小規模多機能型居宅介護の2021年度介護報酬改定

2021年(令和3年)度の介護報酬改定では、『感染症や災害への対応力強化』、『地域包括ケアシステムの推進』、『自立支援・重度化防止の取組の推進』、『介護人材の確保・介護現場の革新』、『制度の安定性・持続可能性の確保』から改定率『+0.70%』のプラス改定となりました。

ここでは、小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護の介護報酬改定の内容についてお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。

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小規模多機能型居宅介護の基本報酬の改定

小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護の基本報酬について以下のように改定が行われました。

小規模多機能型居宅介護、介護予防小規模多機能型居宅介護の基本報酬

基本報酬 現行 改定後 増減
同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合 要支援1 3,418 3,438 +20
要支援2 6,908 6,948 +40
要介護1 10,364 10,423 +59
要介護2 15,232 15,318 +86
要介護3 22,157 22,283 +126
要介護4 24,454 24,593 +139
要介護5 26,964 27,117 +153
同一建物に居住する者に対して行う場合 要支援1 3,080 3,098 +18
要支援2 6,224 6,260 +36
要介護1 9,338 9,391 +53
要介護2 13,724 13,802 +78
要介護3 19,963 20,076 +113
要介護4 22,033 22,158 +125
要介護5 24,295 24,433 +138
短期利用 要支援1 421 423 +2
要支援2 526 529 +3
要介護1 567 570 +3
要介護2 634 638 +4
要介護3 703 707 +4
要介護4 770 774 +4
要介護5 835 840 +5

※令和3年9月30日までの間は、基本報酬について、所定単位数の千分の千一に相当する単位数を算定します。

小規模多機能型居宅介護の加算・減算等の改定

加算・減算等については、以下のように加算や区分の新設、算定要件の変更等の改定が行われています。

特別地域小規模多機能型居宅介護加算、中山間地域等における小規模事業所加算

離島や中山間地域等の要介護者に対する介護サービスの提供を促進する観点から、特別地域小規模多機能型居宅介護加算と中山間地域等における小規模事業所加算が新設されました。

特別地域小規模多機能型居宅介護加算:+基本報酬15/100

中山間地域等における小規模事業所加算:+基本報酬10/100

認知症行動・心理症状緊急対応加算

在宅の認知症高齢者の緊急時の宿泊ニーズに対応できる環境づくりを一層推進する観点から、認知症行動・心理症状緊急対応加算が新設されました。

認知症行動・心理症状緊急対応加算:200単位/日

認知症行動・心理症状緊急対応加算の算定要件

  • 医師が、認知症の行動・心理症状が認められるため、在宅での生活が困難であり、緊急に短期利用居宅介護を利用することが適当であると判断した者に対し、サービスを行った場合に算定

看取り連携体制加算

看取り期における本人・家族との十分な話し合いや他の関係者との連携を一層充実させる観点から、看取り連携体制加算の算定要件において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組が求められることになりました。

生活機能向上連携加算

生活機能向上連携加算(Ⅱ)の、「計画作成責任者とリハビリテーション専門職等がそれぞれ利用者の自宅を訪問した上で、共同してカンファレンスを行う」という要件に関して、利用者・家族も参加するサービス担当者会議の前後に時間を明確に区分した上で実施する計画作成責任者及びリハビリテーション専門職等によるカンファレンスでも差し支えないことが明確にされました。

口腔・栄養スクリーニング加算

利用者の口腔機能低下の重症化等の予防、維持、回復等につなげる観点から、介護職員等が実施可能な口腔スクリーニングと現行の栄養スクリーニング加算の取組を一体的に評価する「口腔・栄養スクリーニング加算」が新設されました。

口腔・栄養スクリーニング加算:20単位/回

口腔・栄養スクリーニング加算の算定要件

  • 介護サービス事業所の従業者が、利用開始時及び利用中6月ごとに利用者の口腔の健康状態及び栄養状態について確認を行い、当該情報を利用者を担当する介護支援専門員に提供していること

