地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の運営基準とは?



地域密着型通所介護事業所の開業を検討している皆様の中には、「地域密着型通所介護の運営基準はどんな内容?」や「開業前から準備しておかなきゃいけない運営基準にかかわる項目ってあるの?」、「運営基準を守らないとどうなるの?」などといった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の運営基準の項目や指定基準、運営基準を守らなかった場合にどうなるのかなどについてご紹介していきます。

地域密着 運営基準

目次

地域密着型通所介護とは?

地域密着型通所介護(小規模デイサービス)とは、要介護1以上の利用者様に施設に通ってもらい、食事、入浴、排泄などの介護や生活等に関する相談および助言、機能訓練などを行う介護サービスです。
2016年度より、利用定員が18人以下の小規模デイサービスは地域密着型通所介護と位置付けられ、市町村が指定を行うことになりました。

地域密着型通所介護(デイサービス)の運営基準とは?

地域密着型通所介護の運営基準には、「サービスの提供拒否の禁止」や「管理者の責務」、「運営規程の策定」など、地域密着型通所介護事業所を開業・運営する上で守らなければならないルールが定められています。
運営基準を満たさずに事業所運営を行うと、定期的に実施される運営指導(実地指導)の際に指摘を受け、最悪の場合は指定の取消しにつながる恐れもありますので、遵守しなければなりません。

地域密着型通所介護の運営基準一覧

地域密着型通所介護の運営基準には、以下の項目が定められています。

【地域密着型通所介護の運営基準一覧】

  • 第3条の7 内容及び手続の説明及び同意
  • 第3条の8 提供拒否の禁止
  • 第3条の9 サービス提供困難時の対応
  • 第3条の10 受給資格等の確認
  • 第3条の11 要介護認定の申請に係る援助
  • 第23条 心身の状況等の把握
  • 第3条の13 居宅介護支援事業者等との連携
  • 第3条の14 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  • 第3条の15 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
  • 第3条の16 居宅サービス計画等の変更の援助
  • 第3条の18 サービスの提供の記録
  • 第24条 利用料等の受領
  • 第3条の20 保険給付の請求のための証明書の交付
  • 第25条 指定地域密着型通所介護の基本取扱方針
  • 第26条 指定地域密着型通所介護の具体的取扱方針
  • 第27条 地域密着型通所介護計画の作成
  • 第3条の26 利用者に関する市町村への通知
  • 第12条 緊急時等の対応
  • 第28条 管理者の責務
  • 第29条 運営規程
  • 第30条 勤務体制の確保等
  • 第3条の30の2 業務継続計画の策定等
  • 第31条 定員の遵守
  • 第32条 非常災害対策
  • 第33条 衛生管理等
  • 第3条の32 掲示
  • 第3条の33 秘密保持等
  • 第3条の34 広告
  • 第3条の35 指定居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  • 第3条の36 苦情処理
  • 第34条 地域との連携等
  • 第35条 事故発生時の対応
  • 第3条の38の2 虐待の防止
  • 第3条の39 会計の区分
  • 第36条 記録の整備

地域密着型通所介護(デイサービス)の指定基準とは?

地域密着型通所介護の指定基準とは、指定権者(市町村)により地域密着型通所介護事業所として指定を受けるために遵守しなければならない厚生労働省令で、「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」に定められています。
指定基準には、運営基準のほかに人員基準と設備基準があります。

地域密着型通所介護(デイサービス)の人員基準とは?

地域密着型通所介護の人員基準は、管理者が常勤専従で1人、生活相談員が1人以上、看護職員が1人以上、介護職員が利用者様の数が15人までは1人以上、利用者様の数が15人を超す場合は1人に利用者様の数が15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上、機能訓練指導員が1人以上という人員配置が定められています。
指定申請前までには人員基準を満たしている必要があるため、計画的に人材採用を進めていく必要があります。

職種 配置基準 資格要件
管理者 常勤専従で1人 特になし
生活相談員 専従で提供日ごとの勤務延時間数をサービス提供時間数で割った数が1人以上 社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士、それらと同等以上の能力を有すると認められる者
看護職員 単位ごとに専従で1人以上 看護師もしくは准看護師
介護職員 ①サービス提供時間に応じて専従で次の数以上
  • 利用者数が15人まで:1人以上
  • 利用者数が15人超す場合:1人+15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上
②常時1人以上となるように配置
特になし
機能訓練指導員 1人以上 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師(※)

※ただし、はり師及びきゅう師については、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6カ月以上機能訓練指導に従事した経験を有する者に限るとされています。

地域密着型通所介護事業所の人員基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

地域密着型通所介護(デイサービス)の設備基準とは?

