【ケアマネジャー向け】居宅介護支援を立ち上げ・開業するには?
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居宅介護支援事業所を立ち上げ、開業しようと考えているケアマネジャーの皆様は、開業をするか迷う中で、「居宅介護支援事業所を開設したら儲かるのだろうか?」や「居宅介護支援事業所を立ち上げるためにはどうすればいいの?」といった疑問を感じていらっしゃるかもしれません。
この記事では、独立して居宅介護支援事業所の立ち上げ・開業を考えていらっしゃる皆様に向けて、開業の流れや条件、メリット・デメリットについてご紹介していきます。
目次
- 居宅介護支援とは?
- 居宅介護支援事業所の需要と市場の動向
- ケアマネが独立して居宅介護支援事業所を開業したら儲かるの?
- 居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するメリットとデメリット
- 居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するために必要な資格
- 居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するために必要な条件
- 居宅介護支援事業所の立ち上げ・開業の流れ
- 居宅介護支援事業所の立ち上げはカイポケの開業支援サービスがおすすめ
- 居宅介護支援事業所を開業した人の声
- まとめ
居宅介護支援とは?
居宅介護支援は、要介護者が居宅において介護サービス等を適切に利用できるように、ケアマネジメントを行う事業です。
具体的な居宅介護支援の事業内容としては、以下のような事業が挙げられます。
- 要介護の利用者様の心身の状況、置かれている環境、家族の希望等を勘案した居宅サービス計画の作成
- 居宅サービス計画に基づくサービス提供が確保されるよう、サービス事業者との連絡調整
- 介護保険施設等への入所が必要な場合における紹介
居宅介護支援事業所の需要と市場の動向
居宅介護支援事業所の立ち上げを検討している皆様の中には、居宅介護支援事業所に需要がどのくらいあるのかや市場の伸びなどを気にしている方もいらっしゃるかもしれません。
高齢者人口の推移
ご存じの通り、日本では65歳以上の高齢者数は増加しており、2045年には3,945万人に到達することが試算されています。そのため、地域包括ケアシステムの要であるケアマネジャーへの需要はより一層増していくことが考えられます。
(総務省 『統計からみた我が国の高齢者(令和5年9月17日)』より作成)
居宅介護支援の事業所数の推移
居宅介護支援事業所の利用者数は増える一方で、事業所数は減少しており、2024年には36,459事業所となっています。このことから、居宅介護支援事業所の大規模化が進んでいることが伺えます。
(厚生労働省 介護給付費等実態統計より作成)
ケアマネが独立して居宅介護支援事業所を開業したら儲かるの?
居宅介護支援事業所の収入と支出の差を表す収支差率は、厚生労働省の「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、令和4年度決算において平均『5.1%』(黒字)となっています。
令和4年度決算の介護サービス全体の平均収支差率は『3.0%』ですので、居宅介護支援事業所は「十分に儲かる可能性がある事業」であることが伺えます。
(厚生労働省 介護事業経営実態調査・介護事業経営概況調査の結果より作成)
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するメリットとデメリット
独立して居宅介護支援事業所を立ち上げようと考えているケアマネジャーの皆様は、開業に際してどのようなメリットやデメリットがあるのか気になっているかもしれません。ここからは、居宅介護支援事業所を開設する場合のメリットとデメリットをそれぞれご紹介していきます。
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するメリットとは?
独立して居宅介護支援事業所を立ち上げるメリットは以下の点が挙げられます。
- 通所介護(デイサービス)などと比較すると開業費用が安く抑えられる
- 高齢者数・利用者数共に増加傾向であり、成長市場である
- 経営者になることで、自身が実現したいケアマネジメントを実現できる
- 経営者になることで、自身の頑張りが給与に跳ね返ってくる
など
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するデメリットとは?
ケアマネジャーが独立して居宅介護支援事業所を立ち上げるデメリットは以下の点が挙げられます。
- 利用者を獲得するために競争しなくてはいけない
- 3年に1度の介護報酬改定の内容によって経営状況が左右される
- 介護支援専門員が人手不足のため、事業を拡大したくても人材採用が困難な場合がある
など
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するために必要な資格
居宅介護支援事業所を開業するためには『管理者として主任介護支援専門員(主任ケアマネ)を1人以上』配置しなければなりません。
つまり『主任ケアマネの資格があれば、一人で独立し、居宅介護支援事業所を開業することが可能』ということになります。
※居宅介護支援事業所に必要な職種と人数は、『介護支援専門員が常勤で1人以上』、『管理者(主任介護支援専門員)が常勤専従で1人以上』とされていますが、介護支援専門員と管理者は兼務することが認められています。
一人ケアマネとして独立する場合について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)とは?
