地域密着型通所介護の開業・開設の流れは?立ち上げに必要な条件も解説



地域密着型通所介護を開業したいと考えていらっしゃる皆様の中には、「地域密着型通所介護の開設の流れはどうなってるの?」や「地域密着型通所介護を開設したら儲かるのだろうか?」といった疑問や悩みを感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、地域密着型通所介護の開業をお考えの皆様に向けて、事業所を開設するまでの流れや必要な条件、地域密着型通所介護を立ち上げるメリット・デメリットなどについてご紹介していきます。

左手でガッツポーズをする女性の写真

目次

地域密着型通所介護と通所介護(デイサービス)との違いとは?

地域密着型通所介護(小規模デイサービス)とは、要介護1以上の利用者様に施設に通ってもらい、食事、入浴、排泄などの介護や生活等に関する相談および助言、機能訓練などを行う介護サービスです。
地域密着型通所介護と通所介護の違いは利用定員の数です。2016年度より、利用定員が18人以下の小規模デイサービスは地域密着型通所介護と位置付けられ、市町村が指定を行うことになりました。

地域密着型通所介護は儲かるの?

厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査」によると、収入と支出の差を表す収支差率の全国平均は、2021年度の決算で地域密着型通所介護が「3.4%」となっています。

介護サービス全体 地域密着型通所介護
収支差率の平均(2021年度決算) 3% 3.4%


また、収支差率の推移を見てみると、1.8%~4.4%の間で推移しており「儲かる可能性のある事業」と言えます。

介護事業経営実態調査結果の収支差率遷移

(厚生労働省平成29年度・令和元年度・令和2年度介護事業経営実態調査、令和4年度介護事業経営概況調査結果より作成)


ただし、地域密着型通所介護事業所の収支差率の分布を見ると、令和3年度の決算だと収支差率が「5%~10%」、「0~5%」の事業所の割合が大きい一方で、収支差率が0%を下回っている赤字の事業所も一定数存在します。

地域密着型通所介護収支差率分布図

(出典:厚生労働省 「令和4年度介護事業経営概況調査」)

地域密着型通所介護を開業するメリットとデメリット

独立して地域密着型通所介護事業所を立ち上げようと考えている皆様は、開業に際してどのようなメリットやデメリットがあるのか気になっているかもしれません。ここからは、地域密着型通所介護事業所を開設する場合のメリットとデメリットをそれぞれご紹介していきます。

地域密着型通所介護を開業するメリットとは?

地域密着型通所介護を開業するメリットは、以下の点が挙げられます。

  • 通所介護よりも定員が少ないため、建物の取得費用や家賃が安く抑えられる
  • 高齢者数の増加に伴い、安定的な需要が見込める
  • 定員10名以下の場合は看護職員または介護職員のいずれか1名を配置すれば人員基準を満たすことになるため、人材確保の難易度が通所介護よりも低い
  • 通所介護よりも報酬単価が高く設定されている
  • 経営者になることで自身の頑張りが報酬に跳ね返ってくる
  • 自分が理想とする事業所を作ること、実現したいサービスを提供することができる
    など

地域密着型通所介護を開業するデメリットとは?

地域密着型通所介護を開業するデメリットは、以下の点が挙げられます。

  • 資金を投資するためリスクがある
  • 3年に1度の報酬改定に経営状況が左右される
  • 小規模デイサービスのため、利用者一人あたりや従業員1人あたりの経営に与える影響が大きい

地域密着型通所介護を開業するために必要な条件・資格

地域密着型通所介護事業所の経営者になるために必要な資格はありませんが、事業所に配置しなければならない職種や人数が決まっているため、経営者が資格を持っていない場合、有資格者を雇うための費用がかかります。そのため、介護業界の経験を活かして起業をする有資格の方が多いようです。
また、地域密着型通所介護を開業するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 法人格
  • 人員基準
  • 設備基準
  • 運営基準

それぞれ詳しく見ていきましょう。

開業に必要な条件①法人格

地域密着型通所介護事業所は個人では運営することができないため、法人格を取得する必要があります。法人格は、株式会社や合同会社といった『営利法人』と、一般社団法人、社会福祉法人、医療法人、特定非営利活動法人などの『非営利法人』の2つに大きく分けられます。
上記のいずれの法人格でも地域密着型通所介護事業所を運営をすることができますが、それぞれ設立にかかる時間や費用、条件などが異なりますので、皆様の状況に合わせた法人格を選択しましょう。
開業時の法人形態について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業に必要な条件②人員基準

地域密着型通所介護の人員基準には、事業所運営をする際に確保しなければならない職員の員数や職種が定められており、管理者が常勤専従で1人、生活相談員が1人以上、看護職員が1人以上、介護職員が利用者様の数が15人までは1人以上、利用者様の数が15人を超す場合は1人に利用者様の数が15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上、機能訓練指導員が1人以上となっています。