科学的介護推進体制加算

介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進し、介護サービスの質の向上を図る観点から、利用者のデータの提出、フィードバックに基づくケアプランや計画への反映などを評価する科学的介護推進体制加算が新設されました。

科学的介護推進体制加算:40単位/月

科学的介護推進体制加算の算定要件

  • 利用者ごとの、ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の利用者の心身の状況等に係る基本的な情報を、厚生労働省に提出していること
  • 必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供に当たって、上記の情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること

サービス提供体制強化加算

サービスの質の向上や職員のキャリアアップを一層推進する観点から見直され、新たな上位区分が新設、従来の区分の要件の変更がありました。

【小規模多機能型居宅介護費を算定する場合】

現行の区分・単位数 改定後の区分・単位数
なし サービス提供体制強化加算(Ⅰ):750単位/月
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ:640単位/月 サービス提供体制強化加算(Ⅱ):640単位/月
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ:500単位/月
サービス提供体制強化加算(Ⅱ):350単位/月
サービス提供体制強化加算(Ⅲ):350単位/月
サービス提供体制強化加算(Ⅲ):350単位/月

【短期利用居宅介護費を算定する場合】

現行の区分・単位数 改定後の区分・単位数
なし サービス提供体制強化加算(Ⅰ):25単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イ:21単位/日 サービス提供体制強化加算(Ⅱ):21単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ:16単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅱ):12単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅲ):12単位/日
サービス提供体制強化加算(Ⅲ):12単位/日

サービス提供体制強化加算(Ⅰ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

以下のいずれかに該当すること

  • 介護福祉士70%以上
  • 勤続10年以上介護福祉士25%以上

サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

  • 介護福祉士50%以上

サービス提供体制強化加算(Ⅲ)の算定要件のうち、資格・勤続年数要件

以下のいずれかに該当すること

  • 介護福祉士40%以上
  • 常勤職員60%以上
  • 勤続7年以上の者が30%以上

介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の算定要件の一つである職場環境等要件について、『取組の見直し』と『当該年度における取組の実施』の変更がありました。

また、介護職員処遇改善加算(Ⅳ)と(Ⅴ)の区分について、上位区分の算定が進んでいることを踏まえて、1年の経過措置期間を設けて廃止することになりました。

職場環境等要件の見直しの方向性

  • 職員の新規採用や定着促進に資する取組
  • 職員のキャリアアップに資する取組
  • 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
  • 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
  • 生産性の向上につながる取組
  • 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組

介護職員等特定処遇改善加算

平均の賃金改善額の配分ルールについて、「その他の職種」は「その他の介護職員」の「2分の1を上回らないこと」とするルールは維持した上で以下の改定が行われました。

【現行】「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「2倍以上とすること」

【改定後】「経験・技能のある介護職員」は「その他の介護職員」の「より高くすること」

介護職員等特定処遇改善加算

※第199回社会保障審議会介護給付費分科会 参考資料1より引用

小規模多機能型居宅介護の介護報酬に係るその他の改定

区分支給限度基準額の計算方法

公平性の観点から、同一建物に居住する者に対して行う場合の基本報酬を算定する利用者の区分支給限度基準額は、同一建物に居住する者以外の者に対して行う場合の単位数を用いて計算することになりました。

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の計画や会議

リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する加算等の算定要件とされている計画作成や会議について、リハビリテーション専門職、管理栄養士、歯科衛生士が必要に応じて参加することが明確化されました。

また、リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養に関する各種計画書(リハビリテーション計画書、栄養ケア計画書、口腔機能向上サービスの管理指導計画・実施記録)について、重複する記載項目を整理し、それぞれの実施計画を一体的に記入できる様式が設けられます。

短期利用居宅介護費の算定、宿泊受入

在宅高齢者の緊急時の宿泊ニーズに対応できる環境づくりを一層推進する観点から、小規模多機能型居宅介護において、現行の「登録者の数が登録定員未満であること」の要件が見直され、削除となりました。また、宿泊室の計算においても「宿泊室を活用する場合については、登録者の宿泊サービスの利用者と登録者以外の短期利用者の合計が、宿泊定員の範囲