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、地域包括ケアシステムの構築に向けて、地域課題の把握から社会資源の開発等の地域づくりや地域の介護支援専門員の人材育成等の役割を担える人材としての資格です。
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)になるには
主任介護支援専門員になるには「主任介護支援専門員研修」を修了する必要があり、研修には以下の受講要件があります。
【受講要件(いずれかを満たすこと)】
- 専任の介護支援専門員として通算5年(60カ月)以上従事している
- ケアマネジメントリーダー養成研修修了者または日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、専任の介護支援専門員として通算3年(36カ月)以上従事している
- 主任介護⽀援専⾨員に準ずる者として、現に地域包括⽀援センターに配置されている
- その他、介護⽀援専⾨員の業務に関して⼗分な知識と経験がある、都道府県が適当と認める場合
また、主任介護支援専門員の資格には研修を修了してから『5年間』という有効期間があるため、有効期間の更新をするためには「主任介護支援専門員更新研修」を受講しなければなりません。
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するために必要な条件
居宅介護支援事業所を立ち上げ・開業するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 法人格
- 人員基準
- 設備及び備品等に関する基準
- 運営基準
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①法人格
居宅介護支援事業所は個人では運営することができないため、法人格を取得する必要があります。法人格は、株式会社や合同会社といった『営利法人』と、一般社団法人、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人などの『非営利法人』の2つに大きく分けられます。
上記のいずれの法人格でも居宅介護支援事業所を運営をすることができますが、それぞれ設立にかかる時間や費用、条件などが異なりますので、皆様の状況に合わせた法人格を選択しましょう。
開業時の法人形態について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
②人員基準
居宅介護支援の人員基準には、事業所を開設・運営するにあたって必要な職種や人数が定められており、介護支援専門員(ケアマネジャー)は常勤で1人以上、管理者は常勤専従で1人以上配置することとされています。
職種名 | 配置基準 | 兼務 |
---|---|---|
介護支援専門員 | 常勤で1人以上 | 可 |
管理者※1 | 常勤専従で1人以上 | 可※2 |
※1
2027年(令和9年)3月31日までの間は、2021年(令和3年)3月31日時点で主任介護支援専門員ではない職員が管理者となっている場合、その職員が引き続き管理者として従事することが認められています。ただし、新規で開業する際は、管理者は主任介護支援専門員であることが必要になっています。
※2
「管理者が同じ居宅介護支援事業所の介護支援専門員として従事する場合」と「居宅介護支援事業所の管理業務に支障がない場合」は、他の職務を兼務することが認められています。
居宅介護支援事業所の人員基準について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
③設備及び備品等に関する基準
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」には「設備及び備品等」という項目があり、居宅介護支援事業者が設置しなければならない設備や備品などが定められています。指定申請前までには、この項目に定められている設備・備品を整備する必要があります。
【居宅介護支援の設備・備品の例】
- 事務室
- 相談室
- 会議室
- 鍵付き書庫
- 電話
- FAX
- コピー機
- パソコン
- 洗面台
- トイレ
- 机
- いす
など
居宅介護支援事業所の設備及び備品等に関する基準について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
④運営基準
居宅介護支援の運営基準には、居宅介護支援事業所の業務内容や介護支援専門員の責務、必要な書類などが定められています。
【居宅介護支援の運営基準の項目例】
- 内容及び手続きの説明と同意
- サービス提供拒否の禁止
- サービス提供困難時の対応
- 受給資格等の確認
- 利用料等の受領
- 保険給付の請求のための証明書の交付
- 指定居宅介護支援の基本取扱方針
- 指定居宅介護支援の具体的取扱方針
- 法定代理受領サービスの報告