地域密着型通所介護の設備基準には、食堂や機能訓練室などの最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。指定申請時には、事業所の平面図等の提出が求められますので、指定申請前までには設備や備品をそろえておく必要があります。

【地域密着型通所介護で必要な設備・備品の例】

  • 食堂
  • 機能訓練室
  • 相談室
  • 事務室
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
  • その他地域密着型通所介護の提供に必要な設備・備品
    など

地域密着型通所介護(デイサービス)の運営基準で開業準備にかかわる項目

ここからは、地域密着型通所介護の運営基準の中でも、開業前に準備しておく必要がある以下の項目についてご紹介していきます。
【地域密着型通所介(デイサービス)の運営基準で開業準備にかかわる項目】

  • 第3条の7 内容及び手続の説明及び同意
  • 第29条 運営規程
  • 第3条の30の2 業務継続計画の策定等
  • 第3条の34 広告
  • 第3条の35 指定居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  • 第3条の36 苦情処理

第3条の7 内容及び手続の説明及び同意

地域密着型通所介護サービスの提供を開始するにあたっては、事業者と利用者様との間で契約を交わすことになります。また、契約前には重要事項説明書やパンフレットなどを用いて、利用者様またはご家族に対してサービスの内容等を説明する必要があります。
ですから、開業前に地域密着型通所介護サービスに係る契約書や重要事項説明書を準備しておきましょう。
地域密着型通所介護の契約書や重要事項説明書について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

(内容及び手続の説明及び同意)
第三条の七 指定地域密着型通所介護事業者は、指定地域密着型通所介護の提供の開始に際し、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、第二十九条に規定する運営規程の概要、地域密着型通所介護従業者の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を得なければならない。
2 指定地域密着型通所介護事業者は、利用申込者又はその家族からの申出があった場合には、前項の規定による文書の交付に代えて、第五項で定めるところにより、当該利用申込者又はその家族の承諾を得て、当該文書に記すべき重要事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下この条において「電磁的方法」という。)により提供することができる。この場合において、当該指定地域密着型通所介護事業者は、当該文書を交付したものとみなす。
一 電子情報処理組織を使用する方法のうちイ又はロに掲げるもの
イ 指定地域密着型通所介護事業者の使用に係る電子計算機と利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを接続する電気通信回線を通じて送信し、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法
ロ 指定地域密着型通所介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録された前項に規定する重要事項を電気通信回線を通じて利用申込者又はその家族の閲覧に供し、当該利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該重要事項を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、指定地域密着型通所介護事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルにその旨を記録する方法)
二 磁気ディスク、シー・ディー・ロムその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに前項に規定する重要事項を記録したものを交付する方法
3 前項に掲げる方法は、利用申込者又はその家族がファイルへの記録を出力することにより文書を作成することができるものでなければならない。
4 第二項第一号の「電子情報処理組織」とは、指定地域密着型通所介護事業者の使用に係る電子計算機と、利用申込者又はその家族の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。
5 指定地域密着型通所介護事業者は、第二項の規定により第一項に規定する重要事項を提供しようとするときは、あらかじめ、当該利用申込者又はその家族に対し、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
一 第二項各号に規定する方法のうち指定地域密着型通所介護事業者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式
6 前項の規定による承諾を得た指定地域密着型通所介護事業者は、当該利用申込者又はその家族から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があった場合は、当該利用申込者又はその家族に対し、第一項に規定する重要事項の提供を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該利用申込者又はその家族が再び前項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

第29条 運営規程

地域密着型通所介護は事業所ごとに、事業の目的及び運営の方針、サービス利用にあたっての留意事項などを盛り込んだ運営規程を定める必要があります。
この運営規程は指定申請時に提出を求められるので、前もって準備しておきましょう。

(運営規程)
第二十九条 指定地域密着型通所介護事業者は、指定地域密着型通所介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下この節において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。
一 事業の目的及び運営の方針
二 従業者の職種、員数及び職務の内容
三 営業日及び営業時間
四 指定地域密着型通所介護の利用定員
五 指定地域密着型通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
六 通常の事業の実施地域
七 サービス利用に当たっての留意事項
八 緊急時等における対応方法
九 非常災害対策
十 虐待の防止のための措置に関する事項
十一 その他運営に関する重要事項
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

第3条の30の2 業務継続計画の策定等

地域密着型通所介護事業者は、業務継続計画(BCP)を策定する義務があります。BCPの策定には多くの時間を要しますので、開業予定日に間に合うように策定を進めていきましょう。

(業務継続計画の策定等)
第三条の三十の二 指定地域密着型通所介護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定地域密着型通所介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 指定地域密着型通所介護事業者は、地域密着型通所介護従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 指定地域密着型通所介護事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