職種 配置基準 資格要件
管理者 常勤専従で1人 特になし
生活相談員 専従で提供日ごとの勤務延時間数をサービス提供時間数で割った数が1人以上 社会福祉主事、社会福祉士、精神保健福祉士、それらと同等以上の能力を有すると認められる者
看護職員 単位ごとに専従で1人以上 看護師もしくは准看護師
介護職員 ①サービス提供時間に応じて専従で次の数以上
  • 利用者数が15人まで:1人以上
  • 利用者数が15人超す場合:1人+15人を超えた人数を5で割った数を加えた数以上
②常時1人以上となるように配置
特になし
機能訓練指導員 1人以上 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師※1

※1
はり師及びきゅう師については、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6カ月以上機能訓練指導に従事した経験を有する者に限るとされています。

地域密着型通所介護の人員基準について、詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業に必要な条件③設備基準

地域密着型通所介護の設備基準には、食堂や機能訓練室などの最低限設置しなくてはならない設備や備品などについて定められています。指定申請時には、事業所の平面図等の提出が求められますので、指定申請前までには設備や備品をそろえておく必要があります。

【地域密着型通所介護で必要な設備・備品の例】

  • 食堂
  • 機能訓練室
  • 相談室
  • 事務室
  • 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備
  • その他地域密着型通所介護の提供に必要な設備・備品
    など

地域密着型通所介護の設備基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業に必要な条件④運営基準

地域密着型通所介護の運営基準には、事業所が適切なサービスを提供するために守らなければならないルールが定められており、サービス提供開始までの手順、提供するサービスの内容や提供方法、必要な書類や記録、取り組みなどが規定されています。

【地域密着型通所介護の運営基準の項目】

  • 内容および手続きの説明と同意
  • 提供拒否の禁止
  • サービス提供困難時の対応
  • 受給資格等の確認
  • 要介護認定の申請を援助
  • 心身の状況等の把握
  • 居宅介護支援事業者等との連携
  • 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  • 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
  • 居宅サービス計画等の変更を援助
  • サービス提供の記録
  • 利用料等の受領
  • 保険給付の請求のための証明書の交付
  • 地域密着型通所介護の基本取扱方針
  • 地域密着型通所介護の具体的取扱方針
  • 地域密着型通所介護計画の作成
  • 利用者に関する市町村への通知
  • 緊急時の対応
  • 管理者の責務
  • 運営規程
  • 勤務体制の確保等
  • 業務継続計画の策定等
  • 定員の遵守
  • 非常災害対策
  • 衛生管理等
  • 地域との連携等
  • 記録の整備
    など

地域密着型通所介護の運営基準について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

地域密着型通所介護の開業・立ち上げの流れ

地域密着型通所介護事業所を開設するには以下のステップを踏みます。

【地域密着型通所介護事業所の開業手順】

  • 法人設立
  • 事業計画書の作成
  • 開業資金の調達
  • 物件探し・契約
  • 従業員を採用
  • 物件のリフォーム
  • 備品等の調達
  • 指定申請
  • 請求ソフトの手配
  • 利用者様の獲得

それでは一つひとつの段階について詳しく見ていきましょう。

開業の流れ①法人設立

地域密着型通所介護事業所は、株式会社、有限会社、合同会社などの営利法人の参入が認められており、近年では特に株式会社の新規参入が多いようです。
法人設立のために、まずは会社の目的や役員、株主等を決定し、定款、役員の同意書等の登記に必要となる書類を作成します。
書類を準備できたら、管轄の法務局へ書類を提出し、法務局の審査を経て、登記に必要な登録免許税や印紙税を納付すると手続きが完了します。例えば株式会社を設立するには、登録免許税や印紙税などを合わせて『20万円』ほどの費用がかかります。
登記の手続きで書類に不備等がある場合は、修正して再提出する必要があるため、法務局に何度も行く手間や時間を取れない場合は、行政書士などの専門家の支援を受けるとスムーズに手続きを進められるでしょう。

開業の流れ②事業計画書の作成

事業計画書は、どのように事業を経営していくのかを記載する書類であり、事業方針やどれくらいの利用者数が期待できるのか、周辺の競合となる事業所、収支の見通しなどの情報を記載します。
事業計画書は、指定申請時や金融機関から融資を受ける際に使う書類なので、早めに着手をするとその後の開業準備がスムーズになります。
事業計画書の書き方について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業の流れ③資金調達

地域密着型通所介護事業所を開業するためには、賃貸物件の契約料、車両費、備品等の購入費、人件費などにより、一般的に『1,500万円』ほどの開業資金が必要になると言われています。
開業資金の全てをご自身の貯蓄等から捻出できない場合は、自己資金に加えて、金融機関から融資を受けることになります。融資を受ける金融機関としては、政府系金融機関である「日本政策金融公庫」が選ばれています。

