行うと効果的です。
一度の説明で完璧に覚えるのは難しいため、フォローアップ研修や定期的な勉強会の機会を設けて、継続的に支援しましょう。

Step7:ICT導入の効果を検証

導入して終わりではなく、定期的に効果を検証し、次の改善に繋げるため、PDCA(PLAN=計画、DO=実施、CHECK=結果の確認、ACT=結果に応じた次の行動)のサイクルを回すことが重要です。
例えば、介護ソフトを導入した場合は、効果の指標として「記録や請求などの書類作成時間」「残業時間」「1か月の総労働時間とケア提供の時間比率」などを計測しましょう。
定量的な情報に加え、職員の感想などの「生の声」も集めるようにしましょう。
検証結果をグラフなどで可視化して職員に共有すると、モチベーションアップにつながり、さらなる業務改善が期待できるでしょう。

7.介護のICT導入事例3選

実際に介護現場でICTを導入した事例を3つご紹介します。

事例1:W hospitality 様

「カイポケを導入していることが職場選びの条件でした」型破りなケアマネジャーが社内外でICT化を促進

  • ・無駄な作業に時間を割きたくない
  • ・効率よく仕事を進め、担当件数をたくさん持ちたい
  • ・タブレットを活用した効率的な働き方が事業所全体に広まりつつある
  • ・効率的に働き、担当件数を増やそうとする意識の醸成を目指すことができている

詳細はこちらのページをご覧ください。

事例2:ライジングサン株式会社 様

膨大な紙業務がPC1台で完結!業務効率化を叶えるカイポケ活用術

  • ・記録用紙(テレッサ)の確認、実績への転記に膨大な時間がかかる
  • ・年間約35,000枚の記録用紙(利用者1人月70~80枚×12ヶ月×38名)の管理、保管が大変
  • ・机が紙でいっぱいになるほど紙の業務が多く、ファイリングなど煩雑な作業が発生
  • ・スマホ記録はチェックをつけていくだけで簡単、実績へ反映できる
  • ・「データ連携機能」でケアマネへの実績共有が一瞬で終わる
  • ・カイポケを利用している事業所が多く、職員採用時も利用経験のある職員を受け入れやすい

詳細はこちらのページをご覧ください。

事例3:野口株式会社 様

筋トレ特化のデイから事業の多角化。利用者情報の一元管理のためにカイポケを導入!

  • ・新しく訪問看護を始める際に、使っているソフトは対応していなかった
  • ・異なる2サービスを同じ職員で対応したいが、利用者情報の管理方法に悩んでいた
  • ・請求ソフトで利用者からの入金の管理ができない
  • ・通所介護と訪問看護を両方使う利用者の情報を一元管理することでサービスの向上に役立てられた
  • ・利用者への請求の管理が効率化

詳細はこちらのページをご覧ください。

8.まとめ

介護のICTについて詳しく説明してきましたが、いかがでしたか?
介護のICTには、「介護ソフト」や「チャットツール」「勤怠管理システム」などの様々な種類があり、いずれも活用することで、スムーズな情報共有や業務効率化が実現可能です。
生産性の向上や職場環境の改善、サービスの質の向上などのメリットがある反面、導入コストや職員への教育、情報漏洩リスクなどのデメリットがあるため、導入の際はよく吟味して自事業所に最適なICTツールを選定する必要があります。

介護記録や請求業務でお困りの場合、記録・請求まで一気通貫で行える介護ソフト「カイポケ」の導入がオススメです。
コストパフォーマンスの高さと使いやすさから評価を受け、多くの介護事業所にご導入いただいております。
ICT導入の際はぜひご検討ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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