第3条の34 広告

地域密着型通所介護事業者が広告を行う場合は、その内容が虚偽または誇大なものとならないように留意しなければなりません。開業時に広告を行う場面もあるかと思いますが、その広告が虚偽や誇大とみなされないように配慮する必要があります。

(広告)
第三条の三十四 指定地域密着型通所介護事業者は、指定地域密着型通所介護事業所について広告をする場合においては、その内容が虚偽又は誇大なものとしてはならない。
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

第3条の35 指定居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止

居宅介護支援事業者や居宅介護支援事業所のケアマネジャーに対して、金品その他の財産上の利益の供与は禁止されています。
地域密着型通所介護事業所の開業時にケアマネジャーへ営業を行うことになりますが、営業時の手土産を渡すなどの行為をしないように気を付けましょう。

(指定居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止)
第三条の三十五 指定地域密着型通所介護事業者は、指定居宅介護支援事業者又はその従業者に対し、利用者に特定の事業者によるサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならない。
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

第3条の36 苦情処理

地域密着型通所介護事業者は、利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じる必要があります。
指定基準の解釈通知によると、ここでいう「必要な措置」とは、相談窓口、苦情処理の体制および手順等、事業所における苦情を処理するために講ずる措置の概要について明らかにすること等とされています。
ですから、開業前にはこれらの事項を網羅した苦情対応マニュアルの作成をする必要があります。デイサービスで作成が必要なマニュアルについて、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

(苦情処理)
第三条の三十六 指定地域密着型通所介護事業者は、提供した指定地域密着型通所介護に係る利用者及びその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならない。
2 指定地域密着型通所介護事業者は、前項の苦情を受け付けた場合には、当該苦情の内容等を記録しなければならない。
3 指定地域密着型通所介護事業者は、提供した指定地域密着型通所介護に関し、法第二十三条の規定により市町村が行う文書その他の物件の提出若しくは提示の求め又は当該市町村の職員からの質問若しくは照会に応じ、及び利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力するとともに、市町村から指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
4 指定地域密着型通所介護事業者は、市町村からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を市町村に報告しなければならない。
5 指定地域密着型通所介護事業者は、提供した指定地域密着型通所介護に係る利用者からの苦情に関して国民健康保険団体連合会(国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会をいう。以下同じ。)が行う法第百七十六条第一項第三号の調査に協力するとともに、国民健康保険団体連合会から同号の指導又は助言を受けた場合においては、当該指導又は助言に従って必要な改善を行わなければならない。
6 指定地域密着型通所介護事業者は、国民健康保険団体連合会からの求めがあった場合には、前項の改善の内容を国民健康保険団体連合会に報告しなければならない。
(引用:指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第三十四号)

地域密着型通所介護(デイサービス)の運営基準を守らないとどうなる?

指定申請の際に、運営規程や利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要など、運営基準にかかわる書類に不備がある場合は指定を受けることができません。
また、指定権者によって行われる運営指導(実地指導)や監査で運営基準に違反していると判断された場合、改善命令が出されます。
2022年度に奈良県奈良市で実施された運営指導で、指摘(文書指摘・口頭指摘)内容別の割合は、

  • 運営(防災・報酬以外)・・・81.1%
  • 報酬・・・7.1%
  • 労務・・・6.7%
  • 人員・・・3.1%
  • 防災・・・1.6%

となっており、運営基準にかかわる指摘が多かったようです。
運営指導で改善命令を出されてからも改善が見られない場合は、指定取消の行政処分を受けることもありますので注意しましょう。

定員を守らない場合は減算になる

地域密着型通所介護事業所の運営基準では、定員が18名以下とされています。定員を超過してしまった場合は、その翌月から定員超過が解消される月まで利用者様全員の介護報酬が30%減算されます。さらに2ヵ月以上定員超過の状態が続く場合は、指定取り消しになる可能性があります。

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地域密着型通所介護を開業する際には、運営基準や人員基準、設備基準の内容をしっかり理解した上で指定申請に関する書類を作成するほか、法人設立、従業員の採用、利用者獲得のための営業など、事業者がやらなくてはならないことは多いです。
そのような中で、開業に関する不安や疑問がある方は、無料で担当者が事業開始までサポートいたしますので、 ぜひ 『カイポケ開業支援』をご利用ください。

まとめ

ここまで、地域密着型通所介護(小規模デイサービス)の運営基準の項目や指定基準、運営基準を守らなかった場合にどうなるのかなどについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
開業前の段階でも運営基準にかかわる項目で準備しなければならないものが多くあるだけでなく、開業の運営指導(実地指導)では運営基準の項目で指摘を受ける事業者がかなりの割合を占めています。ですから、開業前から運営基準の内容を理解し、適切な対応をとっていくことが大切になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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