開業資金や調達方法について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業の流れ④物件探し・契約

地域密着型通所介護事業所では、設備基準を満たすことを前提に、立地や賃料、コンセプトを実現できるかどうかといった観点から、物件を探すことになります。
近年では、インターネット等を使った物件探しが一般的ですが、未公開の物件もあるので、開業予定地域の不動産会社への相談も行い、幅広く情報を集めましょう。

開業の流れ⑤従業員を採用

地域密着型通所介護事業所として「指定」を受けるためには、人員基準を満たす必要があります。そのため、指定申請を行う前に、求人を行い、面接を経て、従業員を採用することになります。
採用方法は、ハローワーク以外にも、インターネットの求人広告、有料人材紹介、知り合いからの紹介などが考えられます。費用面の負担も考えながら様々な方法を駆使しながら採用活動を進めることになります。

地域密着型通所介護の従業員の採用について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業の流れ⑥物件のリフォーム

地域密着型通所介護事業所を運営するためには、設備基準を満たすために、スペースの分離、浴室・トイレ・洗面所の設置・増設など物件をリフォームする必要があります。また、設備等がそのまま使用できる物件であったとしても、壁紙の張替え、電源の設置など多少のリフォームは行うことを想定しておきましょう。

開業の流れ⑦備品等の調達

地域密着型通所介護事業所では設備基準に定められた備品や消耗品等を準備する必要があります。具体的には、デスクやチェアといったオフィス家具、PC、複合機などの電化製品、衛生管理のための用品などを備えることになるため、納品にどれくらいの時間がかかるのか考慮しながら、計画的に準備を進めていきましょう。

開業の流れ⑧指定申請

地域密着型通所介護事業所を開業するためには、「指定申請」という指定権者(市町村)から開業の許認可を受けるための手続きを行う必要があります。
指定申請手続きでは、開業する事業所が法律に定められた指定基準を満たしていることを証明するための書類等を準備し、提出することになります。書類の提出日は指定権者によって期日が決められていますが、開業希望月の『2か月前の末日』が期日となっているところが多いようです。
また、指定申請の前の段階で「事前相談」が必要となるケースもありますので、開業希望月の『3か月前〜6か月前』までに指定権者の担当窓口へ一度、開業の相談をしておきましょう。

介護事業所の指定申請について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

指定申請に必要な書類の一覧

こちらでは例として長野県長野市で地域密着型通所介護事業所の新規指定申請の際に必要になる書類を一覧でご紹介します。長野市の場合、指定申請書類を提出した後に手数料の納付書が送付され、期限内に手数料を納付することになります。

【地域密着型通所介護の指定申請書類の例】

  • 指定申請書
  • 登記事項証明書又は条例等
  • 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  • 平面図
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 誓約書(介護保険法第78条の2第4項各号に該当しないことを誓約する書面)
  • 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
  • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
  • 加算算定に当たり市が提出を求めている添付書類
  • 自己点検シート

開業の流れ⑨請求ソフトの手配

地域密着型通所介護事業所では、主たる収入である介護報酬を国保連と利用者様へ請求することになります。開業後の請求業務をスムーズに行うためにも開業前に請求ソフトの導入を進めましょう。
請求ソフトには、サービス提供記録の作成や請求データ作成、請求書発行などの機能を中心として、様々な機能があります。機能の種類や料金等はソフトによって異なるため、複数の請求ソフトを比較して、導入する請求ソフトを決めましょう。

カイポケ管理画面

地域密着型通所介護の請求ソフトの選び方について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

開業の流れ⑩利用者様の獲得

開業日が決まったら、開業日に向けて、事業所を紹介するパンフレット、チラシ、ホームページなどを作成し、利用者様を獲得できるように営業活動を行いましょう。地域密着型通所介護事業所では開業日前に地域のケアマネジャーなどを招いて内覧会を行う場合も多いようです。
地域密着型通所介護事業所の営業先は、居宅介護支援事業所、病院、地域包括支援センター、地域の住民(老人クラブ、町内会等)等が考えられます。
営業の方法などについて、 詳しくはこちらの記事をご覧ください

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地域密着型通所介護を開業する際には、法人設立や指定申請、利用者獲得のための営業などを行います。
事業者がやらなければならないことが多い中で、「効率的に開業準備を進めたい」や「資金調達をどうすればいいか分からない」といった希望や不安がある方は、 ぜひ『カイポケ開業支援』をご利用ください。カイポケ開業支援では担当者が無料でサポートいたしますので、 こちらからお気軽にお問い合わせください

まとめ

ここまで、地域密着型通所介護を開業する流れや必要な条件などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
地域密着型通所介護を立ち上げる際には、メリットとデメリットがあることを把握した上で、ご自身が理想とする事業所を実現できるのかどうかを考えてみましょう。
また、地域密着型通所介護を立ち上げるためには、法人設立や指定申請など、準備することが多くあります。その際に、「初めて開業をするため分からないことを誰かに質問したい」、「効率的に開業準備を行いたい」などといった悩みをお持ちであれば、ぜひカイポケの開業支援サービスにお問い合わせいただけると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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