内で、空いている宿泊室を利用するものであること」と見直しが行われました。

過疎地域等における定員超過

過疎地域等におけるサービス提供を確保する観点から、過疎地域等において、地域の実情により事業所の効率的運営に必要であると市町村が認めた場合に、人員・設備基準を満たすこ

とを条件として、一定の期間に限り、登録定員を超過した場合の報酬減算しないことになりました。

小規模多機能型居宅介護の人員、設備、運営の基準、その他の改定

管理者の研修修了要件

管理者の要件とされている認知症介護実践者研修及び認知症対応型サービス事業管理者研修の修了について、研修の実施時期が自治体によって他律的に決定されるものであることから、管理者が交代する場合において、新たな管理者が、市町村からの推薦を受けて都道府県に研修の申し込みを行い、研修を修了することが確実に見込まれる場合は、研修を修了していなくてもよい取扱いとなりました。

なお、事業者の新規指定時には、管理者は原則どおり研修を修了していることを必要となります。

人員配置基準における兼務

人材確保や職員定着の観点から、小規模多機能型居宅介護と広域型特別養護老人ホームまたは介護老人保健施設を併設する場合において、入所者の処遇や管理上支障がない場合、現行では認められていなかった介護職員、管理者の兼務が認められることになりました。

通所困難な利用者の入浴機会の確保

看取り期等で通いが困難となった状態が不安定な利用者に入浴の機会を確保する観点から、小規模多機能型居宅介護サービスの提供にあたって、現行では併算定できない訪問入浴介護のサービスが、「ただし、(看護)小規模多機能型居宅介護事業者の負担により、訪問入浴介護等のサービスの利用に供することは差し支えない。」と、事業者の負担の下で提供することが可能であることが運営基準で明確化されました。

認知症介護基礎研修の義務化

介護に直接携わる職員の認知症対応力を向上させていくため、介護サービス事業者に、無資格の職員について、認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることが義務づけられました。これには3年の経過措置、新入職員には1年の猶予期間があります。

情報公表制度における変更

介護サービス情報公表制度において、従業者の認知症介護実践者研修の受講状況などの認知症に係る事業者の取組状況を公表する項目が設けられました。

最後に

本記事は、作成時点の最新資料を基に作成しています。今後、厚生労働省より解釈通知、各自治体より詳細な通知・資料などが公開されますので、具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報を基にご判断をいただきますようお願い致します。

各サービス種別の2021年度介護報酬改定の内容は下記からご覧いただけます

訪問介護の2021年度介護報酬改定

訪問入浴介護の2021年度介護報酬改定

訪問看護の2021年度介護報酬改定

訪問リハビリテーションの2021年度介護報酬改定

通所リハビリテーションの2021年度介護報酬改定

通所介護・地域密着型通所介護の2021年度介護報酬改定

居宅療養管理指導の2021年度介護報酬改定

短期入所生活介護(ショートステイ)の2021年度介護報酬改定

短期入所療養介護(医療ショートステイ)の2021年度介護報酬改定

福祉用具貸与の2021年度介護報酬改定

居宅介護支援(ケアマネ)の2021年度介護報酬改定

定期巡回・随時対応型訪問介護看護の2021年度介護報酬改定

認知症対応型通所介護の2021年度介護報酬改定

小規模多機能型居宅介護の2021年度介護報酬改定

看護小規模多機能型居宅介護の2021年度介護報酬改定

介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の2021年度介護報酬改定

特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護の2021年度介護報酬改定

認知症対応型共同生活介護の2021年度介護報酬改定

介護老人保健施設の2021年度介護報酬改定

介護医療院の2021年度介護報酬改定

放課後等デイサービスの2021年度障害福祉サービス報酬改定

児童発達支援の2021年度障害福祉サービス報酬改定

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