デイサービス(通所介護)に必要な資金と調達方法は?
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通所介護であるデイサービスを新規に立ち上げる際には、どういった費用がかかるか、また、その資金はどうやって調達するのかご存知でしょうか。
新たにデイサービスを開業する皆様のために、必要な費用や資金調達方法などをまとめてみました。
どうぞ参考になさって、今後の開業にお役立てください。
目次
デイサービスの開業にかかる費用
通所介護の開業時に必要な資金は、約1500万円程度が一般的な相場と言われています。内訳の例としては、設備・備品購入費や採用費といった開業資金が約500万円、人件費や家賃などの運転資金が約1,000万円です。
こうした資金は融資などで用意することが一般的ですが、自己資金や親族・知人から借入を行う場合もあります。
人件費
介護保険の報酬を得ることができる通所事業所として自治体からの指定を受けるには、人員基準を満たす必要があります。
人員基準には、定員が10以上のデイの場合と10以下の場合では多少の違いがあり、また職種によっては兼務することも可能なものもありますが、基本的に以下の職員が必要となり、その人件費がかかります。
①
管理者
:常勤の管理者が必要です。
看護師や介護福祉士などの資格は特に必要ではありません。
しかしながら、ご利用者やご家族にとっては、事業所の代表者という認識であり、また、ケアマネージャーとの連絡や来客対応も多くなるので、介護保険についての知識があり、実務経験がある人が求められます。
更に、お金の管理や事務作業、他の職員をまとめて、アドバイスや指導をしていくなど、様々な業務をこなすことが求められるので、一般の介護職員より給料は高くなります。
地域や規模により異なりますが、月収25万円ほどが平均のようです。
②
生活相談員
:ご利用者やご家族との面談、契約書や利用計画書の作成などが主な仕事になります。
社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格を持っている必要がありますが、自治体によってはこれ以外の資格や実務経験があれば条件付きで認められることもあります。
平均の月収は20万円となっています。
③
機能訓練指導員
:PT、ST、OT、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、看護師、准看護師のいずれかの国家資格を持つ人になります。
当然これらの資格を持つ人の給料は高めです。
だいたい25万円くらいが平均ではないでしょうか。
④
看護職員
:平均は20万円ちょっとですが、看護師が不足気味の大都市では高めになります。
病院などに勤務する場合に比べるとかなり低く見えますが、夜勤がなく、残業もほとんどないので、お子さんが小さい看護師の方などに人気のある職場になっています。
⑤
介護職員
:給料が安くても人が集まりやすい地方と、他の求人も多い都市部では相場はもちろん変わってきますが、基本的に、経験と資格が考慮されます。
15〜20万円くらいで、資格手当の付く事業所もあります。
正社員雇用か非正規かなどでも異なってきますが、全職種をそれぞれ1人ずつ雇ったとして、月に最低100万円が人件費としてかかることになります。
最初の運転資金
介護保険事業の仕組み上、サービスを提供して介護保険から報酬を受け取るまでの最初の3カ月は収入がありません。
それでも、その間にかかる光熱費や送迎車のガソリン代や保険料、人件費などは払わなくてはなりません。
また、最初から稼動率が100%にはならないことも想定して、数カ月分の運転資金を用意しておきましょう。
施設費
訪問型のサービスとは異なり、デイサービスは利用者が使うような大規模なスペースを確保する必要があります。
また、ご利用者が安全に送迎車から乗り降りできるような駐車スペースも必須になるので、必然的に広い物件になり家賃も高めです。
更に、集客のしやすさや競合の有無など立地も大切です。
敷金や礼金といった風習は地方により異なるので一概には言えませんが、数カ月分の家賃を敷金として払うので、最初に用意する金額は大きくなります。
駐車場を別に借りる場合には、駐車場代もかかります。
改装費
少人数のデイでは古民家を利用したり、大規模なデイでは、かつて店舗として使われていた施設を利用することもあります。
ただスペースを確保するだけでなく、利用者に対してサービスを行える環境づくりをしなければなりません。
そのためには、バリアフリー化したり壁を打ち抜いて間取りを変更したりと、大規模なリフォームも必要な場合があります。
設備基準から以下の設備が必要になります。
①
事務室
:机や鍵のかかる棚、引き出しや備品などを配置します。
人の出入りに対応しやすいよう、玄関が見渡せる位置にあると利便性も高まります。
②
相談室
:プライバシーに配慮して、相談内容などが外部に聞こえないような場所が必要になります。
パーテーションでも可とされますが、できれば部屋を割り当てる方が好ましいです。
③
静養室
:静養室専用のベッドを設置します。
自治体によっては、複数の人が同時に使用できるように、ベッドは2台設置するよう求める自治体もあります。
④
キッチン
:厨房や調理室など、食事や飲み物を準備できる場所が必要になります。
⑤
機能訓練を行う場所
:食堂及び機能訓練室は、面積が1人あたり3平方メートル以上と定められています。
つまり、定員10名のデイサービスなら、10名3平方メートル=30平方メートル以上の面積が必要です。
収納などを置いて使えない床面積は除いて計算するように指導する自治体もあります。
⑥
トイレ
:車椅子や、介助者が一緒に入ってドアを閉めても、安全に介助が行える広さが必要です。
⑦
浴室
:入浴介助をサービスとして行う場合のみ必要になります。
大規模のデイでは浴室の広さも大きくなります。
手すりを設置し、浴室内での事故防止に努めます。
また、脱衣所のスペースも必要になります。
リフォームに関しては、内容や規模により金額は大きく変わります。
また、リフォームを請け負う業者によっても金額は様々なので、注意して相見積をとりましょう。
車両費
送迎に適した車両のレンタル費、ガソリン代、税金、保険料がかかります。
備品、雑費
機能訓練を行うための器具から、テーブルや椅子、パソコン、コップなどの主だった備品に、トイレットペーパーや手袋などの使い捨ての消耗品もリストアップして計算します。
デイサービスの開業の資金調達方法
付き合いのある銀行や信用金庫から借りる
既に長年懇意にしている金融機関があれば、そういった機関を利用して資金を調達するのも一つの方法です。
金融機関側も口座のこれまでの流れを把握できるので、付き合いのない金融機関よりは、融資してもらえる可能性があります。
日本政策金融公庫から創業融資を受ける
新規開業時は信用が低く、民間の金融機関では融資の許可が下りないことも多いです。
その際には、100%政府が出資している金融機関である「
日本政策金融金庫
」の創業融資を受けるという方法もあります。
融資限度額は7,200万円、そのうち運転資金の限度額は4,800万円となっています。
政府系とはいえ、融資には審査があり、金融機関と同じような書類の提出を求められます。
デイサービス開業の資金調達の注意点
事業計画書や収支計画書の内容が説得力あるものになっているか
金融機関に融資の申し出をする場合には、審査を受ける必要があります。
その際には事業計画書や収支計画書が判断材料の1つとして見られ、返済能力があるかが慎重に判断されます。
数々の融資案件を審査してきた金融機関の担当者が納得できるようなレベルの事業計画書や収支計画書を作ることが大切です。
場合によってはプロの助けを借りながら、これらの書類を作成することも検討しましょう。
最初の2カ月は報酬が満額支給されない
例えば4月に事業所をオープンした場合、4月の入金はゼロで、5月に利用者から1割分の利用料が支払われますが、残り9割の介護給付負担分は6月末に入金されます。
人件費や家賃、リース代などはこの間にもかかってきます。
不測の事態に備える
さらに、6月の時点で収益を得られるのは集客が上手くいった場合です。
不測の事態にも対応できるような資金調達を心がけてください。
つまり、3〜6カ月ほどの運転資金として1,000万円くらいは確保しておいた方が良いでしょう。
まとめ
通所介護の開業にあたっては、特に最初の施設費とそのリフォーム代が高額になることが予想されます。
これにはかなりの幅があり、ケースによりけりなので、平均いくらかかるということが言えませんが、人件費や車両費、備品代はおおまかな金額が計算できます。
ふさわしい物件探しと、融資のための事業計画書と収支計画書が、開業のキーポイントになるのではないでしょうか。
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