【開業】通所介護(デイサービス)の開設・設立
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デイサービスの開業・立ち上げを検討している皆様の中には、「デイサービスの開業ってどうやるの?」や「通所介護事業所を開設するためにはどのくらい資金がかかるの?」などといったお悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。 この記事では、デイサービス(通所介護)を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、デイサービスの市場の動向などについてご紹介していきます。
目次
- デイサービス(通所介護)とは?
- デイサービス(通所介護)の需要と市場の動向
- デイサービス(通所介護)を立ち上げ・開業したら儲かるの?
- デイサービス(通所介護)の収益構造
- デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げに必要な条件・資格
- デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げに必要な資金
- デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げの流れ
- デイサービスの開業をカイポケがお手伝いします
- デイサービス(通所介護)を開業した人の声
- まとめ
デイサービス(通所介護)とは?
デイサービス(通所介護)とは、要介護1以上の利用者様に施設へ通ってもらい、入浴・排せつ・食事等の介護や、生活等に関する相談および助言・健康状態の確認、機能訓練などを行うサービス種別です。利用者様の社会的孤立感の解消・心身の機能維持、ご家族の身体的・精神的負担を軽減することを目的としています。 2016年度からは定員18人以下のデイサービスは地域密着型通所介護として位置付けられ、市町村が指定を行うことになっています。
デイサービス(通所介護)の需要と市場の動向
デイサービスを開業しようと考えている方は、デイサービスの需要や市場の動向が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。 デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の受給者数(利用者数)は、2013年から毎年増加を続けていましたが、2017年ごろから約150万人で横ばいとなっています。
(厚生労働省「介護給付費等実態統計(旧:調査)各年4月審査分」より作成)
また、デイサービス(通所介護・地域密着型通所介護)の請求事業所数も2017年以降横ばいとなっていますが、定員が18人以下の地域密着型通所介護事業所は減少傾向、定員が19人以上の通所介護事業所は増加傾向にあります。
(厚生労働省「介護給付費等実態統計(旧:調査)各年4月審査分」より作成)
デイサービス(通所介護)を立ち上げ・開業したら儲かるの?
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、収入と支出の差を表す収支差率(税引前収支差率・コロナ補助金を含む)の全国平均は、2021年度の決算で通所介護が「1%」、地域密着型通所介護が「3.4%」となっています。
通所介護 | 地域密着型通所介護 | |
---|---|---|
収支差率の平均(2021年度決算) | 1% | 3.4% |
ただし、以下のグラフのように、収支差率が0%を上回っている黒字の事業所も多く、2021(令和3)年度の決算だと収支差率が「0~5%」、「5%~10%」の事業所の割合が大きいことから、通所介護は『十分に儲かる可能性がある事業』だと言えるでしょう。
(出典:厚生労働省 令和4年度介護事業経営概況調査)
デイサービス(通所介護)の収益構造
デイサービス(通所介護)は、サービス提供を行い、対価として得る介護報酬が主な収入になります。 介護報酬の構造は、
- 基本報酬
- 加算・減算
に分類することができます。 基本報酬に各種加算・減算の項目を加減した介護報酬の総額を算定し、負担割合に応じて利用者様と国保連(国民健康保険団体連合会)に対して請求を行うことになります。
デイサービスの基本報酬は以下の図のように、「提供時間」と「要介護度」、「事業所の規模」によって金額(単位数)が変わります。
例えば、「提供時間が4時間以上5時間未満」「要介護度1」「通常規模型」の場合は386単位、「提供時間が4時間以上5時間未満」「要介護度4」「通常規模型」の場合は557単位となります。 このように、同じ提供時間数でも要介護度が高くなるほど単位数が多くなります。 また、事業所の規模は、通常規模、大規模Ⅰ、大規模Ⅱで基本報酬が設定され、規模が大きくなるほど低い単位数が設定されています。
デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げに必要な条件・資格
デイサービス(通所介護)の経営者になるために必要な資格はありません。
ただし、デイサービスを開設・運営するためには、法人であること、かつ指定基準を満たしていることが必要になります。
- 法人格を有していること
- 人員基準を満たしていること
- 設備基準を満たしていること
- 運営基準を満たしていること
それぞれ詳しく見ていきましょう。
条件①法人格を有していること
デイサービスは個人事業主では運営することができないため、法人として登記する必要があります。 法人格は、株式会社や合同会社といった『営利法人』と、一般社団法人、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人などの『非営利法人』の2つに大きく分けられます。 上記のいずれの法人格でもデイサービスを運営をすることができますが、それぞれ設立にかかる時間や費用、条件などが異なりますので、皆様の状況に合わせた法人格を選択しましょう。 開業時の法人形態について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
条件②人員基準を満たしていること
デイサービス(通所介護)の人員基準には、デイサービスを開設・運営するにあたって必要な職種や人数が定められています。例えば、介護職員は利用者数が15人までは1人以上、利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上必要です。そのほかに、生活相談員や看護職員、機能訓練指導員等の職種を配置します。 開業前に行う指定申請では、従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表等を通して、人員基準が満たされているかどうか確認されることになります。
職種名 | 配置基準 | 資格要件 |
---|---|---|
管理者 | 1人 | 特になし |
生活相談員 | 1人以上 | 社会福祉士 精神保健福祉士 社会福祉主事 |
看護職員 | 1人以上 | 看護師 准看護師 |
介護職員 | 利用者数が15人までは1人以上 利用者数が16人以上は「(利用者数-15人)÷5+1」以上 |
特になし |
機能訓練指導員 | 1人以上 | 理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 看護師 准看護師 柔道整復師 あん摩マッサージ指圧師 はり師・きゅう師(※実務経験の要件あり) |
これらの職種は兼務が認められているものもあります。デイサービス(通所介護)の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
条件③設備基準を満たしていること
デイサービス(通所介護)の設備基準には、デイサービスを開設・運営するにあたって必要な以下のような設備や備品が定められています。 開業前に行う指定申請では、設備・備品等一覧表や建物の平面図等を通して、設備基準が満たされているかどうか確認されることになります。
【デイサービスの設備基準に定められた設備・備品】
- 食堂
- 機能訓練室
- 消火設備
- 静養室
- 相談室
- 事務室
- その他の設備(洗面台、トイレ、厨房など)
条件④運営基準を満たしていること
デイサービス(通所介護)の運営基準には、事業所を適切に運営するための基準が定められています。ここでは主な運営基準の項目をいくつかご紹介します。
- 第8条 内容及び手続の説明及び同意
- 第9条 提供拒否の禁止
- 第10条 サービス提供困難時の対応
- 第11条 受給資格等の確認
- 第12条 要介護認定の申請に係る援助
- 第13条 心身の状況等の把握
- 第14条 居宅介護支援事業者等との連携
- 第15条 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
- 第16条 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
- 第17条 居宅サービス計画等の変更の援助
- 第19条 サービスの提供の記録
- 第96条 利用料等の受領
- 第21条 保険給付の請求のための証明書の交付
- 第97条 指定通所介護の基本取扱方針
- 第98条 指定通所介護の具体的取扱方針
- 第99条 通所介護計画の作成
- 第26条 利用者に関する市町村への通知
- 第27条 緊急時等の対応
- 第52条 管理者の責務
- 第100条 運営規程
- 第101条 勤務体制の確保等
- 第30条の2 業務継続計画の策定等
- 第102条 定員の遵守
- 第103条 非常災害対策
など
デイサービスの運営基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げに必要な資金
デイサービスを開業するために必要な資金は、約1500万円が相場と言われています。 内訳の例としては、設備・備品購入費や採用費といった開業時の資金が約500万円、人件費や家賃などの運転資金が約1,000万円です。こうした開業資金を自己資金のみで用意するのは難しいため、金融機関からの借入などを行い、資金調達をする方が多いようです。
開業資金の内訳 |
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運転資金の内訳 |
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デイサービス(通所介護)の開業・立ち上げの流れ
デイサービス(通所介護)の開設は以下のようなステップで進めます。
【デイサービス(通所介護)を立ち上げるステップ】 1. 法人設立 2. 事業計画書の作成 3. 開業資金の調達 4. 物件探し・契約 5. 従業員を採用 6. 物件のリフォーム 7. 備品等の調達 8. 指定申請 9. 請求ソフトの手配 10. 利用者様の獲得
それでは、一つひとつのステップについて詳しく見ていきましょう。
ステップ①法人設立
まず、会社の目的や役員、株主等を決定し、定款、役員の同意書等の登記に必要となる書類を作成します。 書類を準備できたら、管轄の法務局へ書類を提出し、法務局の審査を経て、登記に必要な登録免許税や印紙税を納付すると手続きが完了します。例えば株式会社の設立には、登録免許税や印紙税などを合わせて『20万円』ほどの費用がかかります。 登記手続きにおいて書類の不備等がある場合は、修正して再提出する必要がでてきます。そのため、何度も法務局に行く時間を取れない方は、行政書士などの専門家の支援を受けるとスムーズに手続きを進められるでしょう。
>ステップ②事業計画書の作成
事業計画書は、指定申請時や金融機関から融資を受ける際に使う書類です。事業計画書には、どのような事業を行いたいのかという事業方針や、どれくらいの利用者数が期待できるのか、周辺の競合となる事業所、収支の見通しなどの情報を記載します。 事業計画書の書き方について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ステップ③開業資金の調達
デイサービスの開業には、物件の契約料、内装工事費、法人設立申請費用、運転資金などにより、一般的に『1,500万円』ほどの開業資金が必要になると言われています。しかし、そのすべてをご自身の貯蓄等から捻出できる人は少ないでしょう。 開業資金の全てをご自身の貯蓄等から捻出できない場合は、自己資金に加えて、金融機関から融資を受ける方が多いです。 デイサービスを立ち上げる際は、融資を受ける金融機関として政府系金融機関である「日本政策金融公庫」が選ばれています。
デイサービスの資金調達方法について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ステップ④物件探し・契約
デイサービスでは、利用定員に対する面積や区画など設備基準を満たすことができる物件を手配しなくてはいけません。また、設備基準以外にも、立地や賃料、コンセプトを実現できるかどうかといった観点から、物件を探すことになります。 近年では、インターネット等を使った物件探しが一般的ですが、未公開の物件もあるので、開業予定地域の不動産会社への相談も行い、幅広く情報を集めましょう。
ステップ⑤従業員を採用
通所介護事業者として「指定」を受けるためには、人員基準を満たす必要があります。そのため、指定申請を行う前に、求人を行い、面接を経て、従業員を採用することになります。 デイサービスで必要になる職員の人数は利用者数によって変わってきますから、事業所の定員から採用しなくてはいけない人数の目安を決めましょう。 採用の方法には、ハローワーク以外にも、求人雑誌、インターネットの求人広告、人材紹介などもありますので、費用面での負担も考えながら採用活動を進めることになります。
デイサービスの従業員の採用について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ステップ⑥物件のリフォーム
デイサービスを運営するためには、機能訓練室や相談室のスペースの分離、浴室・トイレ・洗面所の設置・増設など物件をリフォームする必要があります。また、設備等がそのまま使用できる物件であったとしても、壁紙の張替え、電源の設置など多少のリフォームは行うことを想定しておきましょう。
ステップ⑦備品等の調達
デイサービスでは設備基準に定められた備品や消耗品等を準備する必要があります。 オフィスデスクやオフィスチェアといったオフィス家具、PC、複合機などの事務機器、衛生管理のための用品なども備えることになるので、納品にどれくらいの時間がかかるのか考慮しながら、計画的に準備を進めていきましょう。
ステップ⑧指定申請
デイサービスを開業するためには、「指定申請」という行政から許認可を受ける手続きを行う必要があります。 指定申請手続きは、開業する事業所が法律に定められた指定基準を満たしていることを証明するための書類等を準備し、提出することを指します。書類の提出日は指定権者(都道府県・市)によって期日が決められていますが、開業希望月の『2か月前の末日』が期日となっているところが多いようです。 また、指定申請の前の段階で「事前相談」が必要となるケースもありますので、開業希望月の『3か月前〜6か月前』までに指定権者の担当窓口へ一度、開業の相談をしておきましょう。
デイサービスの指定申請に必要な書類の一覧
こちらではデイサービスを開業する際に必要な書類の例として、東京都で通所介護の新規指定申請の際に必要になる書類を一覧でご紹介します。
【通所介護の指定申請書類の例】
- 指定(許可)申請書(第1号様式)
- 通所介護事業所の指定に係る記載事項(付表6)
- 申請者の登記簿謄本又は条例等
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表(参考様式1)
- ①就業規則(※)の写し、②資格証の写し、③雇用契約書の写し又は誓約書の3点(※表紙、常勤の勤務時間及び改正日時がわかるページのみ)
- 事業所の平面図・建築図面(参考様式2)
- 当該建物に係る登記簿または賃貸借契約書及び関係法令確認書(参考様式5-2)
- 外観及び内部の様子がわかる写真
- 運営規程(料金表含む)
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要(参考様式3)
- 誓約書及び誓約書別紙(参考様式4)
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書(加算様式6-1)
- 介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算算定に係る体制等に関する届出書(加算様式6-3)(算定する場合のみ提出)
- 老人居宅生活支援事業開始届又は老人デイサービスセンター等設置届、老人福祉法上のチェックリスト
ステップ⑨請求ソフトの手配
通所介護事業では、サービスを提供した対価を国保連と利用者様へ請求することになります。開業後の請求業務をスムーズに行うためにも開業前に請求ソフトの導入を進めましょう。 請求ソフトには、サービス提供記録の作成や請求データ作成、請求書発行などの機能を中心として、様々な機能があります。機能の種類や料金等はソフトによって異なるため、複数の請求ソフトを比較して、導入する請求ソフトを決めましょう。
デイサービスソフトの選び方について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ステップ⑩利用者様の獲得
開業日が決まったら、開業日に向けて、事業所を紹介するパンフレット、名刺、HPなどを作成し、利用者様を獲得できるように営業活動を行いましょう。デイサービスでは開業日前に地域のケアマネジャーなどを招いて内覧会を行う場合も多いようです。 デイサービスの営業先としては、居宅介護支援事業所、病院、地域包括支援センター、地域の住民(老人クラブ、町内会等)等が考えられます。
デイサービスの営業について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
デイサービスの開業をカイポケがお手伝いします
デイサービス(通所介護)の開業には、半年から1年ほどの準備期間が必要になります。そして、この開業準備期間に、法人設立や指定申請といった行政手続き、物件・備品等の手配、職員の採用などを行います。
『カイポケ開業支援』では、行政手続きに関する情報提供や開業スケジュールの作成など、開業に必要な様々なサポートを無料で提供しています。 「身近に開業について相談できる人がいない」、「インターネットでの情報収集では分からないことが多い」といった悩みをお持ちの方は、ぜひカイポケ開業支援へご相談ください。
デイサービス(通所介護)を開業した人の声
ここでは、カイポケ開業支援を利用してデイサービスを開業した皆様の声をご紹介します。
仲間と3人でデイサービスを開業
もともと働いていた事業所(ショートステイ)は利用者さんの本当の気持ちに対して臨機応変に応えるようなサービスは提供しにくかった印象で、自分で事業所を作ることができれば、利用者さんの立場になって痒い所に手が届くようなサービスができるよなあと思い始めたのが開業のきっかけ。 資金面が心配で現実的に1人でやるのは難しいと感じていたところ、「デイサービスを一緒にやらないか」と声をかけてくれた方がいて、3人で合同会社を立ち上げた。 「何かのサポートを受けないと自分の力じゃ開業準備は難しいだろう」と思っていたので、カイポケ開業支援を選んだ。カイポケ開業支援を使ってみて、約束した日は1秒も間違わず電話をいただいたり、右も左もわからなく悩んでいた時にすっごく丁寧に説明してくれたりと、すごく助かった。
約10年間介護業界に携わった後にデイサービスを開業
10年程度、介護業界に携わってきたが、「こうしたほうがいいのでは」という想いを上司に伝えるも、最後は上司の判断で物事が決まってしまう環境に次第に疑問を感じるようになり、開業したいという気持ちが強くなっていった。 カイポケ開業支援は、開業初期はお金があまりないので無料でサポートしてくれるというのが非常に大きかった。担当してくださったサポートの方が丁寧に教えてくれた印象が非常に強く、「書類の準備が大変かな」と思っていたが、事務的な面もしっかりサポートいただけたので、不安感は一気になくなった。
まとめ
ここまで、デイサービス(通所介護)を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、デイサービスの市場の動向などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。 デイサービスを開業するためには、物件探しから資金調達、従業員の採用までやることがたくさんあり、時間もかかりますから、まずは開業に向けてやらなければならないことをリストアップして優先順位をつけ、スケジュールを立てるところから始めてみるのはいかがでしょうか。カイポケ開業支援では開業スケジュールの作成のお手伝いも行っておりますので、ぜひお問い合わせください。 最後までお読みいただきありがとうございました。