- 利用者に対する居宅サービス計画書の書類交付
- 利用者に関する市町村への通知
- 管理者の責務
- 運営規程
- 勤務体制の確保等
- 業務継続計画の策定等
- 設備及び備品等
- 従業者の健康管理
- 感染症の予防及びまん延の防止のための措置
- 掲示
- 秘密保持
- 事故発生時の対応
- 虐待の防止
- 会計の区分
- 記録の整備
など
居宅介護支援事業所の運営基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所の立ち上げ・開業の流れ
居宅介護支援事業所は以下のような流れで開業することになります。
【居宅介護支援事業所の立ち上げ・開業の流れ(ステップ)】
- 法人設立
- 事業計画書の作成
- 開業資金の調達
- 物件探し・契約
- 従業員を採用
- 備品等の調達
- 指定申請
- 請求ソフトや各種帳票の手配
- 利用者様の獲得
それでは、一つひとつのステップについて詳しく見ていきましょう。
居宅介護支援の開業までのステップ①法人設立
まず、会社の目的や役員、株主等を決定し、定款、役員の同意書等の登記に必要となる書類を作成します。
書類を準備できたら、管轄の法務局へ書類を提出し、法務局の審査を経て、登記に必要な登録免許税や印紙税を納付すると手続きが完了します。例えば株式会社の設立には、登録免許税や印紙税などを合わせて『20万円』ほどの費用がかかります。
登記手続きにおいて書類の不備等がある場合は、修正して再提出する必要がでてきます。そのため、何度も法務局に行く手間や時間を取れない方は、行政書士などの専門家の助けを受けるとスムーズに手続きを進められるでしょう。
居宅介護支援の開業までのステップ②事業計画書の作成
事業計画書には、どのような事業を行いたいのかという事業方針や、どれくらいの利用者数が期待できるのか、周辺の競合となる事業所、収支の見通しなどの情報を記載します。
事業計画書は、指定申請時や金融機関から融資を受ける際に使う書類です。
事業計画書の書き方について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
居宅介護支援の開業までのステップ③開業資金の調達
居宅介護支援事業所を開業するためには、物件取得費や備品費、法人設立申請費用などにより、一般的に『100万円〜300万円』ほどの開業資金が必要になると言われています。
開業資金の全てをご自身の貯蓄等から捻出できない場合は、自己資金に加えて、金融機関から融資を受けることになります。
居宅介護支援事業所を立ち上げる際は、融資を受ける金融機関として政府系金融機関である「日本政策金融公庫」が選ばれています。
開業資金や調達方法について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
居宅介護支援の開業までのステップ④物件探し・契約
開業するためには事務所が必要になりますので、立地や賃料などを考慮した上で物件を探すことになります。
近年では、インターネット等を使った物件探しが一般的ですが、未公開の物件もあるので、開業予定地域の不動産会社への相談も行い、幅広く情報を集めましょう。
居宅介護支援の開業までのステップ⑤従業員を採用
主任介護支援専門員を採用する場合は、指定申請を行う前に、求人・面接を行い、採用を確定しておく必要があります。
採用の方法には、ハローワーク以外にも、求人雑誌、インターネットの求人広告、人材紹介などもありますので、費用面での負担も考えながら採用活動を進めましょう。
居宅介護支援の開業までのステップ⑥備品等の調達
居宅介護支援事業所では、運営基準の項目に定められた備品や消耗品等を準備する必要があります。
机やいすといったオフィス家具、PC、複合機などの電化製品、衛生管理のための用品なども備えることになるので、納品にどれくらいの時間がかかるのか考慮しながら、計画的に準備を進めていきましょう。
居宅介護支援の開業までのステップ⑦指定申請
居宅介護支援を開業するためには、「指定申請」という行政からの許認可を受けるための手続きを行う必要があります。
指定申請手続きは、開業する事業所が法律に定められた指定基準を満たしていることを証明するための書類等を準備し、提出することを指します。書類の提出は、市町村によって期日が決められていますが、開業希望月の『2か月前の末日』が期日となっている市町村が多いようです。
また、指定申請の前の段階で「事前相談」が必要となるケースもありますので、開業希望月の『3か月前〜6か月前』までに市町村の担当窓口へ一度、開業の相談をしておきましょう。
居宅介護支援の指定申請に必要な書類の一覧
こちらでは例として長野県長野市で居宅介護支援の新規指定申請の際に必要になる書類を一覧でご紹介します。
【居宅介護支援の指定申請書類】
- 指定申請書
- 登記事項証明書又は条例等
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 管理者の経歴書
- 平面図
- 運営規程
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 関係市町村並びに他の保健医療・福祉サービスの提供主体との連携の内容
- 誓約書
- 介護支援専門員一覧
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 加算算定に当たり市が提出を求める添付書類
- 自己点検シート
居宅介護支援の開業までのステップ⑧請求ソフトの手配
居宅介護支援事業では、サービスを提供した対価を国民健康保険団体連合会(以下、国保連)へ請求することになります。開業後の請求業務をスムーズに行うためにも開業前に請求ソフトの導入を進めましょう。
請求ソフトには、ケアプランの作成や給付管理に必要な帳票、請求データ作成などの機能を中心として、様々な機能があります。機能の種類や使いやすさ、料金はソフトによって異なるため、複数の請求ソフトを比較して、導入する請求ソフトを決めましょう。
居宅介護支援事業所の請求ソフトの選び方について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
居宅介護支援の開業までのステップ⑨利用者様の獲得
開業日が決まったら、開業日に向けて、事業所を紹介するパンフレット、名刺、HPなどを作成し、利用者様を獲得できるように営業活動を行いましょう。
居宅介護支援の営業先としては、地域包括支援センターや病院、役所の介護保険係などが考えられます。
居宅介護支援の営業について、
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
居宅介護支援事業所の立ち上げはカイポケの開業支援サービスがおすすめ
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、指定申請などの行政手続き、事業計画書の作成、物件の手配などを行う必要があります。
『カイポケ開業支援』では、行政手続きに関する情報提供や開業スケジュールの作成など、開業に必要な様々なサポートを行っています。
「身近に開業について相談できる人がいない」、「インターネットでの情報収集では分からないことが多い」といった悩みをお持ちの方は、ぜひカイポケ開業支援へご相談ください。
居宅介護支援事業所を開業した人の声
ここでは、カイポケ開業支援を利用して居宅介護支援事業所を開業した皆様の声をご紹介します。
異業種から介護にキャリアチェンジして開業
もともとは飲食の業界で働いていたが、デイサービス2年間、ショートステイ6年間、小規模多機能で10年間それぞれ経験した後に、育ってきた地元に介護という形で貢献したいという思いから「自分で開業をしたい」と思うように。
開業についていろいろ調べていく中でお金が必要なんだなと思い、親族から100万円ほど支援を受けたのと、やっぱりそれだけでは足りないと思い、日本政策金融公庫さんから融資を受けた。
カイポケ開業支援は、対応の早さ、スムーズさが印象に残っている。知りたい時にすぐに話を聞いてくれたことが大きかったし、 何でも揃っている印象だったので「初めての人にはありがたいな」と思った。また、行政書士さんとのチャットのやりとりもかなりスムーズでやりやすさを感じた。
約20年間ケアマネを経験後、独立
約20 年間、ケアマネジャーとして介護業界で働いていた。 様々な経験を積めていると感じていたが、その反面「利用者さんに本当に提供したいサービスを提供できていないのでは」と感じることが増え、次第に独立を意識するようになっていった。
開業するにあたって、同じ市内で独立しているケアマネの方に相談に行ったら、「介護ソフトは導入した方がいいよ」とアドバイスいただいた。その際にカイポケの名前も一つ上がっていたということが初めて知ったきっかけ。
カイポケ開業支援は、はじめに相談してから開業するまで、文字通り一気通貫でサポートしてくれ、とても感謝している。「株式会社と合同会社どちらで設立するのがベストなのか」というような基本的な部分から教えていただいた。
また、具体的なスケジュールの設計に加え、書類のやり取りが非常にスムーズだったし、担当の方が私の目線まで下がって真摯に相談に乗ってくださったので、少しずつ開業することが具体的にイメージができるようになった。
まとめ
ここまで、居宅介護支援事業所を立ち上げるまでの流れや必要な条件、開業するメリット・デメリットなどについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
居宅介護支援事業所の開業を迷っている方は、この記事でご紹介している開設の流れや必要な条件をいま一度確認していただき、事業計画や収支計画を作成しましょう。
居宅介護支援事業所の立ち上げでは、資金調達や指定申請など、やらなければならないことがたくさん出てきます。
そのような時に、開業準備を効率的に行うためにも、ぜひカイポケの開業支援サービスをご利用